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『脳バンク−精神疾患の謎を解くために』加藤忠史&ブレインバンク委員会編(光文社新書 519)

脳バンク 精神疾患の謎を解くために


『脳バンク−精神疾患の謎を解くために加藤忠史&ブレインバンク委員会編(光文社新書 519)

精神医学は、他の医療分野に比べて遅れている。他の臓器のように精神疾患患者の脳を調べることができないからだ。

精神疾患の診断は患者からの聞き取りによるため、数値や画像といった客観的な診断は不可能である。そのため、医療機関によって診断が異なったり、詐病のようなことも起こる。

本書は、精神疾患を解明するために死者から脳の提供を受ける「ブレインバンク」の啓蒙のために書かれている。

本書を企画した理化学研究所脳科学総合研究センターの加藤忠史は、死後脳を蓄積する「ブレインバンク(脳バンク)」を設立に向けて活動している。精神疾患を最先端の分子生物的な技術を使って解明するためである。脳科学の進歩で新しい治療や診断法が生み出されているが、最終的な確認には人の脳が必要だからだ。

本書は、ブレインバンクの必要性・精神疾患に脳研究が欠かせない理由・日本で唯一のブレインバンクである福島ブレインバンクの実際・国内外における脳集の現状・精神疾患はどこまで解明されているか・ブレインバンク設立に向けて、と7章に渡って20名以上の研究者・臨床医・患者の家族などさまざまな立場の人々が執筆している。

それぞれの記事は、5~7ページとコンパクトにまとめられており、それぞれについて加藤がコメントしている。しかも、この1冊でブレインバンクの歴史から現状、将来、精神疾患の脳研究の新知見まで情報が網羅されている。

日本で唯一のブレインバンクは、福島県立医科大学に「福島ブレインバンク」だが、16年間で献脳されたのは33、生前登録者数は97名にとどまっているという。

そのため、日本での脳研究は欧米のブレインバンクから試料を提供されて研究しているが、遺伝子レベルの研究となると人種的な差異が現れるため、日本人の脳が必要とのことである。また、脳の微細な部位となると欧米のブレインバンクから提供が拒まれることもあり、自由に利用出来る死後脳が必要になっているという。

精神疾患患者の死後脳が必要なだけでなく、比較対照するには健常者の死後脳も必要だという。

本書を読めば死後脳研究の意義は大変よく理解できるし、ブレインバンクの設立が望まれる理由もよくわかる。

しかし、自分の死後に脳が切り刻まれて研究対象となることには誰でも忌避したいと思うだろう。福島ブレインバンクでも、患者や家族は「治療してくれた医師や病院に献脳したい」と願うらしい。自分の脳がバラバラになって遠く離れた施設で知らない研究者の試料に供されるのは嫌なのだ。

こうした感情の裏には、日本では欧米と違って医療に貢献するために自分の体を提供するという考え方が根づいていないのと、日本人の間は「心が脳にある」という考え方が一般的だからだ。そうした感情をいかに克服するかが、ブレインバンクの設立を左右するのではないか。

ちなみに、角膜移植のために死後の眼球を提供するアイバンクについて調べてみると、平成21年の登録者は1万7500人で献眼者は961人だった。

アイバンクの場合には、角膜を提供することで1人あるいは2人の視覚障害者の治療に役立つのでわかりやすいが、自分が脳を提供することで精神疾患治療に役立つというのは具体的ではない。

2010年の年末から2011年初めにかけて、児童福祉施設にランドセルを贈る「タイガーマスク運動」が流行った。赤十字や募金団体に寄付すると、職員の給料や管理費にも使われてしまうが、ランドセルを児童福祉施設に贈れば自分の好意の100%が子どものためになるからだった。

使途の見えにくい寄付は嫌厭される。提供された脳が、どのように活かされているかを遺族に明らかにする方法を検討しなければならないだろう。


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