TOP > スポンサー広告 > 『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ』子安大輔(新潮新書 418)TOP > 新書 > 『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ』子安大輔(新潮新書 418)

昼食難民の新書生活

(新宿・秋葉原・芝浦など各地でのランチと読書)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ』子安大輔(新潮新書 418)

ラー油とハイボール


『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ子安大輔(新潮新書 418)


タイトルから昨年にブームになったラー油とハイボールについての、新しい視点や深い考察を期待しがちだが、本書からは残念ながら満足できるような情報は得られない。そもそもラー油やハイボールについては、ごく短い記事しかない。

例えばラー油については、なぜ突如としてブームになったのか、その背景をぜひとも知りたいところだが、著者は調べようともしていない。ブームを分析することにはあまり興味がなさそうだ。

青年が白いご飯にラー油をタップリと垂らしてオレンジ色に染めたラー油ご飯を食べているのを見てびっくりしたのは2009年3月末のことだった。中華屋のスタッフたちに驚いた様子はなかったから、それほど珍しい行為ではなかったのかもしれない。2009年春にはご飯にラー油をかける奇習がすでに始まっていたようだ。

そして、桃屋が「辛そうで辛くない少し辛いラー油」を発売したのが2009年8月。2009年秋ごろからジワジワと「食べるラー油」の人気に火がつき、類似品が続々と発売されて一大ブームとなった。

石垣島の辺銀食堂の「石垣島ラー油」や京都・太秦にある中華料理店でお客に分け売りしていた「菜館Wongのラー油」など、ブームになる以前から一部の人から愛されたラー油はあった。

しかし「食べるラー油」ブームは、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」が原因で間違いないようだ。これまでも、ゆず胡椒や卵かけごはん専用醤油など「地方発」の調味料が突如としてブームになることはあった。全国的なブームになるのは大手食品メーカーから発売されることが条件だった。

でも、ご飯にラー油をかけるという奇習がどこから始まったのかはわからない。ぜひ専門の方に明らかにしてもらいたいものだ。

ハイボールに関しては、サントリーがテレビCMを大量に流したことが、ブームの原因になったことは間違いないだろう。サントリーは、いったいどれくらいの額をCMに投じたのか。いまだに、新しいバージョンのCMを流しているのは、ハイボールの材料である角瓶やトリスの売上が大きく伸びているからだろう。

著者は、乾杯ビールを終えた後の2杯目に美味しいアルコール飲料がないことを指摘している。「とりあえず1杯」のビールを美味しいと感じる人は多いだろうが、ビールも2杯目からは極端に味が落ちるし、2杯目に頼んだチューハイやウーロンハイを美味しいと感じている人は少ないだろう。そもそもチューハイやウーロンハイには甲種焼酎を使っているのだから美味しいわけもない。焼酎の水割りや日本酒といったものを飲む人もいるだろうが、1杯目のビールと同じような美味しさを感じているわけではないだろう。つまり、2杯目として飲まれているものに消費者は美味しさを感じていない、ということなのだ。

美味しいと感じて飲んでいないのであれば、ハイボールを飲んでもらうことも可能だ、ということになったらしい。しかも、角瓶やトリスといった原価の低いウイスキーをベースにすれば、ビールよりも利益率が高いので飲食店側も積極的に販売する。

こうして、サントリーは飲食店に角瓶やトリスのハイボール用グラスなどの販促グッズを配るなどハイボールの販売促進に注力した。さらに、膨大な宣伝費を投じてテレビCMを大量に流し始めた。

大量のテレビCMを見せられると、見向きもされなかったハイボールがいかにもオシャレで流行っているように思えて飲んでみたくなる。私たちの嗜好や行動はそれほど移り気でか弱いものなのだ。

サントリーがどれほどの広告宣伝費を投下したのかちょっと考えてみた。テレビの全国ネットのゴールデンタイムに15秒のスポットCMを流すと200万円ほどかかるらしいから、3時間で3回流すと600万円。東京のキー局4局で1日2400万円。ゴールデンタイム以外にもハイボールのCMは流れているから1日3000万円程度は使っているだろう。これに365日を掛けると109億5000万円。サントリーの年間広告宣伝費は400億円ほどらしいから、広告宣伝費の4分の1ほどを投下していることになる。ハイボールのような美味しくないものも、金をじゃぶじゃぶ使えばヒット商品になるのだ。

話は変わるが、飲食店情報サイトの「食べログ」は、2005年に開始して以来、2011年4月には掲載店舗数63万件、口コミ件数230万件にまで急速に発展しているという。

著者は、ユーザーは「外さない」ために利用しているが、「食べログ」で得た情報で飲食店を利用するのは追体験に過ぎない、そこに発見する喜びや失敗したときの落胆・悔悟はない、と断じている。しかし、かつても飲食店選びをする際には他人の噂に影響されていたし、新聞・雑誌・テレビなどのマスコミの情報を利用していたのではないか。

ただし「食べログ」のような情報サイトは、情報提供者が増えるたびに、その評価は大多数が認める平均点になっていく。万人が美味しいと認めた味というのは、私の嗜好にあっているかどうかの保証はないことぐらい誰でも知っている。それでも、「食べログ」を利用するのは失敗したくないからだ。

この著者の『「お通し」はなぜ必ず出るのか―ビジネスは飲食店に学べ』がそこそこ面白かった。しかし、本書はWebの連載が元になったとはいえ、だらだらと小さなアイデアを書き綴っただけだった。一応は章立てになっているが、最終章以外は細かな思いつきを書いているに過ぎない。

結局、最後まで読んでも1冊の本としてのまとまりの無さばかりが目に付く。この人は大きな枠組で思考することを苦手としているのだろう。

関連記事

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://pasage.blog43.fc2.com/tb.php/1161-e8d3b146

 | HOME | 









ブログランキングに参加中です

リンク

お気に入りに追加
このブログをリンクに追加する

最近の記事

にほんブログ村ランキング

ブログ内検索

Loading

カテゴリー


全記事一覧(500件ごと)

カレンダー+月別アーカイブ

ケータイ版URL

QRコード

RSSフィード

プロフィール

pasage

Author:pasage
昼食時は「難民」と化して「新書」を片手に、都内各地を彷徨っています。

FC2Ad

Template by たけやん

QLOOKアクセス解析

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。