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『精神医療に葬られた人びと―潜入ルポ 社会的入院』織田淳太郎(光文社新書 529)

精神医療に葬られた人びと


『精神医療に葬られた人びと―潜入ルポ 社会的入院織田淳太郎(光文社新書 529)

著者は、ノンフィクション作家。バセドー氏病の症状がひどくなったため、友人に勧められたG病院という精神病院に「任意入院」する。そこは開放病棟とは名ばかりの閉鎖病棟だった。

バセドー氏病で精神病院に入院する必要はないから、著者は取材のために「潜入した」のだろう。

そのG病院で出会ったのが、40年近くも入院している「一郎(仮名)さん」だった。その「一郎さん」を通して、患者を「固定資産」として長期にわたって入院させる日本の精神医療施設の恐るべき実体が明らかにされる。

2009年現在の世界の精神科病床数は推定で200万床だと言われるが、そのうち日本には35万床と6分の1もあり、入院患者数31万3000人と突出している。また、日本の精神科における患者1人当たりの平均入院日数は310日に及び、欧米の平均入院日数1~2週間に比べて異常な事態になっている。

さらに、人口1万人あたりの精神科病床数は日本の28床に対して、欧米は2~10床であり、ここでも日本の精神医療の異常さが目立つ。

日本の「異常」は精神障害者を「社会から隔離する」という目的のため制度的に認められていることであるが、その制度自体も世界の趨勢からは大きく遅れている。

イギリスでは、1954年に保健省が「今後10年間で10万床の精神病床を削減する」と発表し、さらに1971年には人口10万人に対するベッド数を5床とするという長期計画を打ち出している。その結果、1955年の33床が1990年には12床となり、現在は10床を下回り、目標の5床に近づいているという。

また、イタリアではもっとラディカルな改革が行われている。1978年に公立精神病院への入院を禁止する「180号法案」が交付され、国を挙げて精神病院の廃絶に動き出している。このイタリアでの精神医療改革が多くの国のモデルとなって、精神病者に対する法律の廃絶や長期入院を禁止する国が増えているのである。

日本でもグループホームや授産所などの一般社会に受け入れる仕組みを作れば、退院させられる「患者」ですら病院の収入確保のための「固定資産」として長期入院させられているというのが現状なのだ。

ところが、多くの国では精神病院は公立だが、日本では民間病院に頼っている。そのため、簡単には長期入院を禁止したり、精神病院そのものの廃絶は進まないという。精神病院廃絶という世界的な流れに、精神病院経営者や精神科医たちが反対しているからだ。

しかも、本書の冒頭に書かれているが、東日本大震災時に明らかになった双葉病院での遺体置き去り事件のように、患者の高齢化による入院者数の減少を補うために、民間の精神病院は認知症の老人たちを取り込んでいるという。しかも、精神病院に入院した老人たちは短期間に寝たきりになり、認知症の改善は望めない場合が多いという。

日本の精神病院は、これらの「社会的入院」が存在する中世の監獄のような場所なのである。

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コメント

お礼

いい本をご紹介していただきありがとうございます。
当方、5年前にC型肝炎治療投薬の副作用で精神疾患になり、精神病院で1ヶ月半の入院を経て現在も後遺症で辛い生活を送っております。
精神病院で受けた屈辱、肝炎治療をした病院の無責任さ、さらに正常でない私を知りながら株取り引きで全財産を損失させた証券会社、 不条理な世の中と戦っている私にとって、是非 読んでみたいとおもいます。

Re: お礼

donjinanさん、コメントありがとうございます。

幸いなことに、これまで精神病院とは全く縁がなかったので、本書を読むまでその惨状を知りませんでした。ずいぶん昔には宇都宮病院事件が新聞等で大きく取り上げられたので、精神病院は恐ろしいところだという漠然とした印象はありましたが、現在でもここまでひどい状況にあるとは驚きです。一般病院では厚労省の指導で「患者様」と過剰な敬称を使うようになっていますが、精神病院はまだ前世紀いや前々世紀の状態にあり、決して入院してはならない場所のようです。

大変なご経験をされたとのことで言葉もありませんが、少しはご参考になったのかもしれないことを知って幸甚です。

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