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『生物学的文明論』本川達雄(新潮新書 423)

生物学的文明論


『生物学的文明論』本川達雄(新潮新書 423)


著者は20年ほど前に大ベストセラーとなった『ゾウの時間 ネズミの時間』を書いた生物学者。本書は、NHKラジオ第2放送で11回連続放送された講演の放送台本を元にしている。

本書で著者は、数学や物理、工学系の発想で発展してきた現代文明に対して生物学的発想からの反論を試みる、としているが結論から言えば、あまり成功しているとは言いがたい。

第一章から第三章で語られるのは、サンゴの生態とサンゴガニとの共生関係、生物多様性を支えるサンゴ礁の重要性である。このあたりは、テレビのドキュメンタリーで何度も紹介されていることであり、特に物珍しさはない。

次に、第四章で活発な化学反応が起こりやすい水という環境が生命にとって不可欠であることが語られ、第五章と第六章で水を含んで柔らかく丸い生物のデザインに対して、人間によるデザインは化学反応を起こさない乾燥して固く直線的・平面的であることが語られる。

そして第七章から第十章にかけて、生物のサイズとエネルギー・感じる時間と絶対時間・時間環境・寿命についての考察が語られる。

単細胞生物から変温動物、そして恒温動物まで、すべての生物の安静代謝量と体重の関係は、両対数グラフに表すと直線となるという。これは「Y = a Xn」というアロメトリー式で表されるからだ。哺乳動物では、代謝量は体重の3/4乗に比例して増加するという。

この代謝量に関して、血液を全身に行き渡らせる心臓の動きで考察すれば、心拍数を比較すれば良いことになる。ハツカネズミは1拍が0.1秒であり、ゾウは3秒であるという。そこで著者は、ハツカネズミとゾウでは時間感覚に違いがあるのではないかという。ハツカネズミにとてゾウはほとんど動かないように見え、ゾウにとってはハツカネズミは素早く動きすぎて見えないのではないか、というのだ。しかし、本書では感覚器と脳の処理速度に関して科学的な根拠を示していないので、あくまで推察でしかないのだろう。

また、哺乳動物が死ぬまでに心臓が動く心拍数15億回だという。そして、代謝量の累計は一定なので寿命は体重の1/4乗に比例するという。確かに、大型動物に比べて小型動物の寿命は短いように思える。なんだか、アロメトリーという魔法の比率にあらゆる生命が支配されているようにも思えるが、人間は例外である。人間が心拍数15億回を迎えるのは30歳頃だというからだ。つまり、人間に関してはアロメトリー式は当てはまらないことになる。

それどころか、ゴリラの寿命は40~50年とされ、オランウータンの寿命も50年以上とされるので、動物の寿命は体重の1/4乗に比例するというのは類人猿にも当てはまらないようだ。代謝量が体重の3/4乗に比例するのは確かだとしても、寿命とは関係ないのではないか。

最後に第十一章で、著者の研究対象であるナマコに関して詳しく解説しているが、ここが一番面白かった。ナマコは、脳も心臓も目も耳も鼻もない。筋肉は体重の数%しかないから、エネルギー消費量は同じ体重のネズミの200分の1しかないという超省エネの生き物だという。しかも、エサは海底の砂で、そこから有機物を摂取しているのである。ホロスリンという毒素が体内にあるためほとんどの魚には食べられず、食べられそうになったら「キャッチ結合組織(著者の命名による)」で皮を固くして身を守り、さらに強い力が加わったら皮のその部分が溶けて腸を外敵にエサとして差し出して本体は逃げる。手で握ってドロドロに溶けたナマコも2~3週間で元に戻るという。

海底の砂地に転がっているナマコは、エサの上にいるわけだから捕食のために動き回る必要はなく、外敵に襲われることは少ないので天国にいるような生活である。

著者は30年以上にわたってナマコを研究対象としてきたが、好きでも可愛いと感じることはないという。さまざまな価値観や宗教・信条をもつ人たちとともに生きていかねばならない時代だからこそ、ぜんぜん可愛くもないナマコとでも付き合っていける知恵が多いに役立つと信じている、と結んでいる。

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