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『動きが心をつくる―身体心理学への招待』春木豊(講談社現代新書 2119)

動きが心をつくる


『動きが心をつくる―身体心理学への招待春木豊(講談社現代新書 2119)


著者は、現代心理学の主流である認知心理学に反対する立場である。

「心」は脳にあるのではなく、体の「動き」にあるとする。現代は、人間の脳が重要であり、脳を調べれば「心」の問題のすべてが解決するかのような流れになっている。しかし、著者は、脳に情報を与えるのは感覚器であり、心は体の動きによって生まれてきたとする。

本書は、脳一元主義に対して、体の動きや感覚が、人間の気分や感情に大きな影響を与えているとする「身体心理学」の入門書となっている。

著者はいつかの造語を用いているが「体動」という概念も著者の発明だ。これは、手を火にかざした時に慌てて手を引っ込める「反射」や四肢や体全体の動きである「動作」ではなく、マッチを擦って紙に火をつけるといった状況の中で意味付けられる反応である「行為」ではなく、体表の微細な反応であり、無意志的であるが意思的な反応もできる、こととしている。体表の筋肉の微細な動きである表情や目線の動きも「体動」だという。(p.43)

確かに、思わず拳を握った時の腕の筋肉がピクリと動くさまや、美味しそうな食べ物を見た時の微細な唇の動きを表現する言葉を私たちは持っていない。しかし、これまで必要がなかったから言葉が生まれなかったとも言える。どうやら「身体心理学」は、我々の体の動きの1つひとつを再検証しなければならないらしい。

また、スキナーが分類した生理的な反射であるレスポデント反応、意志的な反応のオペラント反応の2つの分類に対して、いずれの場合もある反応として「レスペラント(resperant)反応」という概念を提唱している。呼吸は、就寝時も無意識に続けているが、ラジオ体操の深呼吸、あるいはマラソン時の呼吸のように、苦しくて意志的な呼吸と、反射的に激しい呼吸になっている場合とがある、としている。

著者は、動きが心をつくることの根拠として、「われわれは泣くから悲しい、殴るから怒る、震えるから恐ろしい、ということであって、悲しいから泣き、怒るから殴り、恐ろしいから震えるのではない」というウィリアム・ジェームズの説(p.62)を紹介している。われわれは心に支配されているのではなく、環境や自分自身の感覚、動きで感情が左右されるものなのだ。認知心理学や認知神経学では、すでに多くの実験がされて、かずかずの興味深い事例が報告されている。例えば、男性被験者に2人の女性の写真を見せたところ、先に見た方の女性を好きになるという実験もある。

第6章にいたって、ようやく具体的で実践的な呼吸法の解説が始まる。もっと最新の研究が紹介されるのかと思っていたが、丹田呼吸法(腹式呼吸)などの旧来の呼吸法の紹介にとどまる。

200メートルを超える深い海まで吸気装備なしに潜るフリーダイビングの競技者たちは、潜る直前には鳥がついばむように唇を動かして酸素を肺に採り入れている。この呼吸法はおそらく経験的に習得されたものと思われるが、何の器具も使わずにより多くの酸素を身体に取り込む方法としては、最上の方法とされいるのだろう。そうした最新の方法に学んでないのは、この身体心理学が時代遅れのものに思えてくる。

本書で紹介されている緊張を解いて弛緩するための呼吸法は、呼息・腹息・長息である。まず息をしっかり吐いて、横隔膜を上下する腹式呼吸で、ゆっくり息を吸う、ということである。緊張を緩和するために深呼吸が良いことは誰でも知っている。深呼吸することで、呼吸がゆっくりになり、動悸が収まって極度のストレスから開放されることも、必ずしも実践できないとしても知識としては誰でも知っている。ステージに上がる直前の演者が、舞台袖で胸に手を当てて深呼吸する映像は、当事者の緊張感を表す映像として紋切り型に使われるのは誰もが目にしたことのあるシーンだ。

ゆっくり腹式呼吸することで、心が鎮静化し興奮状態を治めることができることは、身体心理学に学ばなくても世の中の常識である。それを実験によって確かめたとしても、何らかの新知見がなく現実をなぞっているだけのようだが、結局のところ学問というものはそういうものなのだろう。

最終章では、心身統一のための体の動かし方をイラスト入りで紹介しているが、いくつかの呼吸法や運動法を短く書いているだけである。

「心と内蔵の関係について心身医学として、最近注目されており、興味深いテーマであるが、これは心が内臓反射に影響するということなので、身体心理学が取り上げる課題ではない。」(p.81)としているが、「身体心理学」の研究領域をその創設者が決定する権利があるとしても、心が内臓反射に影響することが、なぜ身体心理学の研究対象とならないかの説明にはなっていない。

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