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『新・堕落論―我欲と天罰』石原慎太郎(新潮新書 426)

新・堕落論


『新・堕落論―我欲と天罰石原慎太郎(新潮新書 426)

本書は、東日本大震災直後に「天罰」という言葉を発し、政治家としての資質に大きな問題のあることを露呈した著者が、2005年と2010年に発表した記事に加筆したものである。

当然のことながら、「天罰」という暴言がどのような思想的背景あるいは政治的意図から発せられたのか期待をもって読み始めるが、残念ながら被災地で謝罪したという記述しかない。

それにしても、天罰が下ったというからには、東日本大震災で亡くなった2万人の命や、家・職場・学校とあらゆる生活の場を失った人々に何らかの瑕疵があったとでもいうのかと思ったら、そうではなくてわれわれ日本人全体が我欲にまみれ国家を衰退させたことに対する天罰だと言いたいらしい。

本人は「誤解と顰蹙を買った」としているが、まともな弁明などできない単なる失言だったということなのだろう。

本書で、我欲の象徴として挙げているのは、2010年に起こった年金不正受給事件と2000年の新潟女性監禁事件である。111歳の男性の遺体が発見され、30年間にわたって年金を不正に受給していたのは81歳の長女であり、小学校4年生の少女を9年間にわたって誘拐・監禁していた37歳の息子の凶行を1つ屋根の下に居ながら「気づかなかった」という母親は当時74歳だった。

石原は、戦後教育の欠陥をあげつらうつもりで2つの事件を出したにも関わらず、2人は石原と同世代だ。

五・一五事件の首謀者である三木卓が書いた「昭和維新の歌」の心境にあるとしてテロルを肯定しながら、一章「平和の毒」は、「節約、我慢、禁欲、自己努力といった、ありふれたようで実は忘れられているごくごく古い美徳について思い起こし、それを体得し直すしかありません。」と、驚くほど常識的な結論に至っている。

「二章 仮想と虚妄」は、驚くべきことに相当にアナクロニズムの恋愛論から始まる。そして、携帯電話に象徴される情報過多の社会にいる現代の若者は恋愛の本質を知らないと断じる。単なる情報ツールの1つに過ぎない携帯電話も買いかぶられたものだ。仮想の世界で遊ぶから現実を知らないし、虚弱になると決めつけている。途中で、北朝鮮による拉致問題やオウム真理教(石原が地下鉄サリン事件直後に議員を辞職したのはオウムと深い関係にあったからだという話もあるが)、長期的展望を欠いた外務省、池田小児童殺傷事件などなど、パラノイア的に話は拡散する。

そして最後も、核保有に関する可能性を誇示する、若者を鍛え直すための組織の中での労役の義務化、税制の抜本改革と、まとまりのない話になっている。

長期的展望などなしに中国大陸に侵攻し、アメリカという軍事国家に無謀な戦争を仕掛け、当然のことながら敗れて屈辱的な植民地と化す原因となった、戦前の日本が懐かしいということだろう。著者の昔からの主張が繰り返されているだけで、政治家としての展望に立った実現可能な提言ではない。

我欲に対する批判を繰り返しているが、欲望こそが人間社会を発展させてきた機動力であったはずだ。高度経済成長も「よりよい生活をしたい」と願う人々の欲望の総和が成し遂げたものに他ならない。著者は欲望のみが社会規範の乱れや国家としての停滞を招いたかのように断定しているが、むしろ長引く不況による不景気が人々の無力感や絶望感を増加させ、国家としての衰弱を招いたのではないのか。

著者は、坂口安吾の『堕落論』を批判したうえで、書名を『新・堕落論』としている。しかし、敗戦後の価値観の転換で呆然としていた人々に、あらゆる欲望が抑圧されていた戦前戦中こそが異常だったと公言し、「生きよ堕ちよ」と古い価値観からの解放を説いて人々に生きる光明を与えた『堕落論』に到底及ばない妄言集となっている。

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コメント

Re: 申し訳ありません

ヒロシさん、コメントありがとうございます。

本書を読めば、石原慎太郎が政治家としてはもちろん作家としても無能で無責任であることが明らかです。東日本大震災の被災者を愚弄した「天罰」という暴言は、本来であれば都知事を辞めざるを得ないような重大な失言のはずです。都議会やマスコミがまともな批判をしないのは、この人の迫力に飲まれているからなのでしょう。

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