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昼食難民の新書生活

(新宿・秋葉原・芝浦など各地でのランチと読書)

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『ラーメンと愛国』速水健朗(講談社現代新書 2127)

ラーメンと愛国


『ラーメンと愛国』速水健朗(講談社現代新書 2127)

ラーメン店を紹介するテレビ番組で一時期良く使われたフレーズに、「スープが納得できない時には店を開けない」云々というものがあった。店主から実際に聞いた話かもしれないが、ディレクターは大馬鹿なのか、あるいは視聴者は馬鹿だからこうした物語が好きだろうと判断したのだろう。

スープの出来にムラがあるのは、単にそのラーメン店主が素人であることを示しているのにすぎない。食材や気候の変化に合わせて、お客に出せる程度のスープを仕上げることができなければ、到底プロの職人とは呼べないだろう。いやいや逆だ。まともな料理人ならば、毎日、お客に提供できる料理を作ることができるはずだ。

素人臭いラーメン店店主の「こだわり」を聞かされるたびに、視聴者が呆れていることに気づかない番組制作者の頭の悪さには呆れるばかりだ。

ところで、ラーメンの語源については諸説があるが、「南京そば」や「支那そば」、「中華そば」と呼ばれていた料理が全国的にラーメンと呼ばれるようになったのは、日清食品の「チキンラーメン」のテレビCMによるという。支那という言葉は、昭和22年に中華民国(のちの中華人民共和国)からの要請で使用されなくなっていたからだ。

本書の大半は、竹内宏や中村隆英の『昭和経済史』といった本でお勉強したラーメンとは関係のない昭和経済史の概観になっている。とはいえ、日本の経済史を語る上で重要なキーワードがいくつも抜け落ちている。例えば、戦後復興を語る上で欠かせない「傾斜生産方式」には触れていないし、高度経済成長を推進した「イノベーション=技術革新」は語られない。日本におけるモータリゼーションを語る上では「国民車構想」は欠かせないだろうし、流通網の確立とスーパーマーケット・チェーンを語る上で「コールドチェーン」をネグることはできないはずだ。それにバブル景気の原因を田中角栄の「日本列島改造論」に求めるなど明らかな間違いもある。

日本での粉食普及は、朝鮮戦争終結以降のアメリカの小麦とトウモロコシの在庫急増を解消するために制定された「PL480法(余剰農産物処理法)」によるという。これは、鈴木猛夫の『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活』に寄りかかって書かれている。ラーメンの普及に米から小麦粉へというアメリカの戦略が一役買っていたわけだ。

最終章でようやくラーメンと愛国について語られる。

起源を中国に持つラーメンを提供する店は、かつては中華食堂であり、店主は白の調理服を着ていた。それが、ラーメン単品を提供する店が出現したときに、本来は僧侶の作業着である作務衣を着たり、漢字の店名を白抜きにした揃いのTシャツを着たり、バンダナやタオルを頭に巻くようになり、店内装も中華料理店の基本色である紅白から黒や木目を活かしたものに変わった。作務衣を着て頭にバンダナを巻くラーメン店主が現れたのは、「和」を偽装するためだったという。名称もラーメンから、「らあめん」「柳麺」「老麺」などカタカナからひらがなや漢字表記に替わっている。

もう少し早い時期には、日本各地に「ご当地ラーメン」というものも発生し、あたかも伝統的な郷土料理を偽装するようになった。

作務衣や揃いの黒いTシャツを着て相田みつを風の人生訓を壁に書いたり、店内にジャズを流したりしているラーメン店の経営者たちを、ラーメン評論家の武内伸は「ご当人ラーメン」と名付けたという。

こうした、新しい形のラーメン店が、従来型のナショナリズムと関係がないのは明らかだが、著者はそこに新しいナショナリズムの匂いを感じ取っている。もちろん、ラーメン店主が愛国者になったわけではない。単に「「伝統の捏造」を、リアリティショー的、遊戯的に行っているだけ」という。

「和」や「伝統」を捏造してそこに過剰な価値を見出すのは、保守派や右翼の常套手段であることは確かだろう。


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昼食時は「難民」と化して「新書」を片手に、都内各地を彷徨っています。

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