『宇宙のダークエネルギー―「未知なる力」の謎を解く』土井守 松原隆彦(光文社新書 539)
2012-01-02

『宇宙のダークエネルギー―「未知なる力」の謎を解く』土井守 松原隆彦(光文社新書 539)
本書は、2部構成でダークエネルギーについてやさしく解説している。宇宙の歴史からダークエネルギーが存在するであろうことが予測された根拠となった宇宙の加速膨張についてである。
2011年のノーベル物理学賞は、サウル・パールミュッターとブライアン・シュミット、アダム・リースの3人が受賞した。授賞理由は「遠距離の超新星観測を通じた宇宙の膨張加速の発見」だった。
宇宙が膨張しているのであれば、時間経過と共に宇宙に存在する物質の重力によって膨張速度は減少し、収縮に転じると考えられてきたが、Ia超新星を観測することで膨張は減じるどころか加速していることがわかったのである。
宇宙が膨張していることを最初に観測したのは、1929年、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルである。それまで、宇宙は静的なものであると思われていた。
だから、アインシュタインは一般相対性理論の発表直後に、重力方程式では動的な宇宙しか存在しないことに気づき、宇宙項(宇宙定数)とよばれる項を追加した。しかし、1931年に宇宙は膨張していることを認めて、宇宙項(宇宙定数)の導入を撤回した。
ところが、1998年にパールシュミッター等によって宇宙は加速膨張していることが観測され、80年後になって宇宙項(宇宙定数)が膨張を止める働きではなく、膨張を加速する担い手として再び脚光を集めることになった。
宇宙には光を吸収するダークマター(暗黒物質)があることは、1930年代にスイスの天文学者ツビッキーによって示された。ツビッキーは「かみのけ座銀河団」の総質量を推定したところ、そこに含まれる銀河の質量を足したものより約400倍重いことを発見した。
ダークマターの正体はわかっていないが、ダークマターだけでは宇宙が加速しながら膨張していることは説明できない。
宇宙に存在するエネルギーのうち、元素はたった4%で、23%はダークマター(暗黒物質)、73%はダークエネルギー(暗黒エネルギー)だという。宇宙に存在する96%は、その正体がわかっていないのだ。
本書では、アインシュタインが重力方程式に加えながらも後に否定した宇宙項(宇宙定数)がダークエネルギーであることをやさしく解説している。
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