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『マーラーの交響曲』金聖 響+玉木 正之(講談社現代新書 2132)

マーラーの交響曲


『マーラーの交響曲』金 聖響+玉木 正之(講談社現代新書 2132)


本書は、グスタフ・マーラーの11の交響曲について、指揮者の金聖響とスポーツ・音楽ライターの玉木正之がその魅力を詳しく語り尽くしている。

序章と末章に2人の対談があって、本編は金が語り玉木が書き起こした体裁になっているが、ところどころ「玉木さんに紹介してもらいましょう」に続けて玉木が補足している。だから単なる聞き書きではなく共作といって良いだろう。

金はマニアといっても良いほど、マーラーの生涯についての資料を読み込んでいて、それぞれの交響曲の背景や構成、オーケストレーションについて指揮者ならではの詳しい解説を語っている。在日韓国人三世である金は、ボヘミアに生まれウィーン、ドイツ、アメリカと遍歴したユダヤ人である“ボヘミアン”のマーラーと自らを重ねあわせている。高校からアメリカで学んだ金にとってマーラーは「特別」なのである。

各章立ては、交響曲第1~9番・大地の歌・10番(クック版)となっていて、初演のデータが章扉の裏に記されている。第8番までの初演指揮者はマーラーだが、ウィーン宮廷歌劇場(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と同じメンバー)の音楽監督・常任指揮者を務めていたにも関わらず、ウィーンではなくドイツなどで初演されている。マーラーはオペラや交響曲の指揮者として著名ではあったが、自分が作曲した交響曲をウィーンで指揮することは出来なかったのだ。

マーラーはオペラやオーケストラの上演がないオフシーズンの6~8月を作曲の期間にあてていたという。19世紀末にはシェーンベルグらによって無調音楽が生み出されており、当時の聴衆からすれば調性音楽の交響曲を作曲するマーラーは時代遅れであり、孤高の存在だったようだ。

マーラーが再評価されたのは、死後50年を経てからだった。レナード・バーンスタインや愛弟子ブルーノ・ワルターの功績も大きいが、実は『交響曲第5番』の第4楽章アダージョが映画『ベニスに死す』に使われたり、カラヤンの世界的ミリオンセラー『アダージョ・カラヤン』に収められたからだという。

これまでマーラーの交響曲は、最初の第1番、『子供の不思議な角笛』から歌詞やメロディが採られているため「角笛三部作」と呼ばれる第2~4番、「古典回帰」といわれる第5~7番、集大成の第8番・大地の歌・第9番という4分類されるのが一般的だった。しかし、金は以下の5分類を最近になって確信したという。

1.交響曲作家としての出発(1番)
2.ベートーヴェンへの意識と離脱(声楽付きの2~4番)
3.新しい交響曲への模索と実験(5~7番)
4.過去の集大成と新しい音楽の芽生え(声楽付きの8番)
5.新しい交響曲の始まり(大地の歌、9番、クック版10番)

金は、この中でワーグナーやブラームスが挑戦したベートーヴェンの『第九』を超える交響曲を、マーラーは交響曲第2番「復活」で達成したと高く評価しているが、別格として好きなのは第9番だという。

『第4番』はマーラーの交響曲の中で最も「親しみやすく、聴きやすく、わかりやすい」といわれている。しかし、金は「わかりやすい」というのは違うという。第1楽章と第4楽章で♪シャンシャンシャン♪とそりの鈴が鳴らされるが、哲学者のテオドール・アドルノはこれを「道化の鈴」と呼んだという。道化師の帽子に付いている鈴のことだ。道化師が出てきて芝居が始まり、メルヘンやパロディが演じられて、道化師が再登場して舞台が閉じる、という構造なのだ。

もともとは『第3番』の第7楽章として作曲したものを第4楽章にした『第4番』は「フモレスク」という表題付きで構想されたらしい。フモレスクとはフランス語でユーモレスク「奇想曲」という意味で、ドボルザークの『8つのユーモレスク』が有名だ。

第4楽章の楽譜には、ソプラノパートの楽譜には「子供らしく明るく朗らかな表現で、絶対にパロディにならないように」と書かれているという。喜劇は大まじめに演じなければ、観客を笑わすことができず観客に笑われてしまうからだ。

ベートーヴェンやブルックナーといった作曲家が交響曲第9番を作曲後に死去したので、マーラーは9番目の交響曲を『大地の歌』と名付けた。しかし、やはり生前に生の演奏を聞くことが出来たのは、それまでのように自分で初演を指揮した『第8番』までだった。そしてマーラーは死をテーマにした『第9番』の作曲を終え、『第10番』の第1楽章の作曲を終えたところで病に倒れ死んでしまう。

イギリスの音楽学者デリック・クックによって未完成だった『第10番(クック版)』が完成するまでもいかにして作曲したかが詳しく語られていて面白い。

本書を読む際には、マーラーの愛弟子ワルターはもちろん、バーンスタイン、ショルティ、カラヤン、インバル、ショルティ、ベーム、アバドなどさまざまなCDを聴きながら楽しむこととなった(10番クック版は残念ながら未聴)。

本書のお陰で久しぶりにマーラーの交響曲にたっぷりと浸る時間を持つことができた。金と玉木のコンビはすでに『ベートーヴェンの交響曲』と『ロマン派の交響曲』を出している。2冊を読むのが楽しみである。



■関連書籍
『ベートーヴェンの交響曲』金 聖響+玉木 正之
『ロマン派の交響曲』金 聖響+玉木 正之


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