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『易経入門―孔子がギリシア悲劇を読んだら』氷見野良三(文春新書 820)

易経入門


『易経入門―孔子がギリシア悲劇を読んだら氷見野良三(文春新書 820)


本書は、『易経』を分析ツールにしてギリシア悲劇を読み解くという試みである。なぜ易経が分析ツールになりうるのか。著者はこう説明している。

易経は無限に多様な現実を一旦抽象的な陰と陽の関係に整理し、その抽象的な関係に共通な特性を象徴的に表現することにより、再び無限に多様な現実への適用を可能にする。(p.35)

著者が『易経』をギリシア神話やシェークスピア等に当て嵌めたところ、ソポクレスの全7編の戯曲では、状況だけでなく6人の登場人物の行動や心理を説明でき、困難な状況を避けるためのアドバイスまでもが的確に書かれていたという。しかし、ギリシャ三大悲劇詩人の残りの2人のアイスキュロスとエウリピデスの作品ではうまく適合させることができなかったらしい。

『易経』は、約5000年前の伏羲(ふっき)が六十四卦を作り、周の文王とその息子の周公が「卦」とそれぞれの「卦」における尊卑6人の「爻(こう)」の意味を書いた。さらに、孔子が解説を書いたとされる。

易では、陽陽陽・陽陽陰・陽陰陽といった具合に3桁の陰陽(2進数)の組み合わせは8種類になる(2×2×2=8)。この3桁を2つで1セットにして「卦」と呼ぶ。全体の状況を表すのが「卦」であり、これが64ケース(8×8=64)あるとする。その状況下に、尊卑の違う6人の登場人物がいて、これが「爻(こう)」と呼ばれる。身分の下から順に以下のように並ぶ。

下卦
 初爻:庶民
 二爻:士、下僚、低い位置の官吏
 三爻:大夫、事務官の上級、高官
上卦
四爻:公卿、大臣宰相または諸侯
五爻:天子、君主
上爻:位のない尊い人、太上皇、王公につかえない隠君子、最高顧問

占い師は、筮竹や算木で「卦」を導きだして、それに基づいて『易経』の経文に書かれた状況や個人の取るべき行動を解説するのが一般的だ。

これに対して著者は、ギリシア悲劇から主要登場人物を6人に絞り、それぞれを行動的か否か剛柔かといった二元論によって陰陽を決める。その順列によって「卦」を決定して、ギリシア悲劇のストーリーと合致するかどうかを検証している。すると驚くことに、ソポクレスの作品では著者の主張通りに、登場人物たちは『易経』に書かれた通りの状況に遭遇し、経文どおりの行動をしているというのだ。

「孔子がギリシア悲劇を読んだら」という副題は、もちろん孔子がギリシア悲劇を読んだ、という仮定ではない。著者が『オイディプス』などソポクレスの7作品を『易経』で読み解くとともに、経文を「東洋の老賢人」として語らせ、ギリシア悲劇の登場人物たちと「対話」させるという二次創作を行っていることによる。老賢人の発言は『易経』にそっており、ソポクレスの戯曲にぴったり符合することを示している。

著者は金融庁のキャリアであり、中国古典やギリシア悲劇の研究者ではない。こうした大胆な解読を試みたのは、中国の古代都市国家とギリシアの古代都市国家では価値観や世界観が共通することに気づいたからだという。ウラジミール・プロップによる昔話の構造分析を思い出させる。

場所や時代が変わっても、人間の営みには大きな違いがなくて、その構造はせいぜい100未満のケースに分類できるということだろうか。さまざまな状況の中で右往左往しながら生きていくのが人生だということだろう。


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