TOP > スポンサー広告 > 『渡辺京二傑作選3 なぜいま人類史か』渡辺京二(新書y)TOP > 新書 > 『渡辺京二傑作選3 なぜいま人類史か』渡辺京二(新書y)

昼食難民の新書生活

(新宿・秋葉原・芝浦など各地でのランチと読書)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『渡辺京二傑作選3 なぜいま人類史か』渡辺京二(新書y)

なぜいま人類史か


渡辺京二傑作選3 なぜいま人類史か』渡辺京二(新書y)


本書は、葦書房から1986年に単行本として出版され、2007年に洋泉社MC新書に収められた。さらに著者の『黒船前夜』が第37回大佛次郎賞を受賞したことを記念して渡辺京二傑作選3として再版したもの。

【目次】

Ⅰ なぜいま人類史か
Ⅱ 共同体論の課題
Ⅲ 外国人が見た幕末維新
Ⅳ 明治維新をめぐる考察


「なぜ人類史か」は、浄土真宗のお寺で青年僧たちに行った講演であり、「共同体論の課題」「外国人が見た幕末維新」「明治維新をめぐる考察」は、葦書房が主催した講演会である。加筆修正を加えているので、いわゆる講演録ではなく「論文」となっている。

「人類史」というタイトルだが、人類の数十万年に及ぶ歴史ではなく、ごく最近である十八世紀以降の近代について論じている。全編を覆っているのは近代批判である。

「なぜ人類史か」では、「社会生存」と「天地生存」(国木田独歩)が論じられる。「人間が群れをなさずには生きていけない存在であるにもかかわらず、一方では、群れを離れたいという強い衝動も同時にもっている」からだ。

「共同体論の課題」では、マルクスによる「ギリシア・ローマ的」「アジア的」「ゲルマン的」と3つの類型による共同体理論を詳しく分析しつつ、先行論文の多くを誤読であると断じた上で最終的に次の「課題」を上げている。

人間は共同体という古い衣を脱ぎすて、もう返れない「個」の世界に移動したのである。(略)「個」の社会の中で漂流しながら、人間の共同的な関係というものはどういうものであるか、それはどうしたら創り上げることができるのか、ということをたえず課題として持たねばならないのです。

我々はすでに共同体を失っているという、ちょっと驚くほど常識的な結論に拍子抜けする。

「外国人が見た幕末維新」は、ロングセラーとなっている自著『逝きし世の面影』の元になった講演である。幕末前後に日本に滞在した外国人が著した日本滞在記から、オールコック『大君の都』、ハリス『日本滞在記』、カッテンディーケ『長崎海軍伝習所の日々』、ゴンチャロフ『日本渡航記』、イザベラ・バード『日本奥地紀行』の5冊を中心にして、江戸末期から明治にかけての武士と農民の姿を描いている。

外国から来た近代人による近世人というよりも前近代社会と前近代人の観察記録であり、未開人を見るような優越感に満ちた記述でありながら、一様に日本を桃源郷のように描いているという。

日本人は優秀で、庶民は「馬鹿面」で幸せに暮らしているが、武士は嘘つきの信用できない人種として描かれている。それは、庶民と武士は隔絶した共同体に属していたからだと渡辺は言う。緩い法規制の中でのびのびと生きていた庶民に対して、官吏として外交交渉にあたっていた武士は開国を迫る外国人に対して嘘をつかなければなかったし、近代的な「契約」や「約束」の概念がなかったからだとする。

「明治維新をめぐる考察」では、まず講座派と労農派による「日本資本主義論争」を論じている。渡辺は、そもそも人類の歴史上、ブルジョア革命が起こったのはイギリスとフランスだけ、プロレタリア革命はロシア、中国、キューバ、ヴェトナムだけでしか起こっていない特殊な事例に過ぎないとする。コミンテルンの指導で日本の歴史を無理やり解釈しようとすることが間違いだったことを徹底的に批判している。

本書が書かれた1986年には、ソ連でペレストロイカが始まっていたとはいえ、1991年のソ連崩壊に遡ること5年であった。社会主義国家体制の賞味期限はわずか70年間だった。

ところで明治維新の解釈は、近代化が日本に迫った時に身軽で自由に動けた下級武士だけがその危険を察知して動いた、という誰でも知っている話になっている。

4つの論文で通奏低音のように書かれているのは近代批判である。渡辺は、共同体を破壊し、隔絶した「個」として生きることを迫った近代を嫌い、限られた自由ではあっても人々が「馬鹿面」をしながら平和に暮らしていた前近代への憧憬が強いようだ。




関連記事

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://pasage.blog43.fc2.com/tb.php/1484-a052f9fe

 | HOME | 









ブログランキングに参加中です

リンク

お気に入りに追加
このブログをリンクに追加する

最近の記事

にほんブログ村ランキング

ブログ内検索

Loading

カテゴリー


全記事一覧(500件ごと)

カレンダー+月別アーカイブ

ケータイ版URL

QRコード

RSSフィード

プロフィール

pasage

Author:pasage
昼食時は「難民」と化して「新書」を片手に、都内各地を彷徨っています。

FC2Ad

Template by たけやん

QLOOKアクセス解析

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。