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『ベートーヴェンの交響曲』金 聖響+玉木 正之(講談社現代新書 1915)

ベートーヴェンの交響曲



『ベートーヴェンの交響曲』金 聖響+玉木 正之(講談社現代新書 1915)

指揮者の金聖響の解説を玉木正之が書き起こした、「ベートーヴェンの交響曲」講義。3冊目となった『マーラーの交響曲』を先に読んだが、本書もベートーヴェンの9曲の交響曲について、懇切丁寧な解説を展開している。

フルトヴェングラーやトスカニーニといった「大指揮者の時代」には、ベートーヴェンの交響曲は深い精神性や物語性によって演奏しようとする傾向が続いていたという。そのため、壮大さを出すためにベートーヴェンの指示よりもずっと遅く演奏するようなことも行われたらしい。

大指揮者たちは、ベートーヴェンの楽曲の精神性を重んじるとして独自に解釈して、壮大で重厚な音楽にしたが、作曲当時のオーケストラ編成は現在の半分程度で、楽器も大きな音のでないものを使用していたという。

また、現在は第2ヴァイオリンが第1ヴァイオリンの右後ろに配置されているが、これは1920年代の録音技術が低かったために、指揮者のストコフスキーが楽器の位置を客席から見て左から右へ高音楽器から低音楽器が並ぶように位置を変えた結果だ。ストコフスキー以前は、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンはオーケストラの左右に別れており、ベートーヴェンの交響曲には第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの掛け合いが左右から聞こえるように意図したものがあるという。

しかし、聖響はできるだけ楽譜に忠実に演奏すべきであると考えている。ベートーヴェン自身が「英雄」という標題を残した楽曲でさえ、聖響・演奏家・観衆のそれぞれが異なる英雄像を抱いているのだから、自らの英雄像を押し付けるのではなく楽譜通りに演奏することが大切だと考えているからだ。

そのため、聖響は練習の際にも個人の解釈で異なるエモーショナルな指示は出さずに、強弱やテンポのような客観性のある指示だけで交響曲を作り上げようとしているそうだ。そもそも聖響は「解釈をしない」という。解釈は主観でしかないのだから、楽譜に書かれたことをできるだけ忠実に再現することが「再現芸術家」としての務めだというのである。

ただし、難しいのは必ずしもベートーヴェンの意図通りの楽譜になっているわけではない点があることだ。オリジナルの楽譜は、写譜屋によってパートごとの楽譜にされるが、ベートーヴェンの手書き楽譜は書き直しや書き込みが多いため、読みにくかったこともあって誤記が多いという。

また、聴力を失ったベートーヴェンのためにメトロノームが発明されたため、以前に作曲した交響曲にもベートーヴェンはメトロノームによる演奏速度を書き加えたが、絶対に演奏できないようなスピードも書きこまれているという。

『マーラーの交響曲』でも書いていたが、ベートーヴェンも交響曲の冒頭には、最初に聞いた人々が「なんだ! これは?」と驚く、新しい工夫を凝らしているという。例えば、「ハニホヘトイロ:CDEFGAH」とすべて調性の異なる交響曲を作ってみよう、といった遊び心があったのではないかと想像している。実際には「ニ短調」と「嬰ニ短調」と「D」がダブってしまい、「G」では作曲されなかったが。

『英雄』と『運命』に挟まれて目立たない『第4番』についても詳しく解説していて面白い。

また、『第5番』の第3楽章には、ホルン4台によるメロディが高らかに鳴り響く。この部分は、実は演奏家にとって非常に難しいところだという。だから、傲慢なホルン奏者を困らせるために書いたとも、親しいホルン奏者のために高度なテクニックを披瀝できるように書いたとも言われている。聖響は、この部分も確かなところがわからないのだから、楽譜に忠実に演奏するだけだという。

ベートーヴェンが書いたオリジナルの楽譜はとても乱雑であったという。そのため、写譜師によって書き写されるときの誤記も少なくないので、聖響はオリジナルの楽譜を分析することで、ベートーヴェンが意図した通りの楽譜を再現する試みも行っている。

本書でも金聖響の飾りがなく率直でストレートな語り口と誠実な姿勢に好感をもった。聖響は、わからないことは「わからない」とはっきり言う。聖響にもベートーヴェンの考えたことを想像することは可能なはずだが、それでは独断にすぎないと考えているからだ。


■関連書籍
『ロマン派の交響曲』金 聖響+玉木 正之
『マーラーの交響曲』金 聖響+玉木 正之


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