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昼食難民の新書生活

(新宿・秋葉原・芝浦など各地でのランチと読書)

『職業としてのAV女優』中村淳彦(幻冬舎新書 263)

職業としてのAV女優



『職業としてのAV女優』中村淳彦(幻冬舎新書 263)

著者は、500人ものAV女優をインタビューした風俗ライター。

【目次】

序章 新人AV女優の誕生 毎年6000人
第1章 AV女優の労働条件 日当3万円
第2章 AV女優の労働市場と志望理由 倍率25倍
第3章 AV労働環境の変遷 96年のカオス
第4章 労使トラブル 損害賠償1000万円
第5章 AV女優の退職 引退後の付加価値は2倍


本書の前半は、AV女優になるための就職ガイド風になっていて興味深い。とはいっても、もちろんAV女優への就職を勧めているわけではない。割に合わない職業だからだ。

毎年、4000~6000人のAV女優が誕生し、同じ数だけ去っていくという。AV女優は、使い捨てなのだ。

そして、AV女優は「単体」「企画単体」「企画」という3つのランクに分類されるという。3つのランクは容貌やスタイルによって決定する。そのままで1本のAV作品を制作できるから「単体」で、これに対して「企画単体」は看護婦モノや妹モノなど何らかの企画なりストーリーがないと作品が成立しないとされる。「企画」は大人数が出演する作品や、「企画単体」の脇役になる。

「単体」はメーカーと専属契約して数本の主演作品に出演し、「企画単体」は専属契約せずに複数のメーカー作品に主演や脇役で出演する。そして、「企画」は主役ではなく脇役として出演するだけである。

当然のことながら、ランクごとに1本あたりの出演料は大きく異なり、「単体」は100万円以上、「企画単体」は20万円、「企画」になると3~5万円程度らしい。

性行為はもちろん体の隅々まで撮影され、SMやスカトロといったハードな撮影に応じても、ほとんどのAV女優は日給3~5万円という薄給に甘んじなければならないのだ。

また、「就職」する経緯も異なり、「単体」はスカウトが街で声をかけて拾ってくるが、「企画単体」や「企画」は水商売系就職雑誌やモデルプロダクションのHPに自ら応募して採用されるという。

ところが、AV業界はそれほど甘い世界ではない。

100人の応募があったと仮定して面接をするのは30名、企画単体での採用は12.5パーセントで3.75人。企画の採用は33パーセントで約10人となる。求人倍率は企画と企画単体合わせて約14パーセント、企画単体になると倍率は25倍という極めて狭き門になっている。(p.78)

つまり、AV女優としてモデルプロダクションに応募しても14%しか採用されないのだ。さらに、AV女優として稼げるようになれるのはごく一部の女性だけになっているのだ。

90年代まではAV女優に応募する素人はいなかった。そのため、知人やヒモの紹介によってAV女優が多かったという。なり手の少ない売り手市場だったため、顔やスタイルが問われることは少なく、その一方で、統合失調症や躁うつ病、人格障害などの精神を病んだ女性が多かったという。

スカウトが職業として成り立つのは、発掘したAV女優の出演料の10~15%をずっと受け取ることが出来る仕組みになっているからだ。AV女優がAVを辞めるまでなので、人気のAV女優を数人発掘すればスカウトの年収はプロ野球選手並になるらしい。

「単体」でデビューしても売れなければ、数本で「企画単体」にランクダウンし、さらに「企画」へとダウンするらしい。その一方で、蒼井そらや及川奈央など「企画単体」からスタートして、数多くのAV作品に出演して知名度を得て人気者となり芸能界へ転身する例も稀にはある。

しかし繰り返すが、AV女優に応募しても採用されるのはごくわずかであり、さらに職業として成り立つ収入を得るまでになるのは25倍という狭き門なのである。

本書ではAV女優の引退後についても触れている。単体 → 企画単体 → 企画とランクが落ちて、賞味期限が切れたAV女優が芸能界へと転身できた例はほとんどないという。とはいえ、AV女優として有名になった女性のなかには、キャバクラ・ソープランドなどに転身し、「元AV女優女優」という付加価値で稼げる場合もあるらしい。

しかし、出演機会が少なく名前も売れなかったほとんどのAV女優はひっそりといなくなり、結婚したりヘアメイクや看護師など手に職をつける職業へと転職するという。

また、インターネットの無料サイトで無修正AV動画を見ることができるようになった現在、AV作品を購入しているのはインターネット・リテラシーの低い40~50代男性が中心になっていて、AV産業は縮小するばかりなのだという。



■関連新書
『日本の風俗嬢』中村淳彦(新潮新書 581)


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