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昼食難民の新書生活

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『自己愛な人たち』春日武彦(講談社現代新書 2160)

自己愛な人たち



『自己愛な人たち』春日武彦(講談社現代新書 2160)


本書は、誰もが心に抱きながら飼い慣らすのに苦労することもある自己愛について小説や症例をもとに多角的に論じている。

【目次】

第1章 自己愛に似たもの
第2章 目立ちたがる人たち
第3章 折り合いをつける
第4章 他人を巻き込む
第5章 変装する自己愛
第6章 持て余す自己愛


著者は「自己愛人間」と書いているが、強烈な自己愛のために他者と平穏な関係を構築するのとが困難な「自己愛性人格障害」と呼ばれる人々のことだろう。

著者は、「自己愛」を《自己肯定》と《思い上がり》、《独りよがり》がないまぜになったものと考えている。

自己愛のプラスの面として《自己肯定》は、自分に誇りを持ち、自信を抱くことを通して意欲を高める。経験や実績に根差した自尊心は、頼もしさや魅力を醸し出す。

しかし、《思い上がり》という側面では、尊大で自己中心的、選民意識や特権意識に彩られ、共感を欠きそれゆえ他人を蔑ろにしたり利用したしすることを平然と行う。他人の心の痛みなど、まったく意に介さない。目立ちたがり屋で、傲慢さが血液のように全身を隅々まで循環している。身勝手な王様気分である。

さらに、自画自賛や自己陶酔、自分に都合の良い思い込み、空回りといった《独りよがり》の様相もある。

たいていは子供じみた《思い上がり》や《独りよがり》の要素を心に秘めつつも、それを自覚してコントロールを図っているのが大人なのだろう。もちろん、著者の言うように《思い上がり》や《独りよがり》を払拭することなどできないから、未練たらたらで断念したり、照れ笑いをしながら妥協したり、何くわぬ顔をしたまま偽装したり、ときには居直ったりする。

自己愛には、自分の素晴らしさや他人の賞賛を無条件にアテにしている――つまりどこか楽天的で甘えた部分がある。(略)いっぽう空虚感、あらゆる信頼感や安心感や充実感を否定する。意味や価値を無効にする。未来や希望を退色させる。(p.52)

そうした空虚感に包まれた深いパーソナリティ障害の青年と面接したことを紹介している。彼は、普通の服装では露出してしまう首の部分に2つの梵字に似た模様のタトゥーをしていたという。どこに就職しようとしても、面接で落とされてしまうような不気味なタトゥーは、歪んだ自己愛の発露であり、他人を不安にさせることで社会に復讐しようとする憎悪にあふれていたという。

人はどんな具合に自己肯定を図るのか、どれほど突飛に自尊心を発揮しようとするのか、どれだけ苦々しい思いで現実と妥協をするのか、どれだけ意外なところに切実な思いを寄せているのか。つまり世間を生きていくうえで、自己愛はどんな具合に折り合いをつけられていくのかが、まことに興味深い。(p.88)

最近の精神医学や心理学では、自己愛を誇大型と敏感型の2つに分類しているという。誇大型自己愛は、尊大なオレ様主義の目立ちたがり屋で、他人のことなんか目に入らないタイプで、躁的なトーンを帯びている。芸能界や政界に多数生息していそうで、ワンマン社長なども当てはまる。自己愛が強いためにスポットライトを浴びずにいられない。

一方、過敏型自己愛は、自己愛が強すぎるからこそ醜態を見せたり失敗することを恐れ、結果として臆病かつ引っ込み性、内向的になる、日本にはこの過敏型が多いという。

さらに著者は、卑しい自己愛と健全な自己愛があるという。前者は傲慢さや尊大、思い上がり、自己顕示欲、自惚れからなり、後者は余裕やおおらかさ、向上心、誇りから成るという。

自己愛の4つのタイプである誇大型ー過敏型、卑しい自己愛ー健全な自己愛を直交座標系にポジショニングした分析が面白い。

卑しい自己愛と過敏型が重なった象限にいるのが多くの日本人であるという。

卑しい自己愛と誇大型が重なった象限にいるのは、我慢や努力を惜しみ才能を有効活用できずにチープな人生しか送られない例として、ハンサムでありながらアルコール依存で酒乱の患者を紹介している。

健全な自己愛と誇大型が重なったのが岡本太郎で、健全な自己愛と過敏型が重なった象限にいるのは理屈として成り立ちにくいとしながら、誰もが卑しい自己愛と健全な自己愛の双方を心に秘めているとしている。

自己愛は自己実現のためのエンジンとなるが、過大になれば尊大で過剰な自己肯定になってしまう。だからこそ、我々は自己愛とうまく折り合いをつけながら生きなければならないのだ。


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