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『動物に「うつ」はあるのか―「心の病」がなくなる日』加藤忠史(PHP新書 799)

動物に「うつ」はあるのか


『動物に「うつ」はあるのか―「心の病」がなくなる日加藤忠史(PHP新書 799)

精神疾患にはまだ血液やホルモン、医療画像などによる検査法はない。だから診断は面接によって行われている。治療法も限定されたものにとどまっている。他の疾患に比べて、精神疾患の医療は著しく遅れているのだ。

本書は、そうした精神疾患の解明に向けて最新の研究を詳しく解説してくれている。

【目次】

第1章 動物に「うつ」はあるのか
     ―物言わぬペットの心
第2章 なぜ、精神疾患は解明されないのか
     ―動物実験には限界がある
第3章 いま、精神科診療で行われていること
     ―精神疾患の診断をめぐる落とし穴
第4章 精神疾患を克服するためのロードマップ
     ―臨床研究と基礎研究はどこまで歩み寄れるか
第5章 動物実験の是非を考える
     ―動物モデル研究は何をめざす?
第6章 来るべき精神科診療のあり方
     ―「心の病」はほんとうになくせるか


「DSM-Ⅳ」のような指針はあっても、医師は患者との言語コミュニケーションによって精神疾患の病名を診断しているにすぎない。言語コミュニケーションが成立しない動物を「うつ」と診断することは可能だろうか。動物にも「うつ」はあるかもしれないが診断はできない、というのが著者の立場である。「物言わぬペットの心」は計り知れないのだ。

しかし、精神疾患の解明や医薬品の開発には「うつ状態」や「統合失調症」の動物モデルが必要なのである。

かつては原因がわからなかったアルツハイマー症は、海馬の縮小という器質的な変化があることがわかっている。またパーキンソン病は、中脳にある黒質というわずか数ミリの物質が消失することもわかっている。さらに、パーキンソン病はアミロイドβやタウという原因物質まで解明されてきた。

しかし、大うつ病や双極性障害、統合失調症に関しては、脳の器質的変化も原因物質もわかっていない。だから、動物モデルや患者の死後脳を詳細に分析する必要があるのだ(著者は、死後脳を集める「脳バンク」の必要性を説いている)。

著者は、精神疾患の解明と克服に関して下記のようなロードマップを示している。

①ゲノム研究で稀な原因遺伝子発見〈臨床研究〉
②動物モデル作成〈基礎研究〉
③動物モデルの妥当性確認と人の脳画像研究〈基礎研究〉〈臨床研究〉
④動物モデルで脳の病変を解明〈基礎研究〉
⑤死後脳研究で確認〈臨床研究〉
⑥病理学的基盤をもつ病気として確立〈臨床研究〉
⑦脳病態診断法の開発(動物実験)〈基礎研究〉
⑧脳病態診断法の確立(臨床研究)〈臨床研究〉
⑨根本的治療法・予防法の開発〈基礎研究〉
⑩臨床試験〈臨床研究〉

精神疾患の原因が遺伝子にある、というのがスタートである。つまり遺伝病なのだ。その原因遺伝子すら発見されていないのだから、精神疾患の解明までは何十年もかかりそうだが、著者は20年くらいをかけて1つの病気を克服するつもりで取り組んでいるという。

ところが、精神疾患克服のブレークスルーには臨床研究と基礎研究のクロストークが必要だが、対象と方法・技術開発・対照実験・データの解析と提示・統計手法・発表の仕方と倫理などの点で大きな断絶があるという。臨床医でありながら基礎研究を続ける“絶滅危惧種”である著者だけに、この「告白」は恐ろしいばかりだ。精神疾患の解明と克服のためには、両者が協力しなければならないのは明らかなのに、低レベルの独善で研究の展開が妨げられているのだ。

最後には、双極性障害の再生医療について将来像も描いている。

双極性障害の薬は偶然に発見されたリチウムが基本だが副作用が強いため、当然のことながら副作用の少ない薬の開発が進められている。ところが、患者からは薬を服用しなくてもよくなる根本的治療法を望んでいるという。

そこで著者は、双極性障害患者の神経細胞にはストレスに弱い脆弱性があり、その結果、気分をコントロールする神経細胞が障害されやすやい、という発症のメカニズムが予想通りならば、脆弱性を持たない神経幹細胞を注射することでストレスに弱くない神経系に回復させる、ことを目指したいとしている。

数少ない希望的将来像だが、本書では、精神疾患はまだ何も解明されていないという絶望的な状況が明らかにされているのだ。

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コメント

動物にも「うつ」はあるんでしょうかね?
うつっぽい表情をした犬とかたまにいます。

Re: タイトルなし

ジュリさん、コメントありがとうございます。

人間の場合には、言語によるコミュニケーションで「うつ」と診断されますが、動物には気分を尋ねられないので、人間と同じような「うつ」なのかどうかはわからない、というのが著者の立場です。

しかし、動物病院では分離不安や活動低下などで「うつ」と診断して抗うつ薬を処方しているそうです。

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