『ヒッグス粒子と宇宙創成』竹内薫(日経プレミアシリーズ 164)
2012-09-30

『ヒッグス粒子と宇宙創成』竹内薫(日経プレミアシリーズ 164)
今年(2012年)7月4日、50年前に存在が予測された素粒子の「ヒッグス粒子」が「発見」されたと報道された。ノーベル賞の受賞は確実と言われる大発見だ。欧州合同原子核研究機構(CERN)の2つの研究チームが99.999%以上の確率でその存在を確かめたという。
本書は、その「ヒッグス粒子」を含めた素粒子の研究と宇宙の創成に関して、中学生にもわかるように数式を一切使わず丁寧に解説している。
【目次】
はじめに
プロローグ
第1章 素粒子って何?
第2章 ヒッグス粒子とは何か?
第3章 宇宙はどのようにして作られたのか?
第4章 粒子の実験に使う「加速器」とは?
第5章 実験装置の中を探ってみよう
第6章 ヒッグス粒子発見は物理学の未来への第一歩
参考文献
謝辞・追記
あらゆる物質が原子からなっていることは誰でも知っている。原子は原子核と電子で構成され、原子核は陽子と中性子からなっている。陽子と中性子は、3つのクォークからできている。これ以上分けることのできない素粒子は、クォークや電子などで16種類が「発見」されていた。今回「発見」されたヒッグス粒子は、17番目の素粒子である。
クォークは6種類ある
アップクォーク
ダウンクォーク
チャームクォーク
ストレンジクォーク
トップクォーク
ボトムクォーク
電子の仲間であるレプトンも6種類ある
電子
電子ニュートリノ
ミューオン
ミューニュートリノ
タウ
タウニュートリノ
以上の12種類の素粒子の間に働く、電磁力・強い力・弱い力の3種類の力を媒介するのが4種類のゲージ粒子
光子
Zポゾン
Wポゾン
グルーオン
ヒッグス粒子は、これらの16種類の素粒子に「質量」を与えるために「神の粒子」と呼ばれている。ヒッグス粒子は、あらゆる場所に存在して、プールの中にある水が人間が移動する際に抵抗を与えるように、あらゆるものに「質量」を与えるという。
ところで、素粒子のヒッグス粒子はどうやって「発見」されたのか。ジュネーブ郊外にある欧州合同原子核研究機構(CERN)には直径27キロの円形加速器があり、陽子を猛烈な速度で衝突させ、そこから飛び出したヒッグス粒子を「発見」したのである。
ヒッグス粒子が、宇宙の創成とどうかかわるのか。我々の身体や地球を含め、宇宙全体に存在する物質は、4%しか正体がわかっていない。23%は暗黒物質(ダークマター)、73%が暗黒エネルギー(ダークエネルギー)だといわれ、ヒッグス粒子が暗黒物質の候補の1つに挙げられているのだ。
137億年前に宇宙が誕生した瞬間には、宇宙は10のマイナス33乗センチという原子(1億分の1センチ、10のマイナス8乗センチ)よりも小さく、10の32乗度というとてつもない高温だったという。10のマイナス32秒後には、宇宙はリンゴぐらいの大きさになってクォークが生まれ、ビッグバンが起こって光子やヒッグス粒子が生まれ、宇宙誕生から1秒後には陽子や中性子、次に電子が生まれ、元素が生まれたのは3分後だたという。ヒッグス粒子は、10のマイナス32乗秒前というとてつもなく短時間前だけど、陽子や中性子よりも早く存在していたのだ。
「謝辞・追記」には、本書は竹内薫が語った話を大西桃子さんというライターが文章化したと書かれている。著者名は竹内薫だが、とてもわかりやすく読みやすい文章は大西桃子が書いたからなのだろう。
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