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昼食難民の新書生活

(新宿・秋葉原・芝浦など各地でのランチと読書)

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『日本農業への正しい絶望法』神門善久(新潮新書 488)

日本農業への正しい絶望法



『日本農業への正しい絶望法』神門善久(新潮新書 488)


日本の農業は絶望的な状況にある。

本書は、農業政策・農業者・農地・消費者の惨状に「正しく」絶望し、農業再生を図るための提言を行っている。

【目次】

まえがき
第1章 日本農業の虚構
第2章 農業論議における三つの罠
第3章 技能こそが生き残る道
第4章 技能はなぜ崩壊したのか
第5章 むかし満州いま農業
第6章 農政改革の空騒ぎ
第7章 技能は蘇るか
終章 日本農業への遺言


日本の農業生産による付加価値額は3兆円だが、農業保護額は4兆6000億円に上るという。つまり、日本の農業生産をゼロすれば、1兆6000億円の節税ができるという惨憺たる状況だ。しかも、この税金は人口の3%にすぎない農業者に支払われているのだ。

しかも、農業者の多くは農業以外の収入があり、非農業者の平均所得よりも多く、さらに大きな屋敷と広大な宅地を持っている。都市生活者の多くが賃貸住宅に暮らしているのだから、農業者へは過剰な保護政策が施されていることになる。

さらに、保護政策の基本となる農地基本台帳の記載が、きわめて杜撰な状態になっているという。民主党参議院会長の輿石東の自宅の6割が農地となっていて、2010年に農地の低い固定資産税しか支払っていなかったことが明らかになったように、法律違反の温床になっているという。

「安全保障としての食料自給率アップ」という農水省が言い出したデマを、いまだに発言する政治家や識者もいる。しかし、食料自給率しかもカロリーベースの食料自給率を問題にしている国など世界中のどこにもないらしい。農水省と族議員は日本の食料自給率がカロリーベースで39%になった大騒ぎしているが、小さな島国のシンガポールの食料自給率は10%に満たないという。そもそも日本は石油の99%を輸入しており、石油がストップすれば農業生産も輸送もストップするから、農業生産を安全保障と結びつけること自体が間違いなのだ。

また、有機農業や規制緩和による企業の参入など「農業ブーム」が喧伝されているが、著者はマスコミや「識者」が作り出した幻想にすぎないという。

例えば、有機野菜の多くは窒素過多の不健康なものでしかないという。確かに、近所のスーパーで購入した有機栽培のキュウリを常温保存したところ数日で腐ってしまい、とても驚いたことがある。健康なキュウリは常温保存すれば干からびるはずだからだ。有機野菜や「健康野菜」などと銘打った減農薬野菜であっても、健康な野菜であるとは限らないのだ。

「日本の農産物は安全安心で高品質」とか「日本の農産物が中国で大人気」とマスコミは盛んに喧伝しているが、ホウレンソウのビタミンC含有量は過去20年間で半減しているという。名ばかりの有機栽培や農薬まみれの結果だ。

農業の基本は土作りであるといわれるが、著者は土作りの技能を持たない農業者が増えているという。土づくりに堆肥は欠かせないが、その堆肥すら作れない農業者が多いのだ。一方、名人と呼ばれるような農業者は、科学的知識と経験によって耕作技能を身につけている。農業は、天候や害虫など予測不能の要素が多く、マニュアル化した「技術」では対応できない。気温や湿度、風といった天候や病害虫を敏感に察知し、そのつど適切な対応をしていかなければならないのでマニュアル化できないのだ。

終章は「遺言」となっている。著者は、1962年生まれなのでまだ50歳だから遺書を書くには早い。本書は著者がいわば「命がけ」で書いたものなのだ。

著者の「遺言」は、以下の4点。

①日本農業の本来の強みは技能集約型農業にある。
②耕作技能の発信基地化することにより、農業振興・国民の健康増進・国土の環境保全・国際的貢献が期待できる。
③農地の乱れと、消費者の舌の劣化、放射能汚染問題が原因で農業者が耕作技能の習熟に専念できずに消失の危機にある。
④マスコミや「識者」は工作技術の消失という問題の本質を直視せず、現状逃避的に日本の農業を美化するばかりで耕作技能の低下を助長している。

「まえがき」で著者はこう書いている。

この本を書くことで、これまで、私に味方してくれていた人たちが少なからず去っていくかもしれない。批判ではなくシカトが私の前途に待ち受けているかもしれない。(略)私の選択の問題ではなく、いわばこれが私の人生なのだ。(p.7)

惨憺たる日本の農業に対して、「正しく」発言すれば黙殺されるかもしれないが、やむにやまれず本書を書いたということなのだ。


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