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『中国人民解放軍の実力』塩沢栄一(ちくま新書 985)

中国人民解放軍の実力



『中国人民解放軍の実力』塩沢栄一(ちくま新書 985)


著者は特派員として長らく中国を取材してきた共同通信社外信部次長。本書は、いまだに竹のベールに包まれたままにある人民解放軍の実像を、内部資料や関係者への取材を元に明らかにしている。

独自に入手した報告書や軍幹部向け教科書などの貴重な資料を駆使しており、軍幹部や軍事研究者へのインタビューを行うなど、中国軍部への深い食い込みと幅広い人脈が伺える。人民解放軍の実態に鋭く迫っていて驚くほどだ。

【目次】

第1章 カジノが空母に化ける―海洋戦力
第2章 先制不使用は絶対ではない―核戦略
第3章 目指すは制天権―宇宙開発
第4章 外国兵器は特別枠―国防費
第5章 攻撃は最大の防御―国防政策
第6章 党の軍隊―文民統制
第7章 無駄と腐敗―闇の軍組織
第8章 自らまいた種―中国脅威論
第9章 米国が目標―安全保障観


尖閣諸島魚釣島を日本政府が購入して以来、中国の船舶による領海侵犯が続いている。付近の海域で石油資源が発見された1970年代になって、中国が主権を主張し始めたという言説がなされているが、本書によれば中国の狙いは石油資源に留まらないという。

中国軍は、かつては陸軍が主力だったが、海軍力を増強しており、世界への影響力を増大させるために太平洋とインド洋への進出を意図している。その際に、南シナ海と東シナ海の東側の沖縄・台湾・フィリピンを結ぶ「第一列島線」、小笠原諸島・グアム島・インドネシアを結ぶ「第二列島線」が大きな障害となる。尖閣諸島はこの第一列島線の中国側にあり、絶対に譲れない領土と考えているのだ。

中国が海軍力を増強していることの証左として、2012年9月に就航した空母「遼寧」が挙げられる。1985年に建造が始まり、1991年のソ連崩壊によって完成前に工事が中断していた空母「ワリャーグ」を、香港のダミー会社を使って「カジノ船を作るため」と購入したのは1996年のことだった。「中国が空母購入」という報道を完全否定していたが、中国はどうしても空母が欲しかったのだ。

世界でも自前で軍艦を建造できる国は多くはない。ましてや空母となると、設計・建造技術を持つ国は非常に少ない。2012年現在、上海の造船工場では、新造船の空母を建造中だという。中国は「ワリャーグ」を十数年かけて分析・研究し、新たな設計で建造を始めたのだ。

軍事専門家によれば、戦略・戦術的には空母よりも潜水艦のほうが有効であるというのが常識らしいが、中国は米海軍の空母に脅威を感じたことから、国威発揚の象徴的な意味を含めて空母の建造に邁進しているのだ。

中国の核戦力は、「第二砲兵」が担当しているという。毛沢東以来、核による先制使用はしない、というのが中国の主張だったが、これは単に核弾頭の数が米ソに比べ、比較にならないほど少なかったからにすぎない。しかも、最近は先制攻撃をする場合もあるかのように変化しているという。

中国脅威論についても、詳細な分析をしている。日本の政治家が「中国の軍事力は脅威」と語ると中国政府は激しく反発するが、これは「脅威」という漢語の意味が日本と中国では違うためだという。中国語の「威脅」は積極的に相手を脅す「脅迫、威嚇」という意味だから、「脅威」という言葉を使うと過敏に反応する。しかし、人民解放軍の基礎理論には「威懾(いしょう)による攻撃中止」があり、威懾という言葉は日本語の「脅威」に近いという。

中国の軍事力が「脅威」なのは、軍事力が不透明だからだ。例えば、軍事費に関しても中国政府が明らかにしている数字は実際の半分程度の可能性があり、さらに軍部は軍需産業によって資金を自ら稼いできた歴史があり、中国政府ですら軍事費の全容をつかんでいない可能性があるという。

また、中国軍の理論書では、クラウゼビッツやマルクス・エンゲルス、毛沢東など歴代国家指導者を除けば、『孫子の兵法』からの引用が多いという。一番多いのが「不戦而勝(戦わずして勝つ)」と「不戦而屈人之兵(戦わずして、人の兵を屈する)」。

戦わずに勝つには世論戦や心理戦が使われる。世論戦には、軍隊内のハンドブックには以下のように書かれている。

①斬首力:敵の政府首脳や軍指導部を攻撃対象として情報宣伝により混乱させ、指導部の意思決定帰納を麻痺させること。
②欺瞞力:偽情報により敵の判断を誤らせること。
③威嚇力:軍事力などを後ろ盾に敵を畏怖させ、戦わずして勝つこと。
④感化力:敵に“善意”や“恩情”などを示して戦意を失わせること
⑤誘導力:敵が気づかないように意図する方向へ世論や感情を誘導すること。
⑥封殺力:敵の好ましくない情報を封殺すること。
⑦警告力:敵の世論線にはまらないように味方を事前に教育しておくこと。
⑧反撃力:敵や国際社会の世論に効果的に反撃すること。

心理戦について中国の軍事理論書では、以下のように書かれているという。

①宣伝力
②瓦解力(心理的な混乱、動揺で敵の内部分裂を誘い戦力を失わせること)
③威嚇力
④誘導力
⑤感化力
⑥制限力(経済制裁や国連の制裁決議などで敵の行動に制限を加えて心理的圧力をかけること)
⑦緩和力(自国兵士の心理的な損傷を防ぐためにストレスを緩和すること)
⑧激励力(自国兵士の士気を高めたりして支援すること)

戦わずして勝つには、敵に手の内を見せないことが肝要だ。だから、中国は軍事力を明らかにしない。人はわからないモノやコトに恐怖を覚える。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」である。「脅威」という言葉を口にした時点で、心理戦に巻き込まれているのだ。


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