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昼食難民の新書生活

(新宿・秋葉原・芝浦など各地でのランチと読書)

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『さもしい人間―正義をさがす哲学』伊藤恭彦(新潮新書 478)

さもしい人間


『さもしい人間―正義をさがす哲学伊藤恭彦(新潮新書 478)


他人の犠牲の上に快楽を追求する現代人は「人類史上最もさもしい人々」ではないか、と著者は言う。本書は、政治哲学や法哲学の立場からの、正義や公平さについての考察だ。

【目次】

プロローグ 「さもしさ」の話を始めよう
第1章 日常にひそむ「さもしさ」の光景
第2章 「分」を守るということ
第3章 市場はけっこう残酷だ
第4章 地球から「さもしさ」を消せるか
エピローグ 公憤と正義


著者は、「既に十分豊かであるにもかかわらず、他の人をさしおいて貪欲に利益を追求し、誰か他の人の不幸の上に自分の豊かさを作り上げている」ことを「さもしい」と定義している。

日本は、年間3000万トンを超える食料を輸入し、2000万トン以上を廃棄しているという。その一方で、世界では7割以上の子供が空腹を抱えながら眠りにつくと言われる。貴重な食料を蕩尽している日本人の行為は、著者のいう「さもしい」以外の何物でもないだろう。

しかし、日本のように飽食に浸っている先進国の多くでは出生率が低下し、逆に飢餓に苦しむような地域では高い出生率を保っている。働き手の必要性や避妊の知識不足が原因だが、家族を十分に食わせる金が無いのに子供を作るのは自己責任と言えないだろうか。

文化大革命中に大量の餓死者を出した中国では、「一人っ子政策」という乱暴な政策を取ることで人口爆発を抑制して飢餓から逃れたではないか。インドでも、パイプカットをすればラジオをプレゼントするという乱暴な政策を発表して、諸外国から轟々の非難を受けたことがある。

かつてインドに滞在中に何度も思ったのは「こんな国に生まれなくて良かった」ということだった。インドは、大半の人間が自分以外を敵と見做して騙そうとする厳しい社会で、「さもしい人々」しかいないように思えたからだ。財布を手にするたびに、つまりお金を払う際には、「吹っかけられているんだろうなあ」といつも疑心暗鬼になるのだった。インドでは、定価という概念は存在しないので、モノやサービスの対価は売手と買手の交渉によって決定するが、外国人それも甘っちょろい日本人は“インド人向け価格”の何倍もふんだくられるのが常だ。

原料の生産国で搾取に苦しみながら働く人々がいることで、安価なハンバーガーを食べることができるのだから、「さもしい」ことだと著者はいう。100円ショップの商品だって、中国の農村出身の出稼ぎ労働者たちが低賃金で作ったものだから「さもしい」ことになるだろう。ここに正義や公正さの問題があるとは思えない。

本当に「さもしい」のは、弱者を踏み台にして利得を獲得する「勝ち組」や新自由主義的な市場経済至上主義者のことではないだろうか。

どうしたら「さもしい」人間にならずにすむのだろうか。著者は、「分」を守ることだというが、厳しい競争の中で自分だけが「分」を守ったら、利得を獲得するどころか保有する分まで奪われてしまうだろう。

正義や公正さといったものは、ある程度共通する社会制度や価値観の中でしか有効性をもたないのではないか。メンバー全員が「分」を守らなければ、「さもしさ」はなくならないのだろう。

著者は本書で「青臭い議論」を書いたとしているが、具体例が乏しく、何ら有効な解決策を示していない。



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