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『日本の転機―米中の狭間でどう生き残るか』ロナルド・ドーア(ちくま新書 984)

日本の転機


『日本の転機―米中の狭間でどう生き残るかロナルド・ドーア(ちくま新書 984)


著者は知日家で知られるイギリスの社会学者。本書は、日米安保条約というアメリカだけとの軍事同盟だけでは、中国の勃興に対抗できないことを明らかにしつつ、核不拡散条約に代わる新たな核兵器管理体制を日本がイニシアティブを取って構築することを提言している。

【目次】

第1部 米中関係の展開と日本
   第一章 失われた二〇年前の楽観主義
   第二章 米中冷戦の明白化
   第三章 「積極外交」による米国の同盟固め
   第四章 米中冷戦の決着―ひとつのシナリオ
   第五章 歴史が示唆するもうひとつのシナリオ
        ―明治以来の日本の勃興
   第六章 安心材料? 自己欺瞞?
第2部 まぼろしの核兵器
   第一章 核不拡散という至上命令
   第二章 イランの核
   第三章 米国・イスラエル・イランの三角関係
   第四章 朝に紅顔、夜に白骨―NPTの履歴書
第3部 では、どうしよう?
   第一章 MADの普遍化
   第二章 ある晴れた日
   第三章 想像と現実


第1部では、20~30年後の未来には中国の勃興によって、アメリカが唯一の覇権国家でなくなることは明らかであり、日本がアメリカとの軍事同盟にのみに依存することはできないことを明らかにしている。

一人っ子政策によって将来的には、日本よりも厳しい高齢化社会が訪れるといわれる中国だが、少なくともあと20~30年は勃興を続けるであろうといわれる。そうした将来を見据えれば、「米国への従属的な依存が、永久に有利な選択肢ではありえないという結論にしか到達しえないはずだ」(p.136)という。

中国の軍事費は、ロシアを抜き世界第2位となっており、軍事力の近代化を大きく進めている。さらに、2012年に初の空母を就航させ、上海で2隻の空母を建造中の中国が太平洋地域への勢力拡大を意図している。中国の軍艦や潜水艦、航空機が尖閣諸島や沖縄周辺に現れており、ベトナムやフィリピンとも領土問題で強硬な手段に出ている。

中国の軍事力がアメリカに迫り、追い付くのは時間の問題である。しかし、日本の外交はアメリカ一辺倒の属国的な対応に伍している。

著者は、日本が国連では無条件で米国の肩を持ち、採決に際しては米国の意にそうように投票していることを指摘し、「世界で生じている困難な出来事はすべて対岸の火事にすぎず、積極的な介入を試みずに、日米同盟の上に胡座をかいて座視するだけであった」(p.25)としている。

核兵器の保有による力の不均衡状態について、著者はイスラエルとイランを例に示している。

イランの核開発に関して、著者はイランには明らかに核開発計画があるだろうとしている。しかも、イスラエルが核兵器を保有していることが、中東における権力の不均衡状態をもたらしており、イランが核兵器を保有することが報復攻撃を避けるための抑止力として働くとしている。確かに、核兵器を保有するインドに対抗してパキスタンが核兵器を保有したことで、かつては領土問題で戦争を行ったことのあるインド・パキスタン間の緊張状態を解いている。

イスラエル、インド、パキスタンは核不拡散条約(NPT)に加盟していないし、すでに核兵器を保有しているといわれる北朝鮮もそうだ。

つまり、核不拡散条約(NPT)は修理不能なところまで破損しているというのが著者の主張である。現在、核兵器を保有しているのは9カ国である。米・英・仏・露・中の5カ国はNPTに調印しているが、イスラエル・インド・ネパール・北朝鮮の4カ国は調印していない。

しかし、なぜ核兵器は広島・長崎以降に使用されないのか。効果があまりに残忍で悲惨なので使用がためらわれたというのも理由の1つだろうが、著者は核戦略の1つである「相互確証破壊(MAD: Mutual Assured Destruction)」を挙げている。

つまり、核保有国の一方が先制核攻撃を行った場合に、相手国がそれを察知して核攻撃を行えば、双方が壊滅的な被害になることが明らかなので、核攻撃が抑止される、ということである。先制核攻撃で相手国の核兵器を全て破壊することはできないためだ。

第3部では、核不拡散条約(NPT)に代わる新しい核兵器管理体制として、著者は驚くべき提案をしている。

①すべての加盟国は、NP国(核保有国)かPP国(各非保有国)であるかを選択する。
②NP国は、少なくとも3カ国のPP国に対して代行確証報復を実行する義務を負う(「核の傘」核兵器で攻撃されたら、侵略国への核兵器による報復を代行する)。
③PP国は、少なくとも3カ国のNP国と代行確証復讐契約を締結する。

核兵器を保有せず、保有する気もない国にとっては、核保有国と軍事同盟を結ばなくても核の傘に入れるメリットがある。しかし、核保有国は同盟国以外の多くの国を傘の下に入れることができる一方で、同盟国が仮想敵国とも代行確証復讐条約を結んでしまうというデメリットがある。核保有国がこの条件を飲むのか疑問がある。

この核兵器管理体制を構築するための条約準備委員会に、日本が調査・研究の費用を持つことでイニシアティブを果たすべきだとしている。

新しい核兵器管理体制によって、著者は30年後の理想像として次の2点を挙げている。

①加盟国同士の核兵器管理体制の完成によって、相互規制がいよいよ効果的になり、「普通の国」は防衛・安全保障問題に予算、資源、資料をさほど費やす必要がなくなること。
②日中米の三カ国の間に軍事同盟なしで、おのおの独立国家として、貿易関係、外交関係、文化交流関係を作って、平穏な雰囲気で共存できること。(p.223)

核保有国と日本のような「核の傘」の下に同盟国だけでなく、すべての国に外国からの攻撃を抑止する「報復の確実性」を持たせることこそが、世界平和に結びつくというのだ。

三百代言の黒人大統領は、核軍縮に関する名演説でノーベル賞委員会をまんまと騙してノーベル平和賞を受賞した。しかし、アメリカは1万発以上の核弾頭をまだ削減していない。アメリカが核弾頭の99%を削減しても、世界100カ国の首都を原爆で破壊できる能力がある。ロシアも9000発の核弾頭を保有している。

この2カ国はどう考えても必要以上の核兵器を保有しているのは間違いないのだから、報復の確実性が失われない程度までの核軍縮を実行させることこそが、第一歩なのではないだろうか。


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