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『言語の社会心理学―伝えたいことは伝わるのか』岡本真一郎(中公新書 2202)

言語の社会心理学



『言語の社会心理学―伝えたいことは伝わるのか岡本真一郎(中公新書 2202)


小学生の時に入院中の友人を見舞いに行って失敗したことがある。

数週間に及ぶ入院で退屈していたらしく、ベッドの周りにはたくさんのマンガ週刊誌が積み上げられていた。入院が長引いていることをねぎらうつもりで「こんなにたくさんのマンガを読んだんだね」と言ったところ、友人の母親は私がマンガ週刊誌を貸して欲しいと言ったのだと勘違いし、「○○ちゃん、貸してあげなさい」と大慌てで数冊のマンガ週刊誌を紙袋に入れて渡してくれた。

想いを言葉で伝えることの難しさを最初に理解した瞬間だった。

顔が真っ赤になるを感じたが、「恥ずかしいから赤面したのだろう」と友人やその母親に思われていることが恥ずかしくて、さらに赤面するのを感じた。

本書は、社会心理学者による言語コミュニケーション研究の入門書。多くの心理学研究の成果を元に、言語コミュニケーションの種類と機能を解説している。

【目次】

第1章 「文字どおり」には伝わらない
第2章 しゃべっていないのになぜ伝わるのか
第3章 相手に気を配る
第4章 自分に気を配る
第5章 対人関係の裏側―攻撃、皮肉
第6章 伝えたいことは伝わるのか
終章 伝えたいことを伝えるには?


まず第1章では、コミュニケーションの道具的機能を説明し、コミュニケーションの種類と特徴を述べている。

続いて第2章では、コミュニケーションが推論によって成立することを解説している。例えば、以下の様な会話は普通だろうか。

 しおり:あなたはブタね。
 めぐみ:そうよ、私はブタ。ブタは最高よ。

一読すると「しおり」が罵ったのを「めぐみ」が受け流している会話のようだ。しかし、2人がお好み焼き店にいて、「しおり」は「めぐみ」がブタお好み焼きを注文することを確認している会話だったら全く不自然ではない。通常の会話ではこんな風に、ブタお好み焼きを単にブタと省略することはよくある。(p.39)

罵りではなく通常の会話が成り立つのは、2人の間に「共通の基盤」があって、聞き手が話し手の発言を推測しているからだ。会話が進行しながら、共通の基盤が次第にできあがっていくこともある。例えば、会話の最初で意味していた「あれ」と、数分後の「あれ」は全く異なることもある。

「共通の基盤」には、以下の3点の根拠あるという。
1.会話が行われている物理的な状況(お好み焼き店にいる)
2.先行する発話から目的語を推測できること(料理を注文しようとしている)
3.同じ社会に暮らしている以上、相手も知っているだろうと予測できること(ブタお好み焼きを「ブタ」と省略することに不自然さはない)

話し手は、相手が自分の発話をどの程度理解しているかを推測しながら発言するが、それ以上に聞き手はいろいろな手がかりから、積極的に推測することで会話は成り立っている。

もちろん言語による伝達が文法によって支えられているというのは間違いない。しかし、実際にコミュニケーションする場合には、言語は推論の材料に過ぎないというのである。これは非言語的コミュニケーションで何かを伝える場合に推論が用いられるのと同様である。ただ、言語のほうが非言語よりも、伝えることの明示性が高い場合が多い、というだけである。(p.57)

第3章では、コミュニケーションにおける対人配慮について解説している。相手の「顔(メンツ)」を阻害する度合いに応じた「敬語」表現のポライトネス理論、外国語に比べ日本語には豊富な表現がある対称詞、感謝する際に「すいません」といった謝罪表現を使う事例などを詳しく説明していて面白い。

確かに、日本語では感謝を表す際に「すいません」という謝罪の言葉が使われることがある。著者の調査によれば、イギリス人も謝罪表現を使う場合もあるようだ。著者は、3つのケースで日英の謝罪表現の使用率を調べている。

ケース1:話し手と聞き手の双方に責任がない場面(講演をしてくれた)
ケース2:話し手に責任がある場面(部屋の電気を消す間、待っていてくれた)
ケース3:聞き手に責任がある場面(貸したお金を返してくれた)

双方に責任がない場面ではイギリス人は謝罪表現を使わないが、日本人は聞き手が年長の場合には20%が謝罪表現を使う。話し手に責任がある場面では、聞き手が年長者ならば日本人の80%近くが謝罪表現を使うが、イギリス人の30%も謝罪表現を使う。一方、聞き手に責任がある場面では、イギリス人は謝罪表現を使わないが、日本人は謝罪表現を使い場合がある。これは、聞き手が「話し手に悪いことをした」と思わせること自体が相手に迷惑をかけたという気持ちを起こさせるから、謝罪表現が用いられるのではないか、と著者は言う。聞き手の気持ちを斟酌した結果だというのだが、果たしてそうだろうか。相手の気持ちではなく、「返してくれた」という行為によって瞬間的に上下関係が発生してしまうためではないか。

第4章では、相手との望ましい関係を念頭に置いた自分への気配り表現を解説している。自分の真の姿を相手に示す「自己開示」と、自分と相手との関係が有利になうように自分のことを相手に示す「自己呈示」、自分の能力や技能等を低く見せる「自己卑下的呈示」について考察している。

第5章では、「言語的攻撃」と「皮肉」が対人関係の中で果たす機能や役割、効果について詳述している。

第6章は、同音異義語やあいまいな表現などによる「誤解」と、自分の感じていることや考えが実際以上に相手にわかっていると推測してしまう「透明性錯覚」、相手も自分と同じ知識があると思い込む「知識の呪縛」について解説している。

終章では、「コミュニケーションがうまくいく」ための心がけを具体的に提示している。もちろん、相手の感情に気を配り、事実を正確にできるだけ効率的に伝えるのが最初のポイントだ。

友人の母親に誤解された小学生の私は、「マンガを貸して欲しかったのではない」と説明することはできずに、おそらく生まれて初めて鼻白んだ表情のまま、マンガ週刊誌が入った紙袋を手に病室をあとにすることしかできなかった。



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