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『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』半藤一利(文春新書 880)

日本型リーダーはなぜ失敗するのか



『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』半藤一利(文春新書 880)


「おはよう、今日の首相はだれかな?」というジョークがイタリアにある。短命政権が続いているためだ。日本も小泉純一郎は5年半という首相在任を果たしたが、小泉以降は1年ごとに首相が替わっている。日本もイタリアと変わらない状況で、東日本大震災と福島第一原発事故以降はリーダー不在が叫ばれている。

本書は、“歴史探偵”を自認する著者が、日本に真のリーダーが存在しがたい原因を日本陸海軍の組織、人事、教育の面から解明している。

【目次】

第1章 「リーダーシップ」の成立したとき
   戦国武将のお手本 将には五材十過あり ほか
第2章 「参謀とは何か」を考える
   ①権限発揮せず責任もとらない
   ②権限発揮せず責任だけとる
   ③権限発揮して責任とらず ほか
第3章 日本の参謀のタイプ
   ①書記官型
   ②分身型
   ③独立型
   ④準指揮官型
   ⑤長期構想型
   ⑥政略担当型
   〈結語〉優れた参謀とは
第4章 太平洋戦争にみるリーダーシップ1
   リーダーの条件その一、最大の仕事は決断にあり
   リーダーの条件その二、明確な目標を示せ
   リーダーの条件その三、焦点に位置せよ
第5章 太平洋戦争にみるリーダーシップ2
   リーダーの条件その四、情報は確実に捉えよ
   リーダーの条件その五、規格化された理論にすがるな
   リーダーの条件その六、部下には最大級の任務の遂行を求めよ


著者は、「日本型リーダーシップ」の成立を西南戦争に求めている。西郷隆盛という強力なリーダーに率いられた日本最強の西郷軍は、有栖川親王というお飾りの指揮官に率いられた寄せ集めの新政府軍に敗れた。山県有朋が参謀として実質的に現場を指揮したからだ。

総大将は戦いに疎くても参謀さえしっかりしていれば大丈夫、戦に勝てる。(p.47)

「参謀が大事」という思想は、軍の独立性を保つための参謀本部の創設、参謀を育成するための陸軍大学校と海軍大学校、陸軍士官学校、海軍兵学校の創設へとつながるとしている。

しかし、リーダーと参謀という構造は、統治機構を権威と権力に二分する日本に古来からあるシステムではないか。武士台頭後の天皇制がそうだし、幕藩体制内も権威と権力は二分されてきた。

著者は「日本型リーダー」の原型が大山巌と東郷平八郎にあるという。理想のリーダー像を、帝国陸軍は大山に、帝国海軍は東郷に求めた。

大山は、日露戦争で苦戦中に、満州軍司令部の自室から出てくると「朝から大砲の音がしもうすが、どこぞで戦がごわすか」と児島源太郎総参謀長に尋ねたという。児島が「なにもございません。どうぞご安心ください」と答えると、「そでごわすか。ま、しっかりやってください」と自室に戻った。

東郷が指揮する帝国海軍は、日本海開戦時に対馬海峡でバルチック艦隊を待ち受けた。ウラジオストックを目指すバルチック艦隊の航路は3つの航路が予想されていた。1つ目は対馬海峡、2つ目は太平洋を通って津軽海峡、3つ目は同じく太平洋を通る宗谷海峡。なかなか現れないバルチック艦隊が太平洋へ抜けたのではないか、という議論が紛糾した時に、東郷平八郎は対馬海峡をさして「ここにくるでごわす」と言いい、それが大勝利へとつながった。

しかし、2つのストーリーはいずれも一般向けに書かれた“伝説”であり、両者に共通するのは、指揮官は危機に際して少しも慌てず泰然自若としていることだ。しかし実際には、大山と東郷は戦況を綿密に分析し、適切に対処したからこそ勝利を収めたのだ。

「日本型リーダー」を求める悪弊は、絶大な権力を握っていた陸軍の「派遣参謀」や適材適所の人事を阻んだ日本海軍の「軍令承行令」、単なる軍事オタクしか養成できなかった陸大・海大の教育へとつながる。

本書では、第2次世界大戦における帝国陸海軍の指揮官たちの驚くべきリーダーシップ欠如の行動が次々と語られ、暗澹たる気持ちになる。まともなリーダーなどいなかったのではないか、と言わざるを得ないほどだ。

敗戦の兆しが色濃くなっていた昭和19年11月、予備役になっていた東條英機は、近衛文麿にこう語ったという。

自分は二つのまちがいをやった。その一つは、南方占領地区の資源を急速に戦力化し得ると思ったこと。その二は、日本は負けるかもしれないと思い及ばなかったことだ。(p.215)

その東條は、たった3年前の昭和16年10月に、陸相として近衛首相に「米国には米国の弱点があるはずではないですか」と、日米には圧倒的な国力の差があるという情報を無視し、何の根拠もない主張で対米戦を強く迫った。それが、300万人を超える戦死者を出す国家の危機を招いたのだ。

ナチス政権から亡命中のブレヒトは、『ガリレオの生涯』で「英雄を必要とする国が不幸なのだ」と書いた。国家が強力なリーダーを必要とするのは、国家が存亡の危機を迎えている時だ。ヒトラーも東條英機も民衆の圧倒的な人気で英雄として最高権力を手にした。アメリカでは、今では歴代最低の大統領といわれるジョージ・ブッシュが、「悪の枢軸」という歯切れのいいフレーズで反イスラム感情を惹起していまなお続く泥沼の戦争へと踏み出している。

1年ごとに首相が代わるのは本当に恥ずかしいことなのだろうか。強力なリーダーなど必要としないほど日本社会が安定し、成熟していることの証左と言えないだろうか。

権威と権力を二分する日本的システムは今後も続くだろうが、少なくとも泰然自若とした態度だけが取り柄のリーダーと、結果責任を一切負わない参謀による「日本型リーダー」システムからは、真のリーダーは生まれないことだけは確かなのである。


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