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『ことばの力学―応用言語学への招待』白井恭弘(岩波新書 1419)

ことばの力学



『ことばの力学―応用言語学への招待白井恭弘(岩波新書 1419)

著者は、ピッツバーグ大学言語学科教授の応用言語学研究者。伝統的には外国語教育に言語学を応用する学問のことを応用言語学といったが、近年は「現実社会の問題解決に直接貢献するような言語学」という考え方が広まっているらしい。

本書は、言語が社会のなかで果している役割を科学的に理解し、社会の矛盾や問題の解決の向上に役立てたい、という目的で書いたという。

【目次】

第Ⅰ部 多言語状況
     標準語と方言
     国家と言語―言語政策
     バイリンガルは悪か
    外国語教育
     手話という言語
第Ⅱ部 社会の中の言語
     言語と文化
     無意識への働きかけ―政治・メディアのことば
    法と言語
     言語障害
     言語情報処理はどこまで来たか


「第Ⅰ部 多言語状況」では、言語の力関係の構造を明らかにしていく。言語と言語には力関係が生じる。著者は異言語間の力関係が生じる原因を「価値」という言葉で書いているが、むしろ利便性や功利性だろう。現在は英語が圧倒的なパワーで国際語の第一の座を占めているが、100年ほど前まではヨーロッパではフランス語が国際語のトップだった。英語はイギリスが覇権を獲得したために国際語になったのであり、英語自体に価値があったためではない。

同じように標準語と方言の問題でも、「標準語に価値がある」としているが、これも価値とは関係なく、方言への差別を生み増長するような標準語化政策によって力関係が発生している。特に第二次大戦中は、軍事教育の一環として標準語化政策が強化されたという。

井上ひさしのエッセイに、戦時中に「先生が、明日から友人を呼ぶときはキミと言いなさい。ニシャと呼んではいけません、と言った」という一節があった。ニシャ(おヌシ → ニシャ)という伝統的な呼称が禁止されたのである。沖縄などでは方言を使った児童に木札を下げさせて辱めるほどだったという。日本のように同一性の高い民族でも標準語という「東京山の手方言+京ことば+長州方言+薩摩方言」を普遍的な日本語として徹底させようという国策がなされたわけだ。

本書を読むまで知らなかったが、日本の手話には3種類があるという。ろう者の間で自然発生した言語である「日本手話」と、日本語の文法に基づいて作られた「日本語対応手話」、日本手話に日本語対応手話の要素を盛り込んだ中間手話である。

日本手話が「言語」だというのは、日本語とは文法が異なるからだ。日本手話では、疑問詞が最後に付く。例えば、日本語で「誰が一緒に行くの?」という文は、日本手話では「一緒に行く 誰?」となる。一方、日本語対応手話では、日本語と同じ「誰 一緒 行く ?」となる。

著者は、ろう者の子供には言語能力が決定する10歳前後までは日本手話を習得させて抽象概念を獲得させるべきだとしている。

ところが驚くべきことに、日本のろう学校の多くでは手話を教えないばかりか、禁止しているところがあるらしい。聴者とのコミュニケーションを可能とするための口話法(口の動きと顔の筋肉の動きから言葉を読み取る)の教育を重視しているためだ。日本で初めて手話の言語性を認める法律ができたのは、つい2年前の2011年7月29日の参議院本会議で全会一致で可決・成立し、改正障害者基本法案で手話が「言語」と規定されたことによるという。

「第Ⅱ部 社会の中の言語」では、言語と社会生活について考察している。

著者は「主語」という言葉を使って、日本語は主語を省略できる言語であると述べているが、実際には主語が必須の言語は英語やフランス語、オランダ語、スカンジナビア諸語など世界でもごく少数に過ぎない。主語という概念自体が英語至上主義の古臭い考えなのである。

後半は、大学の一般教養科目「応用言語学」の教科書として書かれたらしく、さまざまな項目を浅く広く紹介していて面白みに欠ける。



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