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昼食難民の新書生活

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『反省させると犯罪者になります』岡本茂樹(新潮新書 520)

反省させると犯罪者になります



『反省させると犯罪者になります』岡本茂樹(新潮新書 520)


著者は立命館大学で臨床教育学を教える教授であり、教育機関での生徒指導を経て、刑務所で犯罪者のカウンセリングを支援している。本書は、そうした経験から犯罪者の更生教育において「反省させる」ことの問題点を指摘すると共に、新しい更生教育を提言している。

【目次】

第1章 それは本当に反省ですか?
     2度の接触事故を起こした時の私の本音
     「後悔」が先、「反省」はその後 ほか
第2章 「反省文」は抑圧を生む危ない方法
     「模範的な反省文」から読み取れること
     反省は抑圧を生み、最後に爆発する ほか
第3章 被害者の心情を考えさせると逆効果
     被害者の視点を取り入れた教育
     矯正教育なんかしない方がマシ? ほか
第4章 頑張る「しつけ」が犯罪者をつくる
     りっぱなしつけが生き辛さを生む
     「しつけ」がいじめの一因に ほか
第5章 我が子と自分を犯罪者にしないために
     問題行動の背景をいっしょに考える
     親から「迷惑をかけられたこと」を考える ほか


凶悪事件の犯罪者が逮捕されると、警察署の前からテレビ局の記者が 「まだ反省の言葉はないようです」といった紋切り型のレポートをする。しかし、確信犯であれば事後すぐには反省などするはずはないし、多くの容疑者は逮捕直後は自分のしでかしたことの大きさに動転している段階だから、反省の言葉など出てくるはずはないだろう。

犯罪を犯した人間は反省すべき、という常識には大きな錯誤があるというのが著者の立場だ。

強制的に無理やり反省させれば、裁判で情状を得るためのうわべだけの反省にしかならないからだ。

本書でもたびたび引用されている無期懲役囚の美達大和が書いているが、ほとんど凶悪犯は反省するどころか、裁判にかけられている境遇に不満で怒りすら覚えており、被害者を恨んでいる者もいるという(『死刑絶体肯定論―無期懲役囚の主張』) 。

著者は、数多くの受刑者に対する面接を通して、強制的に反省させられたことが犯罪者になる原因となる、と結論づけており、本文でも繰り返し「反省させると犯罪者になる」と断言しているが、これは暴論だろう。

確かに、犯罪者たちは過去に反省させられたのかもしれないが、大多数の非犯罪者も同じように反省させられた経験はあるはずだ。子供が反社会的な行為を行ったら、問題点を指摘し反省を促すのは、正しい「しつけ」とされてきた。しかも、ほとんどの人々は反省を強要する「しつけ」を受けても、犯罪に手を染めることなく生きているのだ。

『平成24年版 犯罪白書』によれば、平成24年の刑法犯認知件数は138万2121件。これを総人口で割った犯罪率は1%ほどだ。しかも、再犯率は約50%と高い。つまり、「反省させると犯罪者になる」のではなく、「犯罪者に反省を無理強いさせても更生しない」ということだろう。

刑務所は刑罰を与えるのが目的であり、少年院と違って矯正教育はほとんどなかった。しかし、再犯率が高いために平成17年から「被害者の視点を取り入れた教育」が実施されているという。多くは犯罪被害者による講演やグループセッションだが、本書では心理療法の1つとして日本で開発された「ロールレタリング」を紹介している。

これは、実際には投函されない手紙を受刑者が家族や被害者に向けて書き、さらにその返信を家族や被害者の立場になって書く、というもの。自らの犯罪行為に向き合うことで、被害者に対する共感と贖罪を意識させるためだという。

しかし、著者はその運用方法に疑問を呈している。少年院での実施報告では、模範的な反省文の達人になるケースが多く見られるからだ。ロールレタリングでは、反省させることを急ぐあまり、いきなり被害者への謝罪文を書かせることになりがちだという。しかし、受刑者が自らと向き合い、それまでの人生のどこに問題があって犯罪を犯すに至ったのかを認識しなければ、真のロールレタリングにならないと指摘している。

多くの受刑者は、育成環境に問題があり、親や保護者へ反発する感情が渦巻いているという。著者は、まずそれを吐き出させなければ、真の反省には至らないとしている。

ところで、著者は何度も多くの受刑者は「感情を抑圧し、我慢を繰り返して最後に爆発した」のが犯罪行為だと書いている。しかし、感情を物理量に喩えるのは適切なのだろうか。

コップに貯まる水や風船に注入するガスに感情を喩えるとわかりやすいかもしれないが、そんな単純な仕組みで人間の心理を絵解きすることこそ、犯罪心理を理解する上での妨げにならないだろうか。


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