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『ユダヤ人の教養―グローバリズム教育の三千年』大沢武男(ちくま新書 1026)

ユダヤ人の教養


『ユダヤ人の教養―グローバリズム教育の三千年大沢武男(ちくま新書 1026)

本書によれば、ユダヤ人は4〜5歳の幼少期から教育が施されるという。それも単なる律法や神話の丸暗記ではなく、議論を通じてユダヤ教の教えを自分のものとするための訓練である。この教育法は、紀元前から連綿と伝えられてきた。

ユダヤ人とは、「ユダヤ教徒かユダヤ人の母から生まれた子供」のことで、人種的な区別ではないとされる。だから、ユダヤ教徒ではないユダヤ人も存在することになるが、ユダヤ人として生まれた以上は、幼少期にユダヤの教えを施されるので、ユダヤ人としての教養は身に付けていることになる。

【目次】

第1章 ユダヤ民族存続のカギは教育であった
     旧約聖書に見る教育観
     子弟教育の伝統 ほか
第2章 都市の民—知恵と商才
     中世都市への集住
     金貸し業への従事 ほか
第3章 すさまじい進出、あふれる業績
     解放への動きと反動
     ユダヤ的教育改革 ほか
第4章 ユダヤ的教育、教養の伝統と日本
     グローバルな民と伝統
     ユダヤ人の子宝 ほか
第5章 生き残ることへの情熱
     五倍の納税額
     知恵と教養、実践と行動、そして暴力 ほか


ナチス・ドイツによるホロコーストなど、度重なる差別や虐殺を乗り越えて、イスラエルを建国できたのも、ユダヤ人の教育にあると著者はいう。

なぜユダヤ人はかくも教育を重視し続けてきたのか。

ユダヤ人には、モーセ以来、神の律法を代々子弟に教える伝統があるからだ。『旧約聖書』が成立する紀元90年より300年前に書かれた「集会の書」のギリシャ語訳序文に「イスラエルは、知識と知恵とをもつ民族として、賛えられねばならない。(われわれが)本を読んで学問を積むのは、義務であるばかりでなく、一たび知識をもてば……他の人々にも役立てねばならない」(p.21)とあるのだ。

ユダヤ人は「教育」を重視したが、単なる親の務めとして子供を教育したのではなく、教育は「義務」なのだ。

旧約聖書以来、ユダヤ人にとって「教育」とは、ユダヤ教の教え、律法を学び、反復暗唱し、また議論してより深め、体得することであった。そして「学ぶ」ということは神の命令であり、すすめであり、すべてのユダヤ教徒の義務だった。(p.110)

4〜5歳になれば、すべてのユダヤ人の男の子はシナゴーグに付設された学校で旧約聖書や律法、算数を学んだ。女児にも教育が施されたと、性差別がなかったように書かれているが、具体的な説明はない。

しかし、と問わずに入られない。ホロコーストがヒトラーの狂気に原因があったとしても、街場の極右主義者のころからユダヤ人殲滅を表明していたヒトラーを、ドイツ国民は支持して選挙で政権を与えた。一時の熱狂であったとしても、ユダヤ人はドイツ国民に激しく嫌われていたのは事実だろう。

なぜユダヤ人は、600万人(実は150万人と程度じゃないかいう説もある)が惨殺されてしまうほどドイツ人に憎まれていたのか。著者は、嫉妬や憎悪の対象となったのはユダヤ人が優れていたからだという。

確かに、現代においてもユダヤ人はノーベル賞受賞者を数多く輩出し、金融界やマスメディアを支配している。世界的な企業も創業し、医師や弁護士といったエリート専門職、音楽家など芸術家も多い。しかし、それが殲滅させるまでの憎悪になるだろうか。

中東を追われヨーロッパを流浪し、ゲットーに閉じ込められたユダヤ人たちは、農業や職人ギルドの職に就くことはできず、商人や金融、医師などとして働くことになった。ヨーロッパの庶民と違い、幼い頃から教育が施されたユダヤ人はそうした職業に就くのは容易だっただろう。そして、無知な大衆によって嫉妬や憎悪の対象となっていった。シェークスピアは、16世紀末に書いた『ベニスの商人』で、ユダヤ人を強欲な金貸しのシャイロックとして描いている。

ところで、本書の前半では、「ユダヤ民族」という耳慣れない言葉がしばしば使われいる。ユダヤ人って宗教的集団ではなく民族的集団だったっけ、と思って調べると、7つの主なユダヤ人集団(アシュケナージ、ローマ、北アフリカ、クルド、近東、イエメン、エチオピア)をDNA分析したところ、お互いに隔離されていたにもかかわらず、著しく高いレベルで遺伝的に類似していることが発見されたという。

さらに、7つのユダヤ人集団のそれぞれは、地理的に最も近隣の人々より、他のユダヤ人集団との間により高度な遺伝的類似性を持っていた。これらの結果は、ユダヤ民族が単一の先祖集団に由来するものであることを示唆しているという。その起源は、エチオピアやイエメンのユダヤ人などは間違いなくソロモン王国のころに遡るとされる。つまり、「ユダヤ民族」という表現は必ずしも間違いではないらしい。

本書は、ユダヤ人とユダヤ人の教育を絶賛している。つまり、ユダヤ教の教育礼賛の書で、賞賛の言葉が繰り返されている。

しかし、ユダヤとイスラム、キリスト教徒が共存していたパレスチナに半ば強引にイスラエルを建国してパレスチナ人の虐殺を続け、全世界的なイスラム教vsキリスト教の対立を生み出しているのは、他宗教を認めない偏狭なユダヤの教えにほかならないだろう。この問題に著者は一切触れていない。



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