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昼食難民の新書生活

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『精神医療ダークサイド』佐藤光展(講談社現代新書 2231)

精神医療ダークサイド


『精神医療ダークサイド』佐藤光展(講談社現代新書 2231)

帯に「これはフィクションではありません!」とあるが、本書は、まるでサスペンス小説やホラー映画のような身の毛のよだつ日本の精神医療の実態を描いている。

著者は、読売新聞医療部の記者。これまで新聞紙上で日本の精神医療について何度も警鐘を鳴らしている。

【目次】

第1章 誤診 
第2章 拉致・監禁
第3章 過剰診断
第4章 過剰投薬
第5章 処方薬依存
第6章 離脱症状との闘い
第7章 暴言面接


まずは誤診。

冒頭から恐ろしい事例が紹介されている。母親が精神疾患の悪化で入院したため児童養護施設に入れられた2人の息子が、寝付けない・粗暴などの理由で精神科医の診断を受けて抗精神薬を投与され、中2の兄はよだれを垂らし、小6の弟は失禁でズボンを濡らしていたという。2週間ほどで投薬を止めさせたため大事には至らなかったようだが、2009年に四国で起こったことだ。

精神科は血液や画像診断など客観的な診断方法がない。医師は患者との面談によって診断しているが、環境要因について十分な聞き取りをしなかったり、発達障害などについて十分な知識がないこともあって誤診が相次いでいるのだ。

もっと恐ろしいのは強制入院。

弟の妻との不仲から両親によって強制入院させられ、統合失調症と診断されて10か月入院した女性の事例や、10年以上も強制入院させられ病室の窓に訪れた野良猫の首に手紙を括りつけて救出された事例が紹介されているが、恐ろしさに言葉を失うしかない。

1990年代に「うつは心のかぜ」という「うつ病キャンペーン」が製薬会社によって展開された。抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の国内販売に合わせたものだった。それによって、うつ病患者数は9年で2.4倍に増え100万人に達した。製薬会社が引き起こした過剰診断である。

軽度のうつ病に対しても、まるで市販の風邪薬のように抗うつ薬のSSRIが大量に処方されることとなった。若年患者には、自殺企図や衝動化などの副作用が指摘されていたのにもかかわらずである。2010年になってようやく軽度のうつ病に対しては薬剤投与のみではないとするガイドラインが日本うつ病学会によって発表されたが、SSRI発売前の患者数に戻ったわけではない。

精神疾患の診断には米国精神医学会が作成した国際的診断基準の「DMS」が使われるが、これにも問題があるという。例えば、1994年に「DMS-Ⅳ」が発表されて以降、アメリカでは「注意欠損障害 3倍」「自閉症 20倍」「小児双極性障害 20倍」と異常な患者数の増加が報告されている。基準の見直しで、それまで病気と診断されなかった子どもたちが精神疾患とされるようになっているのだ。

過剰診断がされているだけでなく、過剰投与も問題だ。

日本はベンゾジアゼピン系睡眠薬の投薬量が異常に多いと批判されている。欧米では、ベンゾジアゼピン系は「単剤使用・4週間以内」などの厳しい条件下でしか投与されないが、日本では「多剤使用で10年以上」にわたって投与されることも珍しくない。ベンゾジアゼピン系で問題となるのが依存性だ。

ベンゾジアゼピン系を中心とした抗不安薬・睡眠薬は大麻やヘロインよりも精神依存と身体依存が生じやすく、耐性形成の生じやすさは覚せい剤と同等(p.237)

ところが、多くの精神科医がベンゾジアゼピン系を「副作用が少なく、長期使用も安全」として投与しているという。長期投与で依存となると、薬を止めたときに離脱症状(禁断症状)が起こって長年苦しめられることになる。しかし、精神科医たちは、離脱症状を防ぐとして漫然投与を続けている。常用量依存が医院経営の安定化につながるためである。

ベンゾジアゼピン依存症から脱するための手引書「アシュトンマニュアル」は世界中で使われているが、驚くことにその日本語版を制作したのは精神科医ではない。日本で治療を受けて薬剤の離脱症状に苦しんだニュージランド人と日本人の患者によって翻訳されたのだ。日本の精神科医たちは、処方薬依存症治療の世界的権威である英国ニューカッスル大学名誉教授ヘザー・アシュトンが制作した「マニュアル」を日本語に翻訳しようともしなかったのだ。

本書では触れていないが、日本は諸外国に比べ、精神科のベッド数が異常な数値になっている。OECDの調べでは、2011年の1000人あたりのベッド数は、日本が27床で、ドイツの2.25倍、韓国の3倍、イギリスの4.5倍、アメリカの9倍、精神科のベッド数ゼロを目指しているイタリアと比べると実に27倍だ(Psychiatric care beds
Per 1000 population, OECD
)。

精神科のベッド数を減らす世界的な潮流の中で、日本の精神科のベッド数は、その数の異常性が世界中から指摘されている。しかし、入院患者を減らすことは民間病院の経営を圧迫し閉鎖を意味するため、政府はベッド数の減少を強制できない。

どうしてこんな異常事態になっているのか。

昭和25年に、座敷牢のような「私宅監置」を禁止し、精神障害者を開放する目的で「精神衛生法」が制定された。同法で各都道府県に精神病院の設置することが義務づけられたが、公立の精神病院の設置は困難だった。そこで私立の精神病院が大量に新設されたのだが、このなかに医療とは全く関係のない業者や暴力団の親分が設立したと噂される精神病院まであったという。

日本の精神医療は、ダークサイドどころかブラックが少なくないのだ。



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コメント

Re: 私の体験について

三上さん、コメントありがとうございます。

私は、佐藤光展氏のメールアドレスを存じ上げていません。読売新聞東京本社医療部にと合わせたらいかがでしょうか。お力になれなくてすいません。

ところで、佐藤氏は講談社のサイト「現代ビジネス」に「ブラック精神科医に気をつけろ」という特別寄稿の連載をしています。過剰投与による悲惨な実例が紹介されていますのでご参考にされてはいかがでしょうか。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38315#

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