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『社会脳とは何か』千住淳(新潮新書 533)

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『社会脳とは何か』千住淳(新潮新書 533)


本書は、若い脳科学・心理学者による社会脳の入門書。○○脳という言葉から、ゲーム脳やひらめき脳といったトンデモ学説を思い浮かべがちだが、社会脳研究は心理学と脳科学の両面から人間の脳の発達を明らかにしようとする学問分野である。

著者は、自閉症児や赤ちゃんの行動を「心の理論」を使って「社会脳」の解明に挑んでいる。

【目次】

第1章 ダーウィンの遺産
第2章 生物学から人間に迫る
第3章 社会脳とは何か
第4章 他人の心を読むということ
第5章 自閉症児が教えてくれる
第6章 視線の先にあるもの
第7章 “見られている感”のメカニズム
第8章 子どもは育つ、脳は変わる
第9章 赤ちゃんは知っている
第10章 赤ちゃんの脳、社会に挑む
第11章 “目が合うこと”のメカニズムと発達
第12章 思わずやってしまうこと、言われればできること
第13章 脳が動かす社会、社会が育てる脳


「社会脳(social brain)」とは、社会的行動に関わる脳構造のこと。1990年に生理学者のレスリー・ブラザーズが発表した論文『社会脳:霊長類の行動と神経心理学を新しい領域で統合するプロジェクト』で、「脳科学者は社会脳のメカニズムを研究すべきだ」と提案したことで注目されるようになった研究分野である。

そして「心の理論」とは、相手が何をしたいのか、何を思っているのか、何をしようとしているかといったような、相手の「心」の状態について考えること、そして、相手の心に関する理解をもとに、相手がなぜこのような行動をとっているのか、次に何をしそうなのか、自分はどのように対応すればよいのか、といった理解や予測を行うことである。

社会脳研究は、fMRIや脳波計、PETなど診断機器の進歩で脳の活動状況を理解できるようになったこともあって盛んになっている。

動物は、一般に婚姻関係が長い種ほど大きな脳を持っている。ところが、霊長類では婚姻関係ではなく大きな集団で暮らす種ほど大きな脳を持っている。人類が他の種に比べて圧倒的に大きな脳を持っているのは、社会的な生活をするからだ。つまり、霊長類の大きな脳は、群れ社会という環境への適応として進化してきたのだ。

元々は、子供はもとより自閉症児にも興味のなかった著者は、たまたま自閉症児の心理や教育をしている施設で「心の理論」の相談をしたところ、自閉症児を対象に研究することを勧められたのだ。

自閉症について理解することは、自閉症児の療育や私圓に役立つという側面だけではなく、自閉症ではない人間、定型発達者を理解する「鏡」を得ることにもつながります。(p.96)

自閉症者のコミュニティでは、自閉症でない人々は「定型発達症候群」という障害を持っている、という話があるという。その症状は以下のようなもの。

・他人の気持ちにこだわり、読心術ができているかのような妄想を持つ
・正直でことばの意味通りのコミュニケーションを行うことができず、ことばの意味とその会話で伝えようとする意図が矛盾してしまう。
・道順やものの位置など、環境の変化に気付くことができない
・社会的な立場や友人関係、他人からの評価など、限られた範囲の内容にしか興味を持つことができない

私たちは、相手の心理を予想して比喩的だったり婉曲的な言葉遣いをしてしまう。他人と自分を比べたがるし、褒められれば嬉しがり、貶されれば落ち込む。自閉症者にとって、私たちのこうした「症状」は障害にすぎないのだ。

定型発達症候群の“症状”である対人行動やコミュニケーションの特徴は、社会脳の特徴でもあります。自閉症者という「鏡」を通してこれらの行動を眺めてみることにより、定型発達者の社会脳がどのような役割を果たしているのか、どのような処理を行っているのかについて、新たな視点から研究を行うことが可能です。自閉症者は、社会脳について、人間社会について新たな見方を教えてくれる「先生」でもあるのです。(p.97)

大学進学から卒業研究、大学院進学、ロンドン大学リサーチフェローと著者の研究者としての生活史が率直に語られるとともに、最新の社会脳研究の進展が伺えて興味深い。

著者は、自分に向けられた視線を処理するメカニズムを検討し、自閉症児が自分に向けられた視線に注意が引きつけられるという現象を“発見”している。

さらに、ヒトは相手に“見られている”ことによって認知や行動が変化するという「アイコンタクト効果」によって、皮質下の素早いネットワークが大脳新皮質での処理を調整(制御)するという「早い経路による制御説」を提唱している。


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