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『回避性愛着障害―絆が希薄な人たち』岡田尊司(光文社新書 672)

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『回避性愛着障害―絆が希薄な人たち岡田尊司(光文社新書 672)


愛着について、辞書には「人や物への思いを断ち切れないこと」や「なれ親しんだものに深く心が引かれること」とある。最近は、この「愛着」が希薄な人が増えているという。

著者は、親密な人間関係を築くことが困難な人々を詳しく紹介した『愛着障害―子ども時代を引きずる人々』を2011年に書いている。

本書はその続編に当たり、愛着障害の中でも回避型愛着スタイルと回避性愛着障害に絞って詳しく解説しているだけでなく、そうした愛着スタイルの人がそのデメリットを克服し、その人にふさわしい人生を全うするためのヒントも提供している。

【目次】

第1章 新たな「種」の誕生!?
第2章 回避型愛着と養育要因
第3章 社会の脱愛着化と回避型
    —近代化、過密化、情報化がもたらしたもの
第4章 回避型の愛情と性生活
第5章 回避型の職業生活と人生
第6章 回避の克服
第7章 愛着を修復する


人と親密になるのを避けてしまう、一人のほうが気楽、結婚や子どもをもつことに消極的、責任や束縛を嫌う、傷つくことに敏感、失敗を恐れる、といった特徴をもつ人が急増しているという。その背景として、著者は愛着に希薄な回避型愛着スタイルが広がっているからだとする。

結婚率や出生率の低下は、主に経済問題の側面から論じられることが多いのだが、実際には、今よりはるかに貧しい、食うや食わずの時代でも、高い結婚率と出生率を維持してきた。飢餓ラインぎりぎりで暮らしていても、家庭を持ち、子どもをつくり続けてきたのである。(p.4)

つまり、先進諸国が直面している出生率の低下は、単なる経済問題が原因なのではなく、他人と結ばれることや子どもをもうけることを厭う回避型愛着スタイルの蔓延が原因だというのだ。これは、子孫を残すという生物の本能からすれば、新しい「種」の誕生といえるほどの大事件だ、と著者は言う。

「愛着スタイル(attachment style)」とは心理学用語で、人と人との親密さを表現するスタイルのことである。著者によれば、愛着スタイルは「安定型」と「不安定型」に大きく2つに分かれ、「不安定型」にはさらに「不安定型」「回避型」「恐れ・回避型」「未解決型」の4つに分かれる。

愛着スタイルの分類
・安定型
・不安定型┳不安定型
     ┣回避型
     ┣恐れ・回避型
     ┗未解決型

さらに、ストレスや不安が高まった時には、信頼と安心を与えてくれ、積極的な行動の後ろ盾となる「安全基地」である母親や家族、友人などに助けを求める行動を引き起こすことを「愛着システム」という。

本書では、愛着システムの働きが抑えられ低下した「回避型」について詳しく解説している。

回避型愛着スタイルの人は、

自分の心中を明かさず、相手が親しみや行為を示してきても、そっけない反応をしがちである。他人といっしょに過ごすこととよりも、基本的に一人で何かすることのほうが気楽に楽しめる。他人と過ごすことにまったく興味がないわけではないし、その気になればできないことはないが、そこには苦痛と努力を伴うのである。(p.18)

こうした特徴は、回避性パーソナリティの人と重なるが、回避性パーソナリティのように不安が強く、消極的なタイプの人ばかりでない。自信に満ち、傲慢な人や冷酷で人を平気で搾取するようなタイプにも、回避性愛着スタイルの人がいるという。

回避型愛着スタイルの本質は、不安が強いとか消極的ということではなく、親密な信頼関係やそれに伴う持続的な責任を避ける点にある。親密な信頼関係は持続的な責任と結びついているが、回避型の人はそれを面倒に感じてしまう。そのため、社会的・経済的に結婚や子育てが可能な境遇にあっても、結婚したい・子どもを作りたいという意欲や関心が乏しい傾向が見られる。

感情や情緒を抑える傾向も、親密な信頼関係や持続的な責任を避けることと密接に結びついている。情緒的なつながりこそが愛着であり、本当の親密さなのである。愛着を希薄にしか持たないことは、親密な関係を避けるとともに持続的な責任に縛られることを避けることでもある。(略)回避型の適応戦略は、親密さを避けることで、情緒的な束縛や責任からも自由でいようとする生き方と言えるだろう。(p.20)

回避型愛着スタイルは、心理的な特徴だけでなく、生物学的な特徴もある。下垂体後葉から分泌されるオキシトシンというホルモンは、子育てやパートナーとの絆に関係することが動物実験でわかっている。

オキシトシンの働きが活発だと、対人関係で積極的なるだけでなく、人に対して優しく、寛容で共感的になりやすい。逆にオキシトシンの働きが悪いと、人に馴染みにくく、孤立的にふるまうようになり、また過度に厳格になったり、極端な反応をしやすくなる。(略)オキシトシンは、ストレスや不安を抑える効果がある。(p.31)

オキシトシンがちゃんと働くかどうかは、脳内のオキシトシン受容体の数と相関する。幼いころに安心できる養育環境で育った子どもはオキシトシン受容体の数が多く、虐待やネグレクトを受けた子どもはオキシトシン受容体の数が少ないため、オキシトシンが活発に働かないのだ。

著者によれば、回避型愛着スタイルの遺伝的要因は4分の1程度で、残りの4分の3は生後間もなくの養育環境によって形成されるという。生後6か月の赤ちゃんを3か月間に渡って、愛着に配慮した母子関係と配慮しない母子関係に置いたところ、後者は明らかに回避型を示したのだ。

著者は、乳幼児のころの養育環境によってオキシトシン受容体の数が増減するのではないかと予測している。

中盤以降では、著者が「回避型の権化」という社会哲学者のエリック・ホッファー、エリク・エリクソン、カール・ユング、J・K・ローリング、井上靖といった回避型の人々の症例を紹介している。いずれも、幼い頃に愛着の薄い養育環境で育った人々で、「努力しても、チャレンジしても、どうせ自分は失敗してしまうのでやるだけ無駄だ」と回避的な傾向があった人々だ。

さて、回避型愛着スタイルの克服法だが、うつやパーソナリティ障害に効果的とされる認知療法や認知行動療法は愛着が不安定で他者への不信感や自己否定が強い場合には効果が低いという。愛着に課題を抱える人の改善に効果が高いとして、マインドフルネス認知療法とACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)を紹介している。この2つの新しい治療法は、認知の偏りを正すことを目的とした認知療法と違い、物事を価値判断せずにありのままに受け入れることで、豊かな気づきを得ることができるからだという。

回避型である自身の愛着スタイルに気づいて受け入れることから始まるのだ。



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『境界性パーソナリティ障害』岡田尊司
『あなたの中の異常心理』岡田尊司

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