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『売る力―心をつかむ仕事術』鈴木敏文(文春新書 939)

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『売る力―心をつかむ仕事術鈴木敏文(文春新書 939)


本書は、セブン-イレブンを日本に持ってきた著者が社内報『四季報』で対談した各界の人々の言葉を紹介しながら、「売る力」を具体的かつ明解に解説している。

「売る力」とは、お客様から見て「買ってよかった」と思ってもらえる力である。だから、売り手は常にお客様の求めるものをかなえる「顧客代理人」でなければならない。(p.8)

【目次】

第1章「新しいもの」は、どう生み出すのか?
     ビートたけしさんの「笑い」との共通点
     「お腹がいっぱい」の人に何を食べさせるか
     「二匹目のドジョウ」は追わない ほか
第2章「答え」は「お客様」と「自分」のなかにある
     「お客様のために」はウソ、「お客様の立場で」が正しい
     赤飯は「炊く」のではなく「蒸す」
     「真の競争相手」は、「絶えず変化する顧客ニーズ」 ほか
第3章「ものを売る」とは「理解する」こと
     受けるのは「二十%引き」より「消費税分還元セール」
     人は「得」より「損」を大きく感じる
     「高・中・安」の商品があると「中」が選ばれる ほか
第4章「本気」の人にチャンスはやってくる
     「伝わらない」のは「存在しない」のと同じ
     便座カバーを置かないインテリア専門店
     コークもスーパードライも売り上げ日本一の理由 ほか


本書によれば、セブン-イレブンでは、毎日、昼は弁当や惣菜類の役員試食を実施しているという。さらに、著者は休日にも近所のセブン-イレブンで購入し、お弁当の味をチェックしてレベルが落ちていれば、即座に販売中止を指示し、20分以内に全国1万5000店の店舗から撤去させるらしい。

弁当メーカーの新製品開発担当者の話として、「他のコンビニ・チェーンのお弁当開発担当者はプレゼンでおかずを少しだけ食べるだけど、セブン-イレブンの担当者はお弁当をまるまる全部食べる」というのを聞いたことがある。新製品が採用されるかどうかで今後の売上が決定するので、弁当メーカーにとってプレゼンは真剣勝負の場だが、セブン-イレブン側の担当者の真摯な姿勢には驚くべきものがある。そして「セブン-イレブンのお弁当開発担当者は、可哀想なくらいどんどん太っていく」という。

この2つエピソードから、弁当がコンビニエンスストアにとって主力商品とはいえ、セブン-イレブンが凄まじい執念で取り組んでいることがわかる。だから、セブン-イレブンの弁当は他のコンピに比べ、圧倒的な売上を維持し続けているのだろう。

セブン-イレブンがここまで新製品に注力するのは、「消費者はすぐに飽きる」と考えているからだ。だから、セブン-イレブンでは2800品目から1年で7割の商品を入れ替えている。つまり、「定番商品」は3割程度しかないことになる。

予定調和を壊す
商品選択に疲れているお客様に納得性を感じてもらう基本的な原則は、「二匹目のドジョウねらい」の発想から抜け出し、予定調和を崩し、新しい価値を提供することです。「ココアとバターと文庫本」のように、新しい組み合わせや結びつけ方を見つけ、新しい提案をする。「手軽さ」と「上質さ」という、現代の消費者が最も関心をもつ二つの座標軸のトレードオフの関係で空白地帯を見つけ出す。(p.80)

「予定調和」とは、誰もが予想する流れどおりにものごとが進み、結果も予想通りである、という意味だ。新製品には、これまで存在しなかった概念のものを生み出すことと、既存の概念のものに新しい意味を付け加えることの2つがある。「ココアとバターと文庫本」というのは、日本ではあまり知られていないココアにバターを少量加えるという飲み方があるので、「秋から冬の夜長には、ひとかけらのバターを入れた温かいココアを片手に文庫本を読もう」と提案することだという。

「上質」と「手軽」の両立
一般的にはトレードオフにある「上質」と「手軽」について詳しく解説している。「手軽」というは「安価」のことである。「上質」なものが「高価」であり、「安価(手軽)」なものは「低質」というのが当たり前だが、この2つの要件をバランス良く提供することが重要なのだ。

PB商品である「セブンプレミアム」や「セブンゴールド」など、NB商品よりも高いという常識を覆す商品を生み出してきた背景についても詳しく語っている。

モノがあふれ、社会が裕福になるほど、お客様は消費を正当化できる理由や選択を納得できる理由を探し、メリハリ消費、ごほうび消費、イベント消費が増えていく。とすると、売り手に求められているのは、消費を正当化できる理由や選択を納得できる理由をお客様に提供することです。(p.78)

NB商品のメーカーが製造し、その社名を記したセブンプレミアムは「上質」に軸を置くことで、NB商品よりも高い価格でありながらも成功した。「上質さ」と「手軽さ」を2つの軸とした座標空間に、競合相手のいない空白地帯を発見したのがセブンプレミアムだった。

みんなが「いい」ということをやれば、六割のお客様を相手に九割の売り手と競合することになるのに対し、反対されても挑戦すれば、四割のお客様を相手に一割の売り手とともにビジネスができる。(p.92)

「お客様のために」と「お客様の立場で」はまったく違う
本書で繰り返し使われているキーワードに「お客様の立場で」がある。同じような言葉に「お客様のために」があるが、この2つはまったく違うと鈴木は言う。「お客様の立場で」考えるためには、自分の過去の経験をいったん否定しなければならない。ところが、「お客様のために」はあくまで経験や実績に基づいた売り手からの発想に過ぎないからだ。顧客ニーズとのズレが発生しやすいし、自分たちのできる範囲やいまある仕組みの範囲内での発想にしかならず、売り手の都合が優先されてしまう。「お客様の立場で」考えると、売り手にとって不都合なことでも実行しなければならないのだ。

自分たちにとって不都合なことでも、お客様の都合に合わせて実行する。それが「お客様の立場で」考える仕事の仕方です。コストがかかり、効率が悪くても、お客様が共感共鳴するものをつくっていけば、必ず、結果が出て、収益が確保できるようになる。売り手の都合の範囲内で「一生懸命やる」のと、お客様の都合に合わせて「正しいことをやる」のとではまったく意味が違うのです。(p.107)

損失回避性を抜け出す
人間は、1万円を得た喜びや満足感よりも、1万円を失った苦痛や不満足の方を大きく感じてしまう。そこで、人間は損失を回避しようと考え、行動するようになる。行動経済学の主要なテーマである「損失回避の心理」である。これは、買い手だけでなく売り手にも同じように働く。すると、機会ロスよりも廃棄ロスを恐れるようになり、消極的な発注となってしまう。

売り手が損失回避の心理から抜け出し、挑戦意欲をもって、積極的な姿勢をとれば、買い手も損失回避の心理から抜け出して、購買意欲をそそられ、積極的に手を伸ばそうとする。(p.155)

本書に書かれていることは、1974年以来、セブン-イレブンがコンビニエンスストア業界の先頭に立って40年に渡って成長・進化を遂げ続けてきた経営トップの言葉だけに圧倒的な説得力がある。しかし、鈴木の「売る力」はどの程度継承されているのだろうか。休日ですら弁当の味をチェックせずにはいられない強烈なカリスマを失った時、セブン-イレブンはどうなるのだろうか。



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