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『城を攻める 城を守る』伊東潤(講談社現代新書 2248)

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『城を攻める 城を守る』伊東潤(講談社現代新書 2248)


お城がブームになっているらしい。「日本100名城」を巡ってスタンプを集める人も多いという。城下町に生まれ、城跡を遊び場として育った私は、そうした城マニアにはならなかったが、いまだに城をごく身近なものと感じている。

著者は歴史小説家で城の研究者。たまたま訪れた箱根山西麓にある山中城の堀の美しさに衝撃を受けたことから作家になったという。 北条氏がどうしてこんな堀を必要としたのかと調べ始め、山中城を舞台に処女作の『悲雲山中城』を書いたのだ。

本書では、全国26城について、それぞれの城の成立の歴史と、城をめぐる戦いを紹介している。26城の選定理由は、戦国時代から幕末に行われた城郭攻防戦の舞台となった城であること。

【目次】

第1部 北海道・東北
 【白河城】東北戊辰戦争の行方を左右した城郭攻防戦
 【会津若松城】幕末最大の悲劇の舞台となった白亜の名城
 【五稜郭】箱館戦争の舞台となった欧州式稜堡型城郭
第2部 関東
 【新井城】武士の時代の終わりを告げた海城
 【河越城】新旧交代の舞台となった武蔵国の要衝
 【箕輪城】孤高の奇才・長野業政の築いた城郭網
 【鉢形城】戦国時代の黎明から終焉まで、激戦の舞台となり続けた要害
 【八王子城】関東平野を睥睨する巨大山城
 【水戸城】血で血を洗う同士討ちの舞台となった名城
第3部 甲信越
 【川中島合戦と海津城】信玄の高速道路を支えた一大兵站拠点
 【一乗谷朝倉館】現代によみがえる中世城郭都市
 【七尾城】北陸有数の巨大山城を攻略した謙信の軍略
 【春日山城】謙信が手塩にかけて造り上げた戦国最強の山城
第4部 東海
 【桶狭間合戦をめぐる城郭群】伊勢湾経済圏支配をめぐる織田・今川両家の熾烈な攻防戦
 【懸河城】今川家の駿遠防衛構想の切り札となった要害
 【二俣城攻防と三方ヶ原合戦】巨匠武田信玄が最後の筆を揮った会心の一戦
 【長篠城】戦国時代の流れを変えた山間の城
 【高天神城】栄光と没落の分岐点となった東海一の堅城
 【山中城】緒戦の大切さを教えてくれた戦国山城の最終型
 【韮山城】四万四千の豊臣軍を翻弄した北条家創業の城
第5部 西日本
 【小谷城】戦国時代を代表する難攻不落の大要害
 【有岡城】戦国有数の悲劇の舞台となった怨念の城
 【賤ヶ岳合戦と陣城群】天下の帰趨を決めた陣城戦
 【大坂城】外交的駆け引きに敗れ去った難攻不落の巨城
 【原城】泰平の世を震撼させた宗教戦争
 【熊本城】国内最後の城郭攻防戦を耐え抜いた名城中の名城


城といえば天守と同義と思っている方々も、まだまだ多いのが実情である。これまで、そうした天守のある城だけが、名城と呼ばれてきた。(p.300)

「土の城をこよなく愛する」という著者は、天守の優美な姿態の陰に隠された毒牙があってこそ、美しさが際立つという。

そうしたわけで、本書には天守の話はほとんど出てこない。天守どころか城郭すら残っていない、名城とはほど遠い城も採り上げている。しかし、そうした城も戦略上の重要ポイントだった。

戦国中期から後期の戦いが、「要塞」すなわち流通を抑える地の争奪戦に重きが置かれ、それを奪われた方が衰微していく(p.61)

城をめぐる攻防戦は、防衛拠点であり経済的に重要な拠点の争奪戦であり、そこには戦国武将たちのさまざまな戦略があった。

峻険な山城は、要害と呼ばれることが多いが、水の手を断たれたり、兵糧攻めにされると、意外に脆かったりする。(…)一方、何の変哲もない平城や、比高十メートルほどの高さに築かれた台地城でも、寄せてはなかなか攻略できず、籠城が長引くことがある。(…)頑強な抵抗を示した平城や台地城は、枚挙に暇がない。これらの城に共通しているのは、周囲を河川、沼沢地、湿地帯に囲まれていることである。(p.67)

本書では、そうした地理的な戦略についても詳しく分析されている。

小説家が書いた歴史研究本というと、これまでこのブログで紹介してきた本がそうであったように、小説的な要素やエッセイ的な雑感、根拠のない妄想が書かれた残念なものが少なくない。

しかし、本書は「おわりに」で著者自らが「綿密な現地調査と研究成果を土台にしており、読者に対して誠実なことだけは約束する」と宣言しているように、単なる憶測を見てきたように書いたり、当事者の心理状態を描写する愚に陥らず、城を舞台とした合戦の背景から、戦略、戦いの帰趨を淡々と歴史書のように記述している。

図版にわかりにくいところもあるが、戦国時代と幕末の「城を攻める 城を守る」戦略を詳しく分析している。歴史的素養のない者にはあまり馴染のない城や合戦も少なくないが、本書は城をめぐる戦略のかずかずを鮮やかに描いていて面白い。


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