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『中国の大問題』丹羽宇一郎(PHP新書 931)

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『中国の大問題』丹羽宇一郎(PHP新書 931)


著者は中国大使の時代に売国奴と呼ばれた。

著者は、伊藤忠商事の会長・相談役を経て2010年6月に民間人初の中国大使となった。伊藤忠商事では食料関連事業を担当したこともあって、中国の要人と太いパイプがあったことが大使就任の理由だったが、言動が中国寄りであるとされ任期途中で更迭された。

本書では、中国が抱える諸問題を指摘するとともに、更迭に至る経緯についても書いている。

【目次】

第1章 14億人という大問題
第2章 経済という大問題
第3章 地方という大問題
第4章 少数民族という大問題
第5章 日中関係という大問題
第6章 安全保障という大問題
終章 日本という大問題


第1章から第4章までは、習近平政権の分析と、拡大する都市と農村の経済格差、国有企業の杜撰な経営体質、テロや暴動が絶えない少数民族問題、要人たちの汚職と不正蓄財、といった中国が直面する難問を解説している。しかし、「大問題」の数々はたびたび報道されていることと同じで新鮮味はない。

その一方で、中国の次世代リーダーに触れている部分は興味深い。

中国は、全国人民代表大会(全人代)が形式上の決定機関だが、実質は大臣クラスの中国共産党中央政治局委員25名、そのうち7名の常務委員である「チャイナセブン」が国を動かしている。著者は、習近平を支える次のリーダーとして、汪洋・孫政才・胡春華の3人を挙げ、5年以内に常務委員となるだろうと書いている。

そして、李克強首相をはじめ、次世代のリーダーである汪洋・李源潮・孫政才・胡春華といった第18期中国共産党中央政治局委員 たちは知日派だという。さらに、習近平政権は本来きわめて親日的だと見ている。ではなぜ、習近平政権は反日なのか。

指導層の権力基盤の強弱は、反日運動と強く関連している。権力基盤が弱まり、国内政治が不安定になると、求心力を維持するために反日に走る傾向がある。近年では胡錦濤・前総書記が任期後半、江沢民・元総書記一派との派閥争いの影響などによって支配力が衰えるとともに、反日運動がしだいに強まっていった。(p.39)

韓国も同じで李明博・前大統領の竹島上陸や天皇謝罪発言や、朴槿恵・現大統領の告げ口外交を例にあげているが、これはよくいわれていることで新鮮味はない。習近平の権力基盤がまだ強固なものではななく、旧来の要人を排除する2年後まで独自性を出せないためだとしている。

中国の現在の習近平体制は、もちろん国民に選ばれて発足したわけではない。となると、14億人の民をその6パーセントにあたる中国共産党員が統治する正当性はどこにあるのか。選挙による国民の信任を得ないならば、独裁体制を維持せざるをえない。独裁体制を維持するためには、政権に銃を向けられないために軍隊を掌握する必要がある。武力による制圧手段を背後にもちながら、共産党の正当性を国民に納得させる。中国に為政者にはそうした硬度な政治力が絶えず求められている。(p.52)

著者は、日本と中国とでは経済発展に40年のズレがあるとたびたび指摘している。現在の中国は、第一次高度経済成長期を終えた1974年の日本であり、今後は経済成長が年率9%以上から年率4%程度になった日本の第二次高度経済成長期と同様の内需拡大期に移行すると見ているのだ。

急激な生産拡大と目先の利益獲得という企業のモラルハザードのために環境破壊が進行し、政治家の汚職が横行した日本の成長期と同じとみなしているのだ。国家の発展という観点から見れば似ている点はあるかもしれないが、果たして本当だろうか。

確かに、日本の第一次高度経済成長期には水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜんそくなど、人命や人権をないがしろにする破廉恥な企業活動は日本でも見られたし、政治家によるかずかずの汚職事件が摘発された。しかし、中国における人権侵害や環境破壊はかつての日本を大きく超えているのではないか。それに、中国官僚の不正蓄財は日本の政治家の汚職とは桁が違いすぎる。石油閥のドンといわれた周永康・前共産党政治局常務委員の不正蓄財は1兆5000億円という気の遠くなるような金額だ。

第5章では、著者が「売国奴」と呼ばれるようになった尖閣諸島問題の経緯について書いている。

著者が中国大使になって3か月後の2010年9月、尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に中国の漁船が体当りする事件が発生した(著者は、「中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突事件」とあえて主体を明確にせずに書いている)。

次に、2012年4月に石原慎太郎都知事が、ワシントンでの講演で尖閣諸島の購入計画を発表した。購入費用のため東京都によって東京都尖閣諸島寄附金が募られ14億円が集まった。しかし、尖閣諸島を遠く離れた東京都が購入することはどう考えても無理があった。

本書には書かれていなが、著者は『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで東京都による尖閣諸島購入計画について、「実行されれば日中関係に重大な危機をもたらすことになる」として、日本政府関係者として初めて反対を明言した。この発言によって日本政府は7月23日に更迭を決定した。

2012年9月9日のウラジオストックで開催されたAPEC後に、野田佳彦首相と胡錦濤国家主席が「立ち話」をしたと報道された。胡錦濤は尖閣問題で「日本は事態の重大性を充分に認識し、軽はずみな行動は謹んでほしい」と申し入れたとされ、中国のマスコミでは大きく取り上げられたという。

ここで著者は、メンツを重んじる中国に対して日本側が誤った政治判断をしたと主張している。「立ち話」の翌日に日本政府が閣議決定で「可及的すみやかに尖閣三島の所有権を取得する」と発表したことが、中国の反日デモを激化させ、日系企業が襲われる事態を招くことになった、としているのだ。

実は同年7月7日から日中間で国有化問題をめぐるやりとりが続いていて、中国側から「十一月に共産党大会もあり、非常に大きな問題になる」と国有化をやめるよう訴えられ、「都の購入計画は日本の一人の知事の発言にすぎない」と著者は答えていたというのだ。しかし、北京での事務レベルでの折り合いがつかなかったため、APECで胡錦濤が野田佳彦に直接、意見を具申したということらしい。これは、中国で広く報道されていて、国の代表である胡錦濤主席の顔に泥を塗るような日本政府の対応に中国側が激怒したにちがいない、と書いている。

1972年の日中共同宣言には記されていないが、田中角栄と周恩来の会談の中で尖閣諸島の領有権問題は「棚上げ」という処理がなされたとされる。しかし、実際には日本が実効支配してきたし、日本政府は「棚上げ合意」はないと表明している。

尖閣問題が先鋭化したのは、1992年に中国が「領海及び隣接区域法」に「尖閣は中国の領土である」と明文化したことだ、と著者は指摘している。これに対し日本政府は1996年になって池田行彦外務大臣(第1次橋本内閣)が「日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」と発言し、その年から中国の船が領海侵犯をするようになったのだ。

つまり、本来は1992年の時点の宮沢喜一内閣は、中国の「領海及び隣接区域法」を糾弾しておかなければならなかったのだ。さらに、本書には書いてないが、2010年3月、中国は尖閣諸島を国の管理下に置く「中華人民共和国海島保護法」を施行している。この時も鳩山由紀夫内閣は、国際世論の注目を集めるような非難を中国に対してしなかった。それが漁船衝突事件につながったのは明らかだ。

こじれてしまった尖閣問題に関して著者は解決法を提案している。

領土問題を解決する「話し合い・売買」「司法」「戦争」という三つの方法がいずれも閉ざされている場合、残された選択肢はただ一つしかないと私は思う。それは「棚上げ」と言わずに「フリーズ」、日中四十年間にわたる四つの共同宣言の精神を再確認し、日中関係の現状をまず凍結してしまうのである。(p.157)

「フリーズ」して冷却期間を置き、冷静になって話をすべきだというのだ。尖閣諸島周辺には石油が埋蔵されているとされるが、開発には莫大な費用を要するので、尖閣問題は一刻を争うテーマではない、としている。そして冷却期間中に、武器は絶対使わないなどの危機管理、資源開発、漁業協定、海難救助などについて真剣に話し合うべきだとしている。

基本的に著者の立場は、たびたび引用している習近平の言葉である「お互いに住所変更できない」立場にある日中が、戦争のような重大な紛争を避けて共存することである。14億人という巨大な市場で消費が活性化し始めている中国を「些細な領土問題」で、アメリカやドイツ、韓国、台湾といった他国に譲り渡すのは愚かだというものだ。

かつて小室直樹は、太平洋戦争の原因を日本が中国市場を独占しようとしてアメリカを怒らせたためだ、と指摘した。かつての日本のように中国が輸出依存から内需型へと変革する中で、莫大な市場をみすみす他国に専有されるのを防ぐには、一刻も早く尖閣問題を沈静化しなければならないのは言うまでもない。



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