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『ツカむ!話術』パトリック・ハーラン(角川oneテーマ21 D-19)

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『ツカむ!話術』パトリック・ハーラン(角川oneテーマ21 D-19)


著者は、漫才コンビ・パックンマックンのパックン。

ハーバード出身のインテリだということは知っていたけど、2012年10月から東京工業大学で非常勤講師として「コミュニケーションと国際関係」を教えているとは知らなかった。

本書はその講義録ではなく、日本人の多くが苦手としている「話術」を身につけるためのさまざまなコミュニケーション技法を解説している。ビジネスパーソンにも、スピーチや会議、プレゼンテーション、交渉といったシーンで役立つテクニックが数多く紹介されている。

【目次】

第1幕 理論編—話術の基本テクニック
 第一章 話術は「習って慣れろ!」
 第二章 あなた自身でツカむ「エトス」
 第三章 「感情」によってツカむ「パトス」
 第四章 「言葉の力」でツカむ「ロゴス」
 第五章 相手の懐に入り込むには
幕間 対談—パックン×池上彰 対話で学ぶ「ツカみ」の極意
第2幕 実践編—現場で使える「ツカむ!話術」
 第六章 心を打つスピーチ、プレゼンの技術
 第七章 話し合いの場での話術
 第八章 騙す話術の見抜き方
 第九章 これが「ツカむ!話術」だ
 付録 「ハーバード流」自己紹介


著者が非常勤講師を引き受けることにして調べてみると、東工大の学生の約8割が「話し下手」に悩み、「コミュ障(コミュニケーション障害)」や「ボキャ貧(ボキャブラリーが貧困)」を自称していたという。

著者は、「日本人は、うまく話せないことを自分の性格的なものと捉えすぎる傾向がある」と何度も書いている。しかし、「トレーニングしていないのに、苦手だとか下手だとか決めつけるのはおかしい」と著者はいう。話術は練習すれば必ず身につくものだからだ。

「ツカむ」とは何か。著者は、話術で「人の心をツカむこと」だとしている。そして、話術の目的として「相手を動かす側に立ち、すなわち意見を通したり、人を説得できるようになること」を挙げている。

「第1幕 理論編」では、コミュニケーション技法として話術の理論的な解説がされている。

まず、相手を説得するときには、キケロが説いた「気持ち・考え・行動」の3Kがポイントになるという。話術を活かして、「相手の気持ちや考えを変え、行動する」ように説得できるからだ。

説得力を上げるファクターとして、アリストテレスの『弁論術』にある「エトス」「パトス」「ロゴス」の3つを挙げている。

 エトス:人格的なものに働きかける説得要素
 パトス:感情に働きかける説得要素
 ロゴス:頭脳に働きかける説得要素

この3つは同等の力があるのではなく、

 エトス>パトス>ロゴス

の順になっているという。

どんなに綺麗な言葉づかいでどんなに論理的に正しいことを言っても、エトスの信憑性とパトスの感情力をともなわないと説得力がない。(p.93)

つまり、発言にふさわしい実績・肩書・誠実さといった「エトス」を伴った話し手が、愛・組織愛・笑い・同情といった聞き手の感情(パトス)を揺さぶるようにストーリーをもって、比較・比喩・例示・喩え話・対句・列挙・反復・呼びかけ・三段論法などの修辞的言語(ロゴス)を駆使して話すことが、ツカむ話術なのである。

エトス度を上げて、信頼性を主張して話を聞いてもらうためには、自分の功績や肩書を知らせることが効果的な場合もある。しかし、謙虚であることが好まれる日本では露骨な自慢は嫌われる。そこで著者は、モデストブラッグ(modest brag:謙遜自慢)を勧めている。自分をアピールする必要があるとき、直接的に自慢するよりも、謙遜してちょっと自虐的なスタンスの中で間接的に伝える手法だ。

「うちの奥さん料理上手なんだけど、いつも野菜中心だし、お酒もあまり飲ませてくれない。いや〜大変だよ。モデルと結婚していると」(著者は妻が元モデルだから実体験なのだろう)

相手の懐に入るには、まず良い聞き手になること。次に安易に決まり文句を使わないこと。相手にとって共通認識を示す言葉や表現である「コモンプレイス」を使うことを挙げている。

日本では「安全」「安心」「元気(英語に翻訳できない)」「マナー(日本人はマナーを重視する)が、アメリカでは「自由」「自主性」「独立心」「実力主義」がコモンプレイスである。

日本は、ルールやマナーを守らなくてはいけないと、みんなが考えている社会ですが、アメリカではルールを守らないアウトローがというのがカッコいい。ハリウッド映画のヒーローは、(略)大体がルールを破りまくりのアウトローとして描かれることが多いでしょう。(p.114)

相手の立場や背景を考えて、響きそうなコモンプレイスを推測するには、相手が何度も使う言葉やフレーズに注目する。事前にその組織のホームページをチェックすると、何度も登場する言葉やキャッチコピーがその組織のコモンプレイスである。

さらに「フレーミング」にもページを割いている。元々は「額縁をつける」という意味だが、話術では視点を変えた言い換えのことで、額縁の種類だけでなく、どこにつけるかも自由に選べるとしてる。

例えば、「規制緩和」は「無法化」や「弱肉強食化」とネガティブな表現に言い換えることができる。「不良品発生率が10パーセントから5パーセントになりました」というのを「不良品発生率が50パーセント減りました」と言い換えることができる。視点を変えてどこに焦点を当てるかで、自分の望んだ方向に注目させることができるテクニックだ。

「第2幕 実践編」では、挨拶やスピーチ、ディスカッション・交渉・ディベート、騙す話術の見抜き方など具体的に解説している。

昔からテレビの海外取材番組を観ていていつも驚かされるのは、小学校低学年の子供でもインタビューにははっきりと自分の主張を述べることができることだ。初等教育に彼我の大きな差があるということなのだろうと思っていたが、本書ではアメリカのコミュニケーション教育について詳しく紹介されている。

アメリカでは幼稚園からプレゼンテーションの訓練がされているという。「show and tell(見せて話す)」というもので、家からおもちゃや雑貨、蛇の抜け殻などを持参し、クラスメイトの前で「これは何か?」「どこで手に入れたのか?」「あなたにとってどういう意味があるのか?」という先生の質問に答えるというものだ。これが小学校2年生ぐらいからは、全部一人で話した後に、クラスメイトからの質問に答えるという。

日本には「阿吽の呼吸」や「忖度」といった、言葉を発せずに相手の気持ちや考えがわかることを尊ぶ傾向がある。外国人には苦手な日本人特有の「空気」というものもある。しかし、本来、言葉で伝えなければ、情報が正確に伝わることはないし、言葉にしなかったために誤解が生じることも少なくない。

言葉で伝えなければ省エネで楽かもしれないが、それは相手に「理解してくれ」という甘えでしかない。そうした甘えを許してくれる親密な関係ならばともかく、文化や価値観の異なる相手に対しては、ちゃんと言葉で伝えなければならない。しかし、そうした訓練を日本ではあまり教育に採り入れてこなかった。コミュニケーション技法を学んでいないのだから、「コミュ障」や「ボキャ貧」が少なくないのは当たり前だ。



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昼食時は「難民」と化して「新書」を片手に、都内各地を彷徨っています。

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