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『知の英断』ジミー・カーター/フェルナンド・カルドーゾ/グロ・ハーレム・ブルントラント/メアリー・ロビンソン&マルッティ・アハティサーリ/リチャード・ブランソン 吉成真由美インタビュー・編(NHK出版新書 432)

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『知の英断』ジミー・カーター/フェルナンド・カルドーゾ/グロ・ハーレム・ブルントラント/メアリー・ロビンソン&マルッティ・アハティサーリ/リチャード・ブランソン 吉成真由美インタビュー・編(NHK出版新書 432)


2007年、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領とフツ大主教のもとに、ジミー・カーターをはじめ元首脳の「長老」たちが集まって「The Elders(エルダーズ)」という国際人道団体が作られ、世界平和と虐げられている人々の救済活動をしている。仕掛け人は、ヴァージングループの総帥リチャード・ブランソン。

本書では、エルダーズのメンバー5人とブランソンの経歴や政治的理念とエルダーズとしての活動を明らかにしている。

本書の原文は「エルダーズ(The Elders)」の公式サイト(http://theelders.org)に掲載されている。そしてその日本語訳は、『中央公論』2013年10月号〜2014年3月号に掲載された。本書は、その記事に加筆し、カーター元大統領の序文を加えたものだ。

【目次】

第1章 戦争をしなかった唯一のアメリカ大統領—ジミー・カーター
第2章 五〇年続いたハイパーインフレを数か月で解消した大統領—フェルナンド・カルドーゾ
第3章 「持続可能な開発」と「少女結婚の終焉」—グロ・ハーレム・ブルントラント
第4章 「人権のチャンピオン」と「世界一の外交官」—メアリー・ロビンソン&マルッティ・アハティサーリ
第5章 ビジネスの目的は、世の中に“違い”をもたらすこと—リチャード・ブランソン


仕掛け人であるリチャード・ブランソンによると、エルダーズ創設のきっかけは2003年のイラク戦争だったという。

イラク戦争が始まったとき、ブランソンはネルソン・マンデラと相談して、マンデラがフセインに退任をするよう説得しようとした。しかし、爆撃が始まったために対話は実現しなかったが、ブランソンはこう考えたという。

世界には、高いモラルと卓越した外交手腕、並びに比類なき交渉経験を備えた素晴らしい人々が少なくとも12人いて、彼ら人生の残りの10年ないし15年、「グローバル村の長老」として活躍してくれるのではないかと。(p.195)

そこで、ネルソン・マンデラに相談してエルダーズの創設者になってもらい、元首脳たちに声をかけてもらったという。

現在のエルダーズ・メンバーは以下の12人。

故ネルソン・マンデラ(南アフリカ元大統領)
マルッティ・アハティサーリ(元フィンランド元大統領)
コフィー・アナン(前国連事務総長)
エラ・バット(インドの女性活動家)
ラフダール・ブラヒミ(アルジェリア元外相・国連特使を歴任)
グロ・ハーレム・ブルントラント(ノルウェー元首相)
フェルナンド・カルドーゾ(ブラジル元大統領)
ジミー・カーター(アメリカ元大統領)
ヒナ・ジラニ(パキスタン人権委員会創設者・弁護士)
グラサ・マシェル(マンデラの3番目の妻)
メアリー・ロビンソン(アイルランド元大統領)
デズモンド・ツツ(ケープタウン元大主教)
エルネスト・セディージョ(メキシコ元大統領)

超大国アメリカの大統領だったジミー・カーター以外はノルウェー、アイルランド、フィンランド、アルジェリア、ブラジルといった小国と中進国の元首脳たちと女性活動家たちである。

驚かされるのが、それぞれが国家首脳を辞任した後に、国際機関やNGOなどで世界平和や人権問題に積極的に取り組んでいるということだ。日本にはこうした世界的な視野で活動している元首脳はいない。残念ながら、ブランソンの言う「高いモラルと卓越した外交手腕、並びに比類なき交渉経験」をもった元首脳が日本にはいないということだ。

50年間続いたブラジルのインフレをたった半年で一挙に可決したフェルナンド・カルドーゾは、「薬物政策国際委員会」の委員長として、ドラッグ問題を「刑事問題」から「健康問題」へとパラダイムシフトしようとしているという。

需要を減らさない限り、ドラッグの問題は解決しない。タバコの場合と同じように、ドラッグが健康にいかにひどい影響を与えるかということを、宣伝する必要があります。(p.79)

ヨーロッパではポルトガルだけが、ドラッグを「合法化」するのではなく「脱犯罪化」した。ドラッグの所持、使用は今でも違法だが、所持が見つかった場合でも、10日分の使用量を所持した場合には駐車違反程度の罰金ですむ。しかし、それ以上はドラッグの売人とみなされ刑事法違反となる。これによって刑務所費用とドラッグによる死亡者が激減し、国内使用量も減ったという。

「持続可能な開発(Sustainable Development)」は、ノルウェー首相だったグロ・ハーレム・ブルブラントが委員長を務めた「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に提出した報告書の中心理念である。現在では、環境保全についての基本的な共通理念として、国際的に広く認識されている。

女性の地位向上や少女結婚を根絶する運動を続けているメアリー・ロビンソンは、次のように述べている。

紛争の渦中にある国々の女性たちは、自分たちはテーブルについていないと常に感じているのです。彼女たちは実際にローカルな共同体レベルでは平和推進活動をしていますが、正式な和平交渉の舞台になると、悪い男たちが悪い男たちと話をしては、お互いに許し合ったりするというような図式になる(笑)。(p.154)

それぞれは素晴らしい業績に彩られていて、現在も国際機関やNGOで目覚ましい活動を行っているが、エルダーズという組織としての実績はどうなのか。

カーターは、35年間にわたってパレスチナ問題を研究してきたと言い、2007年にはアメリカのユダヤ・ロビーやイスラエルを批判する本まで書いている。しかし、パレスチナに侵攻しているイスラエルをなぜアメリカが支援するのか、という吉成の2度の質問にはまともに答えていない。

エルダーズの公式サイトの「Our Work」(http://theelders.org/our-work)を見ると、Climate change、Elders+Youngers、Equality for Girls & Women、Iran、Israel-Palestine、Myanmarの6項目が並んでいる。パレスチナ問題はあるが、かつてあったはずの北朝鮮は入っていない。

2011年にカーターとメリー・ロビンソン、グロ・ハーレム・ブルントラント、マルッティ・アハティサーリが2度にわたって北朝鮮と韓国を訪れたが、「核問題」はもちろん人道的支援についてですら具体的な成果を上げることはできなかった。

北朝鮮問題は、成果が上がらなかったので関与するのを諦めたのだろう。

「外交は人だ」といわれるが、英断できる知の「長老」がいかに集結しても、国家間に働く力学の前では蟷螂の斧にすぎないということだろうか。



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