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『ヨーロッパ思想を読み解く―何が近代科学を生んだか』古田博司(ちくま新書 1083)

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『ヨーロッパ思想を読み解く―何が近代科学を生んだか古田博司(ちくま新書 1083)


帯に「新・哲学入門」とあるように、本書は「新しい」哲学の入門書だ。東洋思想が専門の著者は「門外漢」と言いながら、西洋哲学者たちの思想をバッサバッサと切り刻み、難解なはずのドイツ観念論がこんなにわかりやすくていいのかと驚くほど明快に説いている。

本書は、師と弟子の「問答」に「解説」がつく形式になっている。著者が一人二役で書いたこうした問答集は、著者自身の論理展開による予定調和で議論が進むので、読者は置いてきぼりにされがちだ。しかし、本書は「弟子」の質問や相づちが的確なのでとても読みやすく面白い。「あとがき」には、この「問答」が著者と加納敦子という大学院生との実際の対話を書き起こしたものだと書かれている。

【目次】

プロローグ 世界をつくった「向こう側の哲学」
  問答①―向こう側ってなんだ?
  解説―向こう側をとらえる思考様式
I 向こう側をめぐる西洋哲学史
 第一章 この世の「向こう側」など本当にあるのか—バークリ
  問答②―向こう側と因果律
  解説―イギリス哲学の快走
 第二章 「こちら側」に引きこもる—フッサール
  問答③―直観、超越、思い込み
  解説―ドイツ哲学の苦渋
 第三章 「こちら側」をさらに深める—ハイデガー
  問答④―師弟と向こう側
  解説―こちら側優位の時代
 第四章 「向こう側」は殺せるか—ニーチェ
  問答⑤―それでも向こう側は死なない
  解説―向こう側の生かし方
 第五章 我々の時代と「向こう側」—デリダ
  問答⑥―カトリックの僧侶のように
  解説―哲学のイノベーション
2 「向こう側」と「あの世」の思想
  問答⑦―脱構築の罠
 第六章 時間論
  問答⑧―君がいなくなっても誰かがふさぐ
  解説―時間や歴史に因果律を持ち込む不毛
 第七章 近代以後の「生かされる生」
  問答⑨―もう生きがいなんて考えなくてもよい
  解説―向こう側へ拡張した世界を生きる
 第八章 「あの世」と「向こう側」
  問答⑩―向こう側の霊を祓う
  解説―哲学者と宗教家の「あの世」


本書は、「向こう側」をキーワードに展開する。

「向こう側」とは、人間が知覚できない「存在」のことであり、この「存在」を認識しようと「こちら側」から哲学者たちがいろいろと架橋を試みたのが西洋哲学の歴史だという。

「向こう側」のことを、哲学者たちは「イデア」「物自体」「超越的世界」「背後世界」とさまざまに呼んだが、著者はハイデガーの「外的世界」が名称として一番わかりやすいという。

西洋人にとって、世界は「神域」と「この世」に二分され、「この世」にあって見えない世界が「向こう側」という複雑型。それを直観や超越によってとらえようとするのが、西洋の思考様式だという。

これに対して、日本人の思考様式は「この世」と「異界」の単純型で「向こう側」はない。

さらに、著者の専門である東洋思想の儒教的な世界観では、あの世を想定しない「この世一元論」の単細胞型で、「異界」も「向こう側」もないとしている。

「向こう側」へと超え出るには、実験と観察による科学的方法しかないという西洋哲学の考え方が、近代科学を生んだのだ。知覚できない「向こう側」を視野に入れたのは、イギリス経験主義だった。だから、イギリスで産業革命が最初に起こり、資本主義が一番発達したのだ。

本書は、徹底したドイツ観念論批判が展開されている。カントは「向こう側」との架橋に失敗し、ヘーゲルは「向こう側」は「こちら側」に内在していると大風呂敷を広げた詐欺師だという。

それでもヘーゲルが日本で人気があるのは、「頑張れば階梯を昇れる」といったところが朱子学に似ているからだという。「こちら側」の努力でえらくなれるというヘーゲルの言葉に、日本の秀才たちはうっとりしたのだ。

フッサールは「向こう側」を判断中止にした。ハイデガーは「向こう側」を否定せずに「こちら側」の優位を主張した。ニーチェは「向こう側」もろとも「こちら側」も否定した。フランス人はカトリックの伝統の中で受け止めたが一貫性がなかったと、サルトルやデリダについても容赦ない。

著者は、「論理的な哲学など見たことがない」と言い「難しく書いているので、何を言っているか読み手が易しく内容を読み解かなければならない。その読み解く過程が論理的なのだ」と言い切っている。だから、

哲学者の論理などに期待せず、一言一言ひっかかることなく、静かに寄り添うように読む、これが哲学の書物を楽しむコツである。すべての本は、著者が自分の考えをわかってほしいという、せつなる意思から書かれている。べつに真理が書かれているわけではない。(p.64)

と言い切っている。「自分の頭で考えよ」ということなのだ。



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