『ストーリーメーカー―創作のための物語論』大塚英志(アスキー新書 84)
2008-12-28

『ストーリーメーカー―創作のための物語論』大塚英志(アスキー新書 84)
なぜ人は、ストーリーを聞いたり、読んだりする「物語られる」ことや、他人にストーリーを「物語る」ことのが好きなのか。現象を時系列に並べただけの情報よりも、ストーリーとして整理された情報を欲するのか。ストーリーという「他人の妄想」を楽しむことができるのか。そうした疑問とはあまり関係はないが、本書は破綻のないストーリーを書くためのハウツー本である。
本書は、『キャラクターメーカー』の続編。「プロップの31の機能」やジョセフ・キャンベルの「ヒーローズ・ジャーニー」をストーリー作りの骨組みに利用しようというものである。
著者は、物語を展開するためのテンプレートとして、30項目の質問を用意している。この質問に答えれば、自動的にストーリーを描けるというのだが……。
もちろん、プロップやキャンベルの「物語理論」に基づいた「ストーリーメーカー」をテンプレートとして枠組みを規定し、キャラクターを当て嵌めれば、ストーリーが自動的に紡ぎ出されるわけではない。
実例として、ある教え子が書いたストーリーを紹介しているが、果たしてこの作例は最適だったのか。彼女が書いたストーリーは母娘の葛藤がテーマである。著者は、心理分析まがいの解説を試みている。しかし、読者が読みたいのは、素人のカウンセリングではない。
実生活がどうあれ彼女の書いたストーリーに矛盾や破綻がないかどうか、ストーリーメーカーではそうした瑕疵を防ぐことができるというのだが。
著者の考案したストーリーメーカーは、単純なあらすじに複雑さや登場人物に性格描写を付加するためのツールである。ストリートメーカーというよりもファンタージメーカーと呼んだ方が良いかもしれない。プロップやキャンベルの「物語理論」が元だもの当たり前か。
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