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『漢書に学ぶ「正しい戦争」』櫻田淳(朝日新書 134)

漢書に学ぶ「正しい戦争」


『漢書に学ぶ「正しい戦争」』櫻田淳(朝日新書 134)

「正しい戦争」をなぜ『漢書』に学ぶのか、という疑問は冒頭で解消される。『漢書』は2000年前に書かれたにもかかわらず、現代にも通じる軍事行動に関する分析がされているからだ。

ところで、本書でたびたび使われる「普通の国」というフレーズは、1990年代の初めに小沢一郎が使い始めたという。

1990年の湾岸戦争では、日本も国際貢献という軍事行動を求められたが、自衛隊の出動を拒否し、その代わりに総額130億ドルを支払うことになった。

ところが、1人の軍人も派遣しなかったために、憲法によって軍事行動を制限されている日本の事情が理解されずに、湾岸戦争終了時には日本の貢献が評価されなかった。小沢一郎にはそれが我慢ならなかったらしい。

その後、このフレーズは民族主義者や右翼・保守勢力によって、憲法改正(特に9条)を主張する際の根拠として使われるようになった。つまり、軍事行動を制限するような憲法をもっている日本は「普通の国」ではないから、9条を改正して「普通」にしようという文脈で使われた。

「普通の国」というフレーズには、こうした脅迫的な含意がからみついていて、すんなりとは受け入れ難い不愉快さがあった。

本書でも、「普通の国」という言葉はたびたび使われている。しかし、右翼・保守勢力の謂いではなく、国を守るための軍隊をあたかも存在しないかのようにしてきた日本という国が他の国のように軍隊を「普通」に取り扱うことを意味している。

著者は、最新鋭のイージス艦やF-15戦闘機を200機以上を備えた自衛隊を「竹光」としてきた政治状況に対して疑問を提示している。「竹光」ではなく、抜いたら人を殺せる「真剣」であるならば、「真剣」として対処しなければならないし、抜かないための対処方法を考えなければならないというのだ。

本書で、著者が「真剣」の取り扱い規範として取り上げているのが『漢書』「魏相丙吉傳」にある、匈奴に対処するために、漢帝国の帝と丞相との問答である。魏相は、匈奴討伐の「兵」を国内事情の制約という見地から諌めたという。

魏相は、「戦争や軍事行動(兵)」を5つに分類している。

1.義兵:無秩序な状況に秩序を付与することで人々を救い、秩序を破壊する暴虐な行為に制裁を加えること。
2.応兵:敵国から攻撃を仕掛けられたことによって、やむを得ずして起こすこと。
3.忿兵:些細な事で他国と争い、そして恨み、憤って我慢ができなくなった結果の行動。
4.貪兵(たんぺい):他人の土地、貨幣、財宝を利用する目的で兵を起こすこと。
5.驕兵:自国の強大さを恃み、民衆の多さを誇示し、敵国に威勢を示そうとすること。

魏相は、このうち義兵と応兵以外は、兵が滅び国が滅ぶ失策であるとしている。

そして、義兵と応兵は『漢書』が書かれてから2000年後の現代でも軍事行動に関する国際的な常識となっている。ここに、著者が『漢書』を取り上げた理由があるのだが、逆にいえば軍事行動の常識は2000年間変わっていないということになる。

著者は、国連憲章や日本国憲法第9条においても、義兵と応兵は「正しい戦争」としている。

では、日本が日中戦争から太平洋戦争へと義兵でも応兵でもない「正しくない戦争」に突き進んでしまった原因はどこにあったのか。

戦争を引き起こした責任は、政治家や軍部にあるのは当然としても、そうした政策は日清戦争以降の日本国民の帝国主義的なナショナリズムの高まりの中で醸成されたものであるのは確かである。例えば、「生命線としての満蒙」や「暴支膺懲」といった言葉が新聞を飾り、日本国民の中国に対する視線は驕慢に満ちたものだった。ドイツ国民がナチの登場を待望し、歓喜をもって迎えたのと同様に、日本国民も軍部の強大化を望み侵略行為に歓喜した。

しかし、著者が「戦後、日本の多くの人は、第二次世界大戦という理不尽な災厄を前にして、それを地震、台風、洪水のような人知の及ばない自然災害の類として語る風情を漂わせていた」(p.127)と書くように、国民一人ひとりが自らの戦争責任を回避する言い訳として、戦争を自然災害のように語っているのは確かである。

自らのもつ強力な軍隊を「竹光」のように扱い、国防については全く関知しないようにふるまうのは、戦争責任を回避するのと同様な行為なのである。

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