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昼食難民の新書生活

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『皇軍兵士の日常生活』一ノ瀬俊也(講談社現代新書 1982)

皇軍兵士の日常生活


『皇軍兵士の日常生活』一ノ瀬俊也(講談社現代新書 1982)

本書には、歴史研究の中であまり採り上げられることのなかった旧日本軍における兵士の日常生活の実態についての地道な研究の成果が書かれている。

こうした兵士の日常は、実際に従軍した人々の回想録などによって記述されてきたが、従来の歴史家がなおざりにしてきた分野に若い研究者が取り組んでいることを知って、この国の未来にわずかな光を見出だした気がした。

旧日本軍の戦略や軍政といった表向きの歴史については、数多くの研究や著作がある。しかし、本書はそうした「大文字」の歴史ではなく、それぞれの兵士が日々直面していた「私的制裁」と言い換えられた暴力や下士官と兵士での食糧の差、階級社会ゆえの学歴による差別、現役兵と応召兵の賃金の差、戦死の伝えられ方などの実態についてのディテールを、歴史書はもちろん自ら古書市場で渉猟した数多くの公文書や日記、私信といった資料を駆使して明らかにしている。

それは、「靖国の英霊」と称揚しながら、『兵士たちがいつ「英霊」になったのか、という重要な問題への取り組みがじつは極めて雑であった日本の「戦後処理」とはいったい何か』と問うことである。敗戦で軍隊が崩壊したために、兵士の生死を確認する手立てを失ったとはいえ、日本政府だけでなく、靖国神社は正確には生死を確認できない兵士さえも「英霊」として祀る、つまり生きたまま「英霊」とされた兵士がいたという極めて粗雑な対応をしている。まともな人間ならば、こんな杜撰な神社を敬うことなどできるはずもない。

軍部による暴走によって始まったアジアへの侵略を、朝日新聞をはじめとする当時のマスコミは諸手を上げて礼讚した。そうした報道によって洗脳されていたとはいえ、国民のほとんどは間違いなく侵略を支持し、それに加担していった。そうした自らが犯した暗い過去をすべて忘れ去ろうとするかのように、最近の日本では旧日本軍の犯した罪や軍隊内部の不合理で苛烈な制度について表現されることが少なくなっている。

そうした愚挙の数々をあたかも存在しなかったかのような顔をして、戦後の民主的な国家のありようを声高に批判することで言論界や政界での地位を得ようとする輩にとって、本書には絶対に認めたくない旧日本軍の恥部と日本の戦後処理の杜撰さが書かれている。

著者は、誠実な学者だから本書の「おわりに」で、こうした輩について、「戦争の時代を考えるとき一番大切なのは、その時自分だったらどうしたかを思うことではないだろうか。それができていない発言や思考法がいまの日本にはあまりに多い。」と批判するに止まる。

しかし、戦前戦中の厳しい階級社会の実態や軍部の横暴を棚上げにして、戦後民主主義批判をする輩は、頭の軽さに反比例して声がでかい。著者のこうした研究が、愚鈍な連中の戦時体制礼讚を鋭く切り裂くのだから、ぜひ声を高くして発言してほしい。


【関連書籍】
『日本軍と日本兵―米軍報告書は語る』一ノ瀬俊也


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