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『ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる』木村英紀(日経プレミアシリーズ 036)

ものつくり敗戦


『ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる木村英紀(日経プレミアシリーズ 036)

本書で著者が繰り返し指摘しているのは、機械製造からシステム開発へと大きく変貌した「ものつくり」の世界的な流れに日本が乗り遅れているということである。「モノ」から「コト」への生産転換である。

1930年代に大量生産と大量消費が始まると、従来の自然科学では克服できない「不確かさ」「複雑さ」「情報」を解決するための科学が必要となった。人工物を対象とする科学である。これを著者は「第三の科学革命」と呼ぶ。制御工学やオペレーション・リサーチ、ネットワーク理論、デジタル計算機を生んだ科学技術である。

大量生産、大量消費によって技術の普遍化の流れの種がまかれ、第三の科学革命が一挙に加速した。熟練の役割は次第に切り詰められ、手順を踏みさえすれば誰でも一定レベルの製品を作れるほどにものつくりの現場は進化してきた。

ところが、日本のものつくりは、明治期の殖産興業と戦後復興期に、欧米の技術にキャッチアップしようとした際に、資本集約型の工業化ができなかったため、労働集約型で乗り切った成功体験に支配されている。そのため、日本の工業生産には「匠」の技術に依存する部分が少なくない。匠の技術は「暗黙知」によるところが多く、習得するまで何年もの時間を要する。しかし、わずか数年で台湾や中国に追い越されたパソコン生産のように、部品が標準化・普遍化した現在の工業生産では、日本の労働集約型工業生産が他国に対してメリットをもっているわけではない。つまり、欧米では1930年代から進行している「第三の科学革命」に対して、日本型ものつくりは太刀打ちできないところまできているというのだ。

日本が「匠」や「技」といった暗黙知の継承を自賛している間に、普遍化した部品・技術による形式知でたいていのモノは製造できるようになっているからだ。中国の自動車工場に行くと、各ラインに木槌が置いてあって部品がうまく挿入できないときは、木槌でトントン叩いて無理矢理押し込める、と誰かが嘲笑していた。しかし、部品をトントン叩こうが10年も走れば自動車としては合格だ。その程度のことで安いならば、人民はトントン叩いて作った車を買う。

2008年の春以来、ノートパソコン市場を席巻しているネットブックだって、どうせパソコンは4、5年の寿命なんだから機能がそれほど劣らないならば安いモノで十分だ、と考えて日本の消費者の多くが支持したのは間違いない。「アジアの諸国の追い上げは、すでに七十年以上も前に第三の科学革命によって約束されたことだったのである。」(p.217)

折しも、2009年5月14日、次世代スーパーコンピュータ「京速計算機」プロジェクトからNECと日立製作所が撤退する、というニュースが流れた。2年後の実現を目指していた国家プロジェクトから、演算部の開発を担当していたNECが撤退してしまうという話に、この国の科学技術政策はどうなっているのかと驚くばかりだ。

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