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昼食難民の新書生活

(新宿・秋葉原・芝浦など各地でのランチと読書)

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『琵琶法師―〈異界〉を語る人びと』兵藤裕己(岩波新書 1184)

琵琶法師



『琵琶法師―〈異界〉を語る人びと兵藤裕己(岩波新書 1184)


本書は、漂白の芸能民であり宗教者でもあった盲目の琵琶法師について、その起源から演目の「平家物語」成立の経緯、演奏技法の変遷、そして最後の琵琶法師と呼ばれた山鹿良之の人生まで幅広く紹介している。新書では初めてのDVD付きだ。

中世の盲人芸能者である琵琶法師は、平家物語はもとより、死霊のたたりが恐れられた曽我兄弟や源義経の物語も担った。死者たちの語りである見えないモノのざわめきに声を与えるモノ語りは、盲人のシャーマニックな職能であった。著者は、語り手がさまざまなペルソナに転移していく、モノ語りは近代的な意味の「表現」ではありえない、という。

本書では、盲目という身体の刻印をもった琵琶法師の聖性、権力への接近と組織化、そして近世以降の姿まで時代を追って、琵琶法師の実体を明らかにしている。


ところで、ヨーロッパでロマ(ジプシー)と呼ばれている遍歴の芸能民は、インド北部のラージャスターン地方にその起源があるという。

ずいぶん昔のことになるが、インドのラージャスターン州の州都ジャイプルから砂漠の城塞都市ジャイサルメールまで路線バスで移動したことがある。そのバスに、ジャイプル近くの小さな村で運転手と交渉して無賃乗車を勝ち取った少年が乗り込んできた。

彼の荷物は、筒状に巻いて両端を1本の紐で結んで肩に掛けた薄い毛布と胡弓のような弦楽器だけだった。小さな少年は、彼の祖先が千年以上にわたって生きてきた遍歴の芸能民のライフスタイルのままに糧を得ているのだった。

バスが動き出すと、12歳ほど少年はダッシュボードに腰を掛けて演奏を始めた。人間カーステレオといったところだった。弦楽器で悲しい旋律を奏でながら、喉を絞るように歌う少年の声は乗客たちを魅了し続けた。その楽曲は、それまでインドで耳にした流行歌とは全く異なる旋律だった。演目をリクエストする客もいたので、彼が歌ったのは民謡の類いだったのかもしれない。

気温が40度を超えていたので、熱風を避けるために窓を開けられない熱気の籠もった車内に、涼風をもたらすかのように少年の歌はいつまでも続いた。

1時間ほど経って少年が休憩した際に、近くに座っていた欧米人の女性がチップを渡そうとした。小額紙幣がなかったのか、あるいは少年の演奏に感動したからか、50ルピー(当時のお金で1000円程度)ほどを渡そうとすると、男性車掌がだめだという。少年のチップとしては高額すぎるというのが理由だった。当時は1ルピーでサムズアップコーラというインドのコーラ250ml瓶1本や椰子の実1個が買えたし、安食堂ならばマトンカレーとチャパティ数枚で3ルピーほどだったから、50ルピーはなかなかの金額だった。

かといってインド人乗客たちが払っていた25パイサ(5円)や50パイサでは少なすぎると思ったので、私は10ルピーを払った。それほど感動的な演奏だった。少年は2時間ほどの演奏で、数日間の糊口をしのぐには十分すぎる稼ぎを得てバスを降りて行った。

その後、インド各地で数多くの漂白の芸能民に出会ったが、残念ながらこの時の少年ほど見事な歌や演奏を聞くことはできなかった。



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昼食時は「難民」と化して「新書」を片手に、都内各地を彷徨っています。

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