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昼食難民の新書生活

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『世界は分けてもわからない』福岡伸一(講談社現代新書 2000)

世界は分けてもわからない


『世界は分けてもわからない』福岡伸一(講談社現代新書 2000)

本書は講談社のPR誌『図書』に連載されたエッセイをまとめたもの。

論理的で明晰でありながら美しい文章で、各章が「分けてもわからない」をテーマに書かれている。

例えば、我々が器官や身体の一部だと認識しているものが、単なる分節は意味をなさない関係性や動的平衡の中でたゆたうように存在していることを明らかにしている。

鼻はどこからどこまでが鼻なのか。嗅覚をつかさどる機能を切り出そうとすると、顔中央の突起物から嗅上皮へ、そして神経線維から嗅球と奥へと深度を深めることになり、神経経路から運動器官まで切り刻むことになる。

ここで著者は、臓器移植に疑問を呈している。臓器移植というのは、臓器を身体の部品であるとする立場だからだ。人間の身体を自動車のようにパーツに分けて再利用することは本当に可能なのか。

たとえ移植が成功しても、身体は移植された臓器を〈異物〉として攻撃するため、免疫機能を薬物で無理やり抑えながら生きることになる。

生命は臓器に、臓器は組織に、組織は細胞に分けられる。さらに生命を分けていくと、タンパク質、脂質、糖質、核酸などのパーツに分解できる。タンパク質を分けていくと、その構成単位であるアミノ酸に分解できる。化学物質が組み合わさると動き出し、代謝し、生殖で子孫を増やす。意識や感情が生まれ、思考までする。全体は、部分の総和以上のものなのだ。

世界は分けてもわからないのである。

第8章からは、世界で最も有名なコーネル大学生物科学部の生化学研究室を舞台に描かれている。研究室のボスは、世界で最も有名な生化学者エフレイム・ラッカー。世界中から集まった秀才たちが、ラッカーの厳しい指導の下に消費されていく研究室の実態が描かれる。

そこに、マーク・スペクターという天才が現れ、ラッカーが想定したリン酸化酵素が次から次にスイッチとなる発がんメカニズムをだれにも真似のできない繊細かつ大胆な実験によって証明する。スペクターとラッカーは、短期間にリン酸化カスケードによるガンの発生メカニズムを解明する。

ところが、だれにも真似のできないスペクターの実験は、ラッカーが考えた発がんメカニズムの理想的な結果に合わせて偽装されたものであることが明らかになり、スペクターは大学から追放される。

皮肉なことに、ラッカーが想定していた細胞の分裂を制御するリン酸化酵素が発見され、発がんメカニズムに関与するリン酸化カスケードも実在していることが証明される。しかし、その後の研究で発がんに関係する酵素は数百種類も発見され、それぞれの関係もカスケード(小滝)のような一方通行のものではなく、複雑に絡み合った動的平衡にあることが明らかになる。

著者は言う。世界のあらゆる要素は、互いに連関し、すべてが一対多の関係でつながりあっている。世界に部分はない。部分と呼び、部分として切り出せるものもない。そこには、輪郭線もボーダーも存在しない。

それでも、世界は分けないことにはわからない。だから、著者は世界を分ける仕事を続けているのだ。

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