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昼食難民の新書生活

(新宿・秋葉原・芝浦など各地でのランチと読書)

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『学問の春―〈知と遊び〉の10講義』山口昌男(平凡社新書 479)

学問の春


『学問の春―〈知と遊び〉の10講義山口昌男(平凡社新書 479)

ずいぶん前のことになるが、新宿ゴールデン街のある店で終電過ぎまで飲んでいると、白髪の男性を先頭に背広姿の中年4人連れが入店して来た。

白髪1人だけがキャッキャキャッキャと陽気に話続け、残りの3人は調子を合わせるかのように笑っていた。しばらくして、白髪が「ちょっと行ってくるね」と別の店に出掛けた途端、残された背広達の口から罵詈雑言があふれ出した。
「いい気なもんだ」
「山口のヤロー!」
「ふざけやがって」
山口という名前を聞いて思い出した。1人ではしゃいでいた白髪はこの本の著者、山口昌男だったのだ。ほんの10分ほどで、山口が店に戻ってくると、背広達は打って変わってお追従を始めた。
「先生、さすがですね」
山口は再び1人ではしゃぎ始めた。『道化の民俗学』の著者本人がトリックスターを演じる、言動一致ぶりというか実践躬行ぶりにちょっとだけ感動し、ちょっとだけ呆れたのをよく覚えている。

本書は、著者が札幌大学で行った「文化学総論」の講義録である。「ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』を読む」と題された講義は13回にわたって開講され、長年の研究やフィールドワークで得た知見を惜しみ無く語っている。

冒頭でインドネシアのブル島における「インガ・フカ」という交唱歌の習俗について書かれている。日本にも歌垣という交唱歌の風習があった。『万葉集』には、常陸国の筑波山の麓で男女が2つのグループに別れて恋愛の掛け合いの歌をする風習があったと書かれている。

掛け合いや即興歌ではないが、現代の若者たちが毎夜カラオケ店で歌を披露し合っているのもある種の歌垣ではないか。

子供の遊びにはないちもんめがある。男女は入り交じるが2つのグループが好ましい人を交互に取り合うゲームである。

講義ノートによれば、山口の初期論文の『未開社会における歌謡』では「交唱歌」というテーマで古代日本の記紀歌謡からインドネシアの儀礼的な掛け合い歌まで、人間の内面に変化を促すマジカルな力を有する点を指摘し、儀礼歌の成立する場における即興と交唱性の特徴を解説しているという。

「第7講 文化は危機に直面する技術」は、ウンベルト・エーコの「文化の創造性というのは元々、危機を排除するのではなく危機に直面する技術である」という言葉による。

危機は、危険なことがどこから降って湧いてくることではなく、一貫性や体系性を備えているようなふりをしている組織や制度が、潜在的に抱えている危機が表面化することだという。「危機というのは文化のそこに潜在的に潜んでいるものである。そういう内にある危機にあえて直面するすることによって、人間でも文化でも、今度は外から現れてくる危機に柔軟に対応する能力を身につけていく」というのだ。

圧巻は、第8講と第9講のポトラッチについての講義。『ホモ・ルーデンス』を超えて社会活動の広範な原理を明らかにしている。

碩学による講義を受講できた学生たちが羨ましい。


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