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『関係する女 所有する男』斎藤環(講談社現代新書 2008)

関係する女 所有する男


『関係する女 所有する男』斎藤環(講談社現代新書 2008)


本書は精神分析によるジェンダー論である。

男は所有を追求し、女は関係を欲する、というのが著者が主張するジェンダーの差異である。確かに、さまざまなモノに執着して収集する「コレクター」の多くは男性であり、血液型や星座といった人間を単純に類型化する概念で他人との関係性を推し量ろうとするのは女性が多い。

著者は、「セックスそのものがジェンダー化されたカテゴリーである」とするジュディス・バトラーのジェンダー論を支持している。ジェンダー概念がまず存在しなければ、自分の性別すらも認識できないからだ。バトラーはジェンダーを行為(パフォーマンス)であると考えた。行為の数だけ、ジェンダーは存在する。

ジェンダーに対する態度として、著者が認めているのは「ジェンダー・センシティブ」という概念である。ジェンダーにまったく注意を払わない立場や、ジェンダーこそが唯一重要なことなのだとする立場ではない第三の道だ。具体的には、ジェンダーを固定的な枠組みとは捉えず、メタレベルに立って、ジェンダーにかかわる理論やその過程を問題にする手続きのありようだという。

ジェンダー・センシティブという立場は、差別につながりうるカテゴリーをただ消去するのではなく、そのカテゴリーの重要性を尊重しながら、カテゴリーが及ぼす作用を注意深く観察し調整していこうという立場である。

「男は所有、女は関係」という発想は、おたく論をきっかけに展開したものだという。著書『戦闘美少女の精神分析』を発表して以来、著者はおたく精神分析の専門家とみなされるようになったが、「おたく」を分析することで「所有」を、おたくの女性版である「腐女子」やその前身である「やおい」を分析することで「関係」を求めるところに特徴を見出したのである。

少年ものの漫画作品において、男同士の友情や確執といった関係性が描かれたとして、腐女子が熱く注目するのはそこに描かれた微妙なしぐさや視線、せりふ等の断片から、こうした関係性から恋愛すなわちホモセクシャルな関係性の位相に変換する「位相萌え」が「やおい」の普遍的テーマである。

男性は対象を欲望するさい、自らのポジションを定めることがどうしても必要となる。(略)ファルスの位置と方向性が定まらなければ、男性は自ら欲するものとすらまともに向き合えないのだ。(p.156)

第6章までは、説得力のある記述が続く。ところが終章になると、硬質な記述に変わる。去勢コンプレックスに関する解説は、それまでの記述と異なり、まるでフロイトの著作からの引用のように理念的になる。そもそも去勢コンプレックスでジェンダーを説明するには無理があるのだ。男性しか説明できないのだから。

最後に、自らの体験を例に挙げて所有原理と関係原理の違いをわかりやすく説明している。ある日、6個入りの胡麻団子をお土産に持ち帰り、妻が3個食べて自分は1個だけ食べて、残りをラップに包んで妻が冷蔵庫にしまった。翌日、著者が小腹が空いたので残りの2個を食べたところ、それを知った妻が大変な剣幕で怒ったというのだ。所有原理は団子6個を等分して3個ずつに分けて「3個は自分の分」と考えるが、関係原理では目の前の6個を半分ずつにしようと考え、翌日の2個も1個ずつに半分にしようと考える。所有よりも「今の関係」を優先するのが自然な発想だからだ。

そして、著者は人間は「生物としての性」「ジェンダー」「所有と関係の欲望原理」という異なる階層によって理解すべきではないかという。さらに、男や女という生物学的な性差でもなく、ジェンダーという概念に分けるのではなく、所有原理と関係原理のどちらに従っているかで分けるべきではないかというのだ。


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