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昼食難民の新書生活

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『煩悩の文法』定延利之(ちくま新書)

煩悩の文法


『煩悩の文法―体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話定延利之(ちくま新書)


今こうして書いている文章は、二葉亭四迷が『浮雲』で始めた言文一致体によるものだ。しかし、「くたばってしめー」と罵倒された偉人の功績とは関係なく、日本語の会話はこうして書いている文章とほぼ同じスタイル・構造でずっと昔から続いている。

「談話語用論」の考え方では、会話の中で繰り返し現れる単語列が、やがて文型という文法的な存在へと昇華し、私たちがしゃべるたびに、単語どうしがパターンに近づき、少しだけ文法化する、とする。つまり、現代日本語文法などという安定した「文法」、確固とした「文法規則」はフィクションでしかない、というものだが、これに対して、著者は「なにか腑に落ちないというか、さびしい思いがする」と述べている。

つまり、「体験談を聞いてほしい」「体験談の語り手として振る舞いたい」という自分に執着する気持ち、つまり「煩悩」が、単語列の出現頻度では割り切れない「文法」の中にある、という。

1.四色ボールペン、北京にありましたよ
2.四色ボールペン、北京でありましたよ

1の文とはニュアンスが違うが2の文も不自然ではない。それは一般的な「知識の文法」とは別に「体験の文法」があるからだという。

知識の文法規則1:モノの存在場所を表すことばには「に」を付ける。デキゴトの存在場所を表すことばには「で」を付ける。
知識の文法規則2:状態はデキゴトではない。

体験の文法規則1:モノの存在場所を表すことばには「に」を付ける。デキゴトの存在場所を表すことばには「で」を付ける。
体験の文法規則2:状態は体験者の人生の一部であり、したがってデキゴトである。
体験の文法規則3:それなりに面白い体験でなければならない。

ここでいう「体験」には、ワクワク型とヒリヒリ型の2つがある。
ワクワク型の体験とは、ある領域を問題意識を持って、ときには課題解決のために探索する冒険譚である。探索領域が未知であるほど面白い。

一方、ヒリヒリ型の体験とは、環境に対して働きかけ、環境から理屈抜き、否応無しの強烈な情報を受け取る「体感」のこと。つまり、「うまい」「痛い」「眩しい」といったむきだしの感覚体験のことである。

話し手は、発話内容や状況に応じて、時間軸のいずれかの時点を選び、そこを通じて情報にアクセスする、という「情報のアクセスポイント」、条件文では、条件節と帰結節でそれぞれデキゴトが語られるのが原則など、ふだん文法を全く意識せずに話している日本語が、実は極めて複雑な規則をもっていることが書かれている。

本書は、著者が学会誌等に発表した論文を一般向けに書き直したものであるという。こんなに基本的な文法の研究が、最新の研究であることに驚く。日本語の文法はまだまだ未開の地なのだ。

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