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『マグネシウム文明論―石油に代わる新エネルギー資源』矢部孝・山路達也(PHP新書 641)

マグネシウム文明論


『マグネシウム文明論―石油に代わる新エネルギー資源矢部孝・山路達也(PHP新書 641)

本書は、マグネシウムをエネルギー源として環境負荷の少ないマグネシウム循環社会を作る研究のレポートである。
「本当か?」と何度も眉に唾をつけながら読みたくなるほど驚きの内容だ。

矢部の考えるマグネシウム循環社会の仕組みはこうだ。

 (1)太陽熱を利用した淡水化装置で、海水から塩化マグネシウムを取り出す。
 (2)熱を加えて、塩化マグネシウムを酸化マグネシウムにする。
 (3)太陽光励起レーザーで、酸化マグネシウムを金属マグネシウムに製錬する。
 (4)マグネシウム空気電池を交通機関や発電所などの燃料として利用する。
 (5)燃料として利用した後は、酸化マグネシウムが残る。
 (6)(3)へ戻り、酸化マグネシウムを再び太陽光励起レーザーで金属マグネシウムに製錬する。

なぜ他の金属ではなくマグネシウムをエネルギー源とするのか。海水1キログラム中に、塩素は19.35g、ナトリウム10.77g、マグネシウム1.29g、硫黄0.904g、カルシウム0.412g、カリウム0.391g……となっていて、マグネシウムの含有量が多いからだ。含有量の多いナトリウムも燃料になり得るが、常温の空気中ですぐに発火するなど安定性に欠けるため利用しにくい。また、すでにリチウムイオン電池として使われているリチウムは、海水1キログラム中たった0.00017gとマグネシウムの1万分の1しか含まれていないため、地下埋蔵量1100万トンだけでは主要なエネルギー源として使用するのは不可能なのだ。これに対して全海水中に含まれるマグネシウムは1800兆トンと桁違いに多いため、現在の全エネルギーをマグネシウムで賄うとしても10万年分の量があることになる。

「太陽光励起レーザー」って何だ。クロム-ネオジムYAGレーザー媒質によって、太陽光を光源にして発生させるレーザーのことである。実験室では42%、自然光では20%の変換比率で、太陽光からエネルギーを取り出すことができる。現在のレーザー発生装置の出力は80ワットだが、間もなく400ワットの装置が完成する。

「マグネシウム空気電池」って何だ。マグネシウムを直径2ミリほどの粒状にして、それが酸化することで発電する装置のことであり、マグネシウムをカートリッジ式の電極として使用する。カートリッジは安全なのでコンビニなどどこでも販売・回収できるため、ガソリンスタンドのような施設は不要になる。

まるで夢のような研究だが、すでに矢部は企業化して実用実験を始めているという。矢部が東工大教授でなければ「トンデモ」研究として一笑に付したいところだが、どうやらかなり実現性のある話らしい。それどころか、もしかしたら世界を大きく変える大発明なのかもしれない。「マグネシウム文明論」という大袈裟なタイトルを使いたくなるほど、インパクトのある研究なのである。

本書は、著者名が矢部孝と山路達也の併記になっているが、研究者は東京工業大学教授の矢部孝で、本書を実際に執筆したのはテクニカルライターの山路達也。しかし、本文で「私」という一人称で語っているのは矢部教授である。つまり、本書は口述筆記なのだから山路はゴーストライターということになるのだが、なぜか名前も顔も出している。本来は、矢部が執筆すべきであるところだが、書けない事情があって山路が執筆したということらしい。

本筋ではないが、本書で日本の淡水化装置がオーバースペックのために、海外では価格競争に破れていることについて触れているので、オーバースペックについて書いてみたい。

数年前に日本のあるメーカーが電力設備の新製品を開発した。新たな設計思想に基づいて原材料を一新し、大きさも従来品の数分の1に小さくなった画期的な製品だった。営業担当者がその新製品を電力会社に勇躍として持ち込んだところ、「ウチは30年間の使用に耐えるモノしか扱わないから、30年後にもう一度来てください」と言われたという。インフラ設備にかかわる製品だからライフサイクルが短くては困るというのはわかる。しかし、30年間の使用に耐えることが証明されなければ採用しないというのであれば、30年前の技術しか採用しないということになる。こうしてなかなか日の目を見ない画期的な製品があるのだろう。

画期的な電力設備製品はどうなったか。電力会社ではなく変電設備メーカーに採用されたことで、それに接続する電力会社側も採用せざるを得なくなったという。そして、その製品は中国の電力設備では大量に採用されているらしい。

長年の使用に耐える製品を作ることは大切だが、求められている以上の仕様を付加したところで、価格が高ければ誰も買わない。特に海外ではオーバースペックはごく一部の金持ちにしか評価されないのだ。

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