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昼食難民の新書生活

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『しつこさの精神病理―江戸の仇をアラスカで討つ人』春日武彦(角川oneテーマ21 C-181)

しつこさの精神病理


『しつこさの精神病理―江戸の仇をアラスカで討つ人春日武彦(角川oneテーマ21 C-181)

本書は文芸誌『野生時代』に連載したエッセイをまとめたもの。帯に「恨みと復讐の念に苦しむ人へ」とあるように、恨みや復讐心を抱くに至った不快な形の無力感に苛まれる人々の心が、呪縛されていくありようを小説や事例を挙げて詳しく書いている。

これまで著者の精神科学に関する一般向け書籍を何冊か読んできたが、本書は、緊張感のある文体、明晰でクリアカットな論理展開、小説の登場人物の精神分析、どれを取っても最上のものといえる。この人は文章を書くのがこんなに上手かったのかと驚きながら読み進め、面白さに時間を忘れ一気に読了した。

著者は、子供のころから「終わりがない、永遠に、といったパターン」が根源的に怖いという。世の中に「際限のない」事物が存在していると思うだけで、ひどく落ち着かない気持ちになるのだ。際限なく繰り返される執拗さが、恐怖を呼び起こすのだ。

インターネットの掲示板の世界では、同じ文章を何度も書き込んだり、他人にとっては取るに足らないテーマで繰り返し書き込みを行う“粘着”と呼ばれる人々がいる。もちろん他人に嫌われる行為であることは十分に認識した上で、他人が嫌がるのを楽しんでいる人がいる。“粘着”と呼ばれるのは、彼らが際限なく執拗に同じか書き込みを繰り返してアップするからだ。

恨みや執念に属するような事柄はどれもこれも紋切り型である。どこか手垢のついたような安っぽさがあり、目新しさユニークさとは無縁である。

確かに、“粘着”は他人をうんざりさせはするが独創性とは無縁な紋切り型の書き込みを繰り返してアップする。

リアルだが繊細な妄想なんてものは、そう長くは脳内に根を下ろせない。馬鹿げているなりにマンガないし通俗小説的なイメージのほうが『丈夫で長持ち』するのである。

恋愛妄想とストーカー(ストーキング)の比較が面白い。両者はともにコミュニケーション能力に失調を来たしている人物が陥るが、恋愛妄想の人は恵まれない環境に耐えられずにファンタジーを生み出し、そのファンタジーに自ら主演することで注目を集めようとしたり、現実から逃避しようとする。数十年にわたって同じファンタジーの中で生きる場合もある。一方、ストーカーはプライドを傷つけられたことから、自己愛の修復のために復讐を繰り返す人々である。

著者は、復讐しようとする人の心理をこう描いている。

恨みは晴らさなければ負け犬になってしまうのか、それとも拘泥すること自体が自身の敗北を意味するのか。恨みがましいことは人間の品性において劣ることなのか、そうだとしたら加害者の品性はどのようなことになるのか。

最後に、「第六章 心の安らぎはどこにあるか」では、結局のところ復讐は自分を貶める行為であり、われわれは恨みがましい気持ちをしつこく抱き続けたり、復讐を微に入り細を穿ち空想せずにはいられない存在であることを認めよという。そして、恨みを深く抱いたり、復讐を誓いたくなったら「苦笑」で対処せよと書いている。

理不尽な状況に陥り、釈然としない気持ちになったときには、子供にはできない「苦笑」を交えつつ眺めるのが、「大人」で「現実的」な対応なのである。


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