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『ニワトリ 愛を独り占めにした鳥』遠藤秀紀(光文社新書 445)

ニワトリ 愛を独り占めにした鳥


『ニワトリ 愛を独り占めにした鳥』遠藤秀紀(光文社新書 445)

統計によると、日本人は1年間に豚肉20キロ、牛肉10キロを食べている。そして、鳥肉は15キロ食べているという。鶏卵はパンやめん類などさまざまな加工食品の材料となっており、卵料理や卵かけご飯は食べなくとも、私たちは毎日欠かさず卵を食べていることになる。

第1章の章題は「なぜ人はニワトリを愛でるのか」だが、「愛でる」は愛玩するという意味ではない。大量に飼育され食料になっている優秀な家禽であるという意味だ。

著者は、卵用鶏の白色レグホンは初産を向かえる160日目まで97%が生存する、と書いた後で「この数字を満たせない脆弱な血筋はすでに淘汰されているのだ」と続けている。育種というより有用な鶏の品種を残す作業の中で、より丈夫な鶏を作ろうとする努力を「淘汰」という言葉で表現するのはどういう考えなのだろうか。

また、肉用鶏の白色プリマスロックは孵化後8週目の体重が2.8キロに達して、出荷が開始され、遅くとも10週目までにはすべて出荷される。飼い続けたとしても30週目で体重増加はほぼ止まり、3キロ半ばに収まる。50日で最大体重の3分の2に達する「経済性」はもちろん鳥としての成長カーブを逸脱したものだ。

著者は、こうした養鶏の経済主義には不満のようである。ニワトリの大量生産と大量消費にはかかせない経済的合理主義を皮肉たっぷりに揶揄する文章がちりばめられている。

第2章からは、ニワトリの原種であるセキショクヤケイの解説が続く。ベトナム・ラオス・カンボジア・タイ・マレーシア・ビルマ・インドなどインドシナ地域に現在も生息するセキショクヤケイは、紀元前6000年ごろに家禽化され世界中のニワトリの元になったという。

セキショクヤケイは、飼育が難しく成長も遅いために他の鳥よりも経済性が低かったにもかかわらず、家禽の主役になった。著者はセキショクヤケイが家禽化された理由を祭祀占い用・闘鶏・時計などと推察している。なかでも、闘鶏目的がもっとも説得力がある。闘鶏用のニワトリは大型で背が高く、大きな脚を持っている。発達した後肢は、大量の肉が採れることを意味しているのだ。

続いて、白色レグホンや白色プリマスロックが生み出されるまでのニワトリの育種の歴史が語られるが、歴史的な文献も少なくつい70年ほど前の履歴さえもはっきりしないようだ。

そして、日本の長尾鶏やチャボ(矮鶏)、軍鶏など愛玩動物としてのニワトリが語られる。ようやく、ニワトリが愛でられた話になるが、これも土佐藩で長尾鶏や矮鶏、軍鶏が飼育された歴史が語られる程度である。著者はしきりにニワトリを飼って交配をした人々の情熱を「心のエネルギー」と書いているが、その心のありようの具体的な姿は描けていない。

ニワトリのことではないが、気になったことを書く。第1章で、あたかもイスラム教徒が豚肉を食べない理由をサナダムシの感染を防ぐためであるかのように書いているが、これは結果としてサナダムシの感染を防いできたというだけである。イスラム教が豚肉を食べることを禁じたのは、牛や羊と違って、豚の飼育には人間の口に入るべき穀物が必要だったからである。ドイツやスペインなどヨーロッパの豚は、現在でも秋には森に放たれドングリをたっぷり食べて太る。ドングリのない中東やアラビアで豚を飼育するには、人間が食べる麦を与えるしかなかったから、イスラム教だけでなくユダヤ教も豚肉を食べることを禁じているのだ。

本書の最大の問題はとても読みにくい文章が続くところだ。ニワトリを擬人化した表現はまだしも、くだらない比喩が多すぎて、ニワトリの情報ではなく比喩の意味を考えるのに無駄な時間を取られて思考が止まってしまう。著者には、比喩を多用することが心地よいのだろうが、つまらない譬え話や紋切り型の換喩に辟易しながら読み進めた。名調子になっても夾雑物はノイズでしかないからだ。

無意味に屈折した文章を書いて、情報をストレートに伝えようとしないのにはもちろん理由があるはずだ。著者が権威主義に堕しているからだろう。

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コメント

ニワトリ 愛を独り占めにした鳥の著者遠藤秀紀です

「ニワトリ 愛を独り占めにした鳥」(光文社新書)の著者、遠藤秀紀と申します。ずいぶん時間がたってしまいましたが、ご感想を拝見しました。拙著に関心をもってくださって感謝します。ニワトリの世界を楽しんでいただけましたでしょうか。仰る通り、少し前の時代でも、家畜家禽のことは資料が少なくて謎だらけです。この先も家禽や家畜に親しんでくださいますと、私も嬉しく思います。「東大夢教授」(リトルモア)という本を出しました。こちらは学究生活を物語調で描いたものです。お時間ありましたら、どうぞご覧ください。

Re: ニワトリ 愛を独り占めにした鳥の著者遠藤秀紀です

遠藤秀紀先生、わざわざこんな路地裏の張り紙のようなブログをご覧いただき恐縮至極です。

昨年、カレン族の友人たちとタイ北部の山を歩いていたときに、キジバトくらいの鳥がヤブの中を素早く歩くのを見ました。ご著書を読んでいたので、「もしかしたらセキショクヤケイ?」と一瞬考えましたが、残念ながら優秀な狩猟民族の彼らでも道具なしでは捕まえられませんでした。

最近は、タイでもすっかりブロイラーが普及して鶏肉は安くなりましたが、かつてのように筋張って肉が少ないけど美味しい鶏肉には出会えなくなってしまいました。カレン族の村ですら販売用のニワトリの餌はトウモロコシです。

ご近著もぜひ読んでみたいと思います。

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