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『クラウド時代と〈クール革命〉』角川歴彦(角川oneテーマ21 A-112)

クラウド時代と〈クール革命〉


『クラウド時代と〈クール革命〉』角川歴彦(角川oneテーマ21 A-112)


著者は、今や急速なITの進歩と情報環境の変化が「知」のグローバリゼーションを加速し、その集大成「クラウド・コンピューティング」によって、2014年に日本の産業構造は大激変するだろう、と大胆な予想をしている。

サブプライムローンの破綻に端を発した世界同時不況は「100年に1度」の危機といわれているが、われわれは550年に1度の大転換期を向かえているという。グーテンベルクは、1447年に活版印刷技術を確立して旧約・新約聖書を印刷したといわれる。日本でパソコンとインターネットが一気に普及したのは1996年のWindows95発売だったが、情報が電気信号に替わったことで、紙という媒体に固定されてきたグーテンベルク以来の活字文化は大きく変化した。ところが、従来の活字文化によって富を独占してきたグループは、レジーム・シフトをまだ認識していない。

新聞人や出版人の活字信仰はさらに深刻で、知識を独占してきた特権意識の呪縛にとらわれているためだ。500年間にわたってそれらを支えてきたグーテンベルクの印刷技術は、賞味期限がきて陳腐化しているのだ。

しかし、本書では触れていないが、日本は電子書籍がなかなか普及していない。それは、電子書籍が安くないからだ。紙・印刷・製本加工・輸送・倉庫とさまざまな費用が必要な紙の書籍に比べ、電子書籍ならばそうした費用はかからないのだから、半分以下にすべきなのに、価格差は数十円から100〜200円程度しかないからだ。著者が会長を務める角川グループの電子書籍も決して安くなっていない。

著者は、高度なIT化が進む中で社会のさまざまな場面で大衆が参加し、大衆の嗜好や意思が社会を動かす機会が増えている現象を「クール革命」と呼んでいる。「クール」とは、日本のサブカルチャーを指す言葉として珍妙な愛国心とともに使われた、日本政府による対外文化宣伝・ 輸出政策である「クール・ジャパン」のクールである。

「クール・ジャパン」といえば、2006年4月からNHK-BSで放送している、鴻上尚史が司会の「COOL JAPAN ~発掘!カッコイイ日本~」がある。日本の文化を来日間もない外国人の視点で「クール」か「クールじゃないか」を判定するものだが、ほとんどの外国人が「クール」と答えるユルイ番組だ。基本的には、目をキラキラさせながら“日本が大好きです”と言うような外国人を集めているため、日本の文化は何でも「クール」となることが多い。日本が好きであるいは日本で勉強するために来ている外国人を集めているということもあるし、来日間もない外国人が日本の文化を悪しざまに評価すれば、日本に滞在しにくくなるから「クールじゃない」とは言いにくいだろう。日本人から見れば、ごく当たり前だったり、古臭いと感じるものや風習にも「クール」と反応する外国人達を見ていると、面映いだけでなく、「クール」が強要されているようにも思えて、なにやら背筋に冷たいものを感じることが少なくない。

続いて、第四章ではアップルとグーグル、アマゾンの成功を分析している。

アップルは、iPodというハードウェアを開発し、iTuneというアプリケーションでパソコンと接続できるようにして、iTuneStoreという配信プラットフォームを提供して課金までを一括して支配し、コンテンツホルダーを呼び込み、そこに顧客を囲い込んだ。垂直統合による「ハイブリッド型」のビジネスモデルだ。Napsterという音楽交換ソフトの出現で、ネットワークによる著作権侵害が深刻化する中で、瞬く間にデジタル音楽ソフトの寡占状態を築き上げた。実は日本でもiTuneStoreよりもずっと早くから音楽配信サービスが始まったいたにもかかわらず、すべてのレコード会社を統合するストアがなかったために、欲しい音楽ソフトを探すのが面倒だったため、本格化せずに終わっていたのだ。家電メーカーとレコード会社の連携もうまくいっていなかった。

本書を読んでいて、もはや死語になった「Web2.0」という言葉が出てきたときには噴飯物だった。Web2.0はティム・オライリーによって提唱された概念で、狭義には「旧来は情報の送り手と受け手が固定され送り手から受け手への一方的な流れであった状態が、送り手と受け手が流動化し誰でもがウェブを通して情報を発信できるように変化したwebの利用状態のこと」だという。しかし、Webが新たな段階に入ったから「1.0」ではなく「2.0」というネーミングは安易だし、定義も厳密ではなかったため、すっかり手垢のついた言葉に成り下がった「Web2.0」をいまだに使う人がいるとは思わなかった。「Docomo2.0」という言葉がテレビCMに使われたあたりで、「2.0」はパロディ以外には使えない表現になっている。

本書のもう1つのキーワードであるクラウド・コンピューティングは、2006年にGoogleのCEOであるエリック・シュミットが読んだのが最初とされる。しかし、ネットワークの概念図には昔から「雲(クラウド)」のイラストが使われていたのでシュミットの造語というわけではないだろう。「コンピュータ処理をネットワーク経由でサービスの形で提供する」という形態自体は古くからあり、1960年代からのデータセンター利用(遠隔からのCPU使用時間課金)、1980年代のVANの利用形態としても提唱された。1991年頃からのインターネットをベースとしたASP、更にはSaaSともほぼ同じ内容である。 一般的には、クラウドコンピューティング上で提供されるソフトウェアをSaaSと呼ばれるようになってきた。

最終章では、国家プロジェクトとして巨大なデータセンターの設立を提言している。イースト・クラウドという意味で「東雲」と名付けたプロジェクトは、北海道に東京ドーム数個分の敷地に数十万台のサーバを備えた情報処理工場を作るもので、年金情報や納税をはじめ国民のさまざまな情報を一括で処理するというものだ。安全保障上、国民の情報を外国企業に任せるわけにはいかないから、巨大データセンターの設立は国家戦略として喫緊の課題である、ということらしい。国家事業が合理的かつ効率的であるかは別として、個人情報がインターネット上に置かれることになるのは避けられないのは確かだろうから、民間企業ではなく国家が管理することになるのはしかたがないことなのだろう。

本書は、著者が「書いた」ことになっているが、同じ内容の繰り返しが多いなど不自然な記述が目立つ。参考文献の後ろに、「本文構成」や「編集協力」として4名の名前が記載されている。聞き書きということか。

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コメント

本当ですか?

失礼ですが、クールジャパンを毎回、見られているのでしょうか?ほんの一、二回、見られただけではないですか?
あの番組では、かなり、日本のことを批判的に取り上げる回もあります。その割合は、その時のテーマによります。

クールジャパンがぬるいと書かれていたので、とても、意外です。

Re: 本当ですか?

毎回見るほどのファンではありませんが、1~2回しか観ていないわけではありません。

まず、「COOL JAPAN」なんて言葉はイギリスの猿真似は恥ずかしい。知的財産戦略本部あたりの役人が考えそうな浅薄な言葉です。

あの番組は、「批判的な外国人1~2名VS多数の日本大好き外国人」というステレオタイプを毎回繰り返しているので「ぬるい」と書きました。

愛国心をくすぐられる心地よい番組かもしれませんが、本当に海外で認められ、支持されている日本文化はトヨタやソニー、キヤノンなどの工業製品です。

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