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昼食難民の新書生活

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『大和三山の古代』上野誠(講談社現代新書)

大和三山の古代

『大和三山の古代』上野誠(講談社現代新書)

海外旅行にどんな本を持って行くかは、ある時まで悩ましい問題だった。旅の途中で読み終わらないように分厚い文庫本を持参するようにしていた。しかし、インドの田舎町のホテルで翻訳物の冒険小説を読み始めたら、あまりに面白すぎて止められずに徹夜で読了し、早朝のホテルの部屋でこれから何を読めばいいんだ、と呆然となったことがある。

簡単には読み終わらずしかも面白い本はないかと考えて、ある時から『万葉集』の文庫本を持って行くようにした。『万葉集』巻一の冒頭近くに、次の長歌と反歌がある。

 中大兄 近江宮御宇天皇 三山歌
香具山は 畝傍ををしと 耳成と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古も しかにあれこそ うつせみも 妻を争ふらしき
 反歌
香具山と耳成山と闘ひし時立ちて見に来し印南国原
海神の豊旗雲に入日さし今夜の月夜さやけくありこそ

長歌は、藤原京のあった大和にある香具山、畝傍山、耳成山の三山にまつわるツマ争い伝説についてが書かれているという。また、第二反歌の注には、この歌は反歌に似つかわしくないが旧本が反歌として載せているので掲載した、という編纂者の見解が書かれている。

この部分がさっぱりわからない。3つの山が三角関係にあったという伝説とはどういうことか。反歌に似つかわしくないのに反歌として掲載したとは何のことか。千年以上も前に編まれたアンソロジーなのに、『万葉集』の歌の多くは、書き下し文を読めば古文の知識がなくともなんとなく内容を理解することができる(ような気がする)。しかし、これらの歌はさっぱりわからないので、ずっと気になっていた。

本書によると、大和三山のツマ争いに関しては鎌倉時代の僧である仙覚以来の謎らしい。私ごときが考えても解けるはずのない謎なのだ。当然のことながら、それぞれの山の性別もまだ解けていない。というか、万葉学者のほとんどが納得するような定説はない。

 香具山(女)・畝傍山(男)・耳成山(女)
 香具山(女)・畝傍山(男)・耳成山(男)
 香具山(男)・畝傍山(女)・耳成山(男)

古代の「ツマ」は、男性の配偶者と女性の配偶者の両方を意味する言葉なのでややこしい。男2人で1人の女を争ったのか、女2人が1人の男を巡って争ったのかすらもまだ確定されていないのである。長歌の冒頭をどう読み下すのかも問題だ。

 香具山は/畝傍/雄雄しと……香具山女性説
 香具山は/畝傍を/惜しと……香具山男性説

かつては、「畝傍を愛しと」という読み下しもあったが、現在では否定されているという。
結局のところ、桃太郎のお話を知らない外国人に童謡の桃太郎を教えてもどんなストーリーか想像できないように、この長歌からだけでは、三山のツマ争い神話を想像できない、ということらしい。ただし、これらの歌は百済救援のための斉明天皇の筑紫行幸の際に、同行した中大兄が播磨国の海岸で詠んだのではないかという山田孝雄の説を紹介している。

3つの山のツマ争い伝説について詳細な解明はなされていないが、陰陽五行説による「三山鎮護の思想」によって藤原京を護る意味があったという。古代中国はもちろん、百済や新羅の王都にも三山はあった。

中大兄の三山の歌から、額田王と天智、天武の三角関係の歌を連想する人もいるだろう(あの「あかねさす~」)が、残念ながら無関係らしい。

本書で初めて知ったのだが、大和三山の低さは驚きだ。

 香具山 麓からの高さ(比高)62メートル
 畝傍山 麓からの高さ(比高)127メートル
 耳成山 麓からの高さ(比高)66メートル

香具山は丘と呼べるほどの高さしかない(ビルでいえば20階建て程度だ)が、万葉集の中で「天の(あまの)」という形容詞が冠されている山は、香具山だけなのである。なぜ香具山だけが特別なのか。

本書は、通説や多数派学説だけでなく、著者の仮説も記述している。そのために、気鋭の万葉学者がいま考えていることの臨場感が伝わってきて、探偵小説を読むような楽しさがある。

2008年11月に大和三山に登ってきた。

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