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昼食難民の新書生活

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『闘うレヴィ=ストロース』渡辺公三(平凡社新書 498)

闘うレヴィ=ストロース


『闘うレヴィ=ストロース』渡辺公三(平凡社新書 498)

本書は、2009年10月に死去したクロード・レヴィ=ストロースの“入門書”。著者は、文化人類学者でありレヴィ=ストロース研究の第一人者。若き社会主義活動家から文化人類学者、そして偉大な思想家となったレヴィ=ストロースの100年に及ぶ生涯を描いている労作だ。

本書によれば、レヴィ=ストロースは高等師範学校の学生たちを中心とする「建設的革命」グループの機関誌『社会主義学生』に書いたポール・ニザン著『アデン・アラビア』とジャック・ヴィオ著『白人の降架』の書評に、植民地主義への糾弾と民俗学への強い関心を示していると言う。著者は、これらの本を読んだことが社会主義活動家から人類学者への“転換”の契機となったと考えている。

レヴィ=ストロース本人は、人類学に“構造”を導入することになったきっかけを兵隊に動員された独仏国境のマジノ線で、5月初めに花を見ていて「直感」を得たと述べているが、同じくニューヨークに亡命していたヤコブソンの構造言語学の完成に間近で立ち会ったことが大きいのだろう。

「第二章 批判的人類学の誕生」では、哲学教授資格論文として執筆された『親族の基本構造』を詳しく論じている。ソシュールやプラハ学派の影響で音韻論を研究していたロマーン・ヤーコブソン(本書ではヤコブソンと表記)と出会う。ニューヨーク市立図書館に所蔵されていた膨大な民族誌を分析するにあたって、ヤーコブソンの音素およびその二項対立的な組成、さらにゼロ音素の概念などを使い『親族の基本構造』を書いた。

近親婚の禁止こそが、集団間における女性の交換を発動し、社会関係を生成する。

つまり、インセストの禁止は女性を交換せよという積極的な命令になる。

古代の日本でも女性は「交換」の対象だったようだ。例えば、記紀には、出雲神話のヤマタノオロチ伝説が記されている。天高原を追放されたスサノオが出雲でヤマタノオロチに捧げられようとしていたクシナダヒメを救う話だ。高千穂に降臨したニニギノミコトはコノハナサクヤヒメを、東征したカンヤマトイワレヒコノミコト(神武天皇)も各地で征服した豪族の娘をツマとしている。ずっと下って、戦国時代にも武将の妹や娘は「和睦」の証しとして交換された。

そして、「第三章 野生の思考へ向かって」では、『野生の思考』お中心にレヴィ=ストロースの関心が親族構造の研究から神話研究へと向かった経緯を推測しているが、版を重ね、現在ではフランスの高校の参考図書となっている『人種と歴史』について、著者は高く評価している。

あらゆる社会に存在する「自民族(自文化・自社会)中心主義」の批判、それぞれの文化が固有の価値をもつという徹底した文化相対主義の主張と西欧文化中心主義への批判がレヴィ=ストロース独自の鋭利な論理によって結合され、人種主義(じっさいには白人優越の思想)の思想的根拠を解体している。(略)野蛮人とはなによりも先ず、野蛮人が存在すると信じている人なのだ。(p.171-172)

「第四章 もうひとつの豊かさの思考」では、大著『神話論理』の森に分け入ってその論理構築を辿る。

「あとがき」に、レヴィ=ストロースの人柄を偲ばせるエピソードが紹介されている。1986年に来日した際に、著者はレヴィ=ストロースと面会する機会があった。前年に出版された『やきもち焼きの土器つくり』を日本語に翻訳することになっていた著者に、レヴィ=ストロースはパリの蚤の市で買ったという石製の大振りな文鎮を「翻訳というのは手間がかかるから」と言って手渡したという。

本書は2009年11月13日発行となっている。だから、残念ながらその直前の10月30日にレヴィ=ストロースが天寿を全うしたことには触れられていない。執筆に3年を要したという本書の出版があと1カ月遅くなっていたら、レヴィ=ストロースの死を受けた総括が加えられることになっただろうと思うと少し惜しい気がする。


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