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『ソーシャルブレインズ入門―〈社会脳〉って何だろう』藤井直敬(講談社現代新書 2039)

ソーシャルブレインズ入門

『ソーシャルブレインズ入門―〈社会脳〉って何だろう藤井直敬(講談社現代新書 2039)

本書は、ソーシャルブレインズ(社会脳)に関して「入門」と冠したタイトルどおりに平明かつ丁寧に説き明かしている。ソーシャルブレインズについて、著者は「自己と他者の脳が作る社会を前提として、その社会に組み込まれた状態の脳のしくみをとらえる考え方」と定義している。

残念なことに、われわれの脳はいとも簡単に思考停止に陥ってしまう。思考停止の実例として有名な「ミルグラム実験」と「スタンフォード監獄実験」を紹介していて面白い。

ミルグラム実験は、イェール大学のミルグラムによって実施された実験で、生徒役が試験を間違えたら、先生役の実験対象者が45ボルトから15ボルトずつ電気刺激を上げて与えることになっていたが、ほとんどの先生役が最大450ボルトまで電圧を上げてしまったという(もちろん、電気刺激はウソで生徒役が痛い演技をしていた)。

スタンフォード監獄実験は、囚人役と看守役のグループを決めて模擬的に生活させたところ、看守役が囚人役を虐待する事態となり、2週間の予定を6日で中止することになったが、その際に看守役は実験の続行を主張し、囚人役は実験中止を訴えなかったという。いずれも、権威者によって責任を問わないことが保証されていた。

社会的ルールを守るのは倫理観や道徳観といった人の心の中にあるとされるものだが、実は絶対的な倫理観は存在しないかもしれないことを証明した実験である。

脳と身体は一体であり、人間のあらゆる言動は意識・無意識を問わず、コミュニケーションに関わるしぐさのすべては脳が作っている。つまり、コミュニケーションによって成り立っている“社会”は、たくさんの脳によって形作られている。となれば、脳研究に社会との関わりは不可欠であるが、社会と脳がつながった状態の脳機能を理解するための研究方法が、誰にもわからなかった。そこで、これまでの脳研究は脳そのものの機能だけを対象に進められてきた。

そもそも科学は、人と人との関係のような不可逆で再現不可能な文脈依存的な現象の記述を排除してきた。神経科学も、再現可能性を追及するために完全に人工的に制御された環境での研究のみを行い、記述不可能な環境文脈を意図的に排除してきた。完璧な環境制御に最も邪魔なのは他者の存在だ。他者はもっとも予測不可能性が高く、しかも他者をどのように感じるかは科学が最も嫌う主観に依存するからだ。

しかし、ソーシャルブレインズ研究は個人の脳と社会とのネットワークを研究対象としており、その関係性を重視している。

そうした研究の一例として、サルやヒトが行動する時と、その行動と同じ行動を他の同種の個体が行っているのを観察している時に、特定の神経細胞が活性化するという「ミラーニューロン仮説」を検討している。イタリアのジャコモ・リゾラッティらは、サルの副側運動前野(F5)に発見した神経細胞をミラーニューロンと名付けた。ミラーニューロン仮説では、他者の動きそのものに反応するのではなく、他者の行動の目的に応じて反応するとする。しかし、著者はリゾラッティらの実験は検証不可能なほど杜撰であり、ミラーニューロンのようなブラックボックス化は脳の解明に役立たないと考えている。

著者は、人間の脳は認識するために考えることをなるべく省く傾向がある、つまり「認識コスト」の低減化を目指しているという。その根拠となるのがサルの脳に比べ重量は4倍になったのに血流量は2倍にしかなっていないというエネルギー供給の問題である。人間の脳はエネルギーがギリギリの状態にあるため、認識のために消費するエネルギーをなるべく少なくしようとする。例えば、毎日繰り返す通勤などのルーティーンの行動は自動化され、何も考えずに実行できるようになっている。また、ブランド品などの評価の定まった商品を購入するのも、商品の出来具合を自ら確かめたり、デザイン性が自分の好みに合致しているかどうかを見て判断することを省略することができる、つまり「認識コスト」を下げようとする行動だという。

我々が社会的ルールを受け入れるのも「認識コスト」で説明できるとしている。ルールは選択肢の幅を自動的に狭めるが、無限の可能性から1つを選ばなければならない場合に比べ、はるかに脳のエネルギーバランスにとって有利な条件となるからである。しかも、そのルールに従っている限り、社会的な排除を受けることはない。各個人が認知コストをセーブできるのは、社会全体から見てもメリットになり、社会構造の安定性をもたらす。人間の社会的な行動は、脳のこうした性向に支配されているのだ。

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